研究課題/領域番号 |
23K21304
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補助金の研究課題番号 |
21H02467 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43060:システムゲノム科学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
和田 健一 九州大学, 工学研究院, 特任准教授 (20525919)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2025年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2024年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
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キーワード | mtDNA / 合成ゲノム / ミトコンドリア / マイクロ流体デバイス / 合成DNA / ゲノムライティング / ホモプラズミー / ミトコンドリアゲノム / ミトコンドリア移植 / 不和合性 |
研究開始時の研究の概要 |
ミトコンドリアゲノム(mtDNA)に対する実用的な改変技術が開発されていないため,その機能解析の実施は大きく制限されている.合成DNAによるmtDNAの全置換は真に自由自在なmtDNA改変を実現する革新的なアプローチである.本研究では,合成DNAをミトコンドリアで機能する自己複製子として受容するように機能改変された細胞(外来mtDNA受容細胞)の創出を軸として,合成DNAによるmtDNAの全置換を可能にする技術体系の開発に取り組む.
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研究実績の概要 |
ミトコンドリアゲノム(mtDNA)は約16.5kbの環状DNAであり,動物細胞における唯一の核外ゲノムである.エネルギー産生に関わる遺伝子群をコードしており,個体の生存に必須な極めて重要なゲノムであるが,実用的な改変技術が開発されていないためその機能解析の実施が大きく制限されている.本研究は真に自由自在なmtDNAの改変を可能にする合成DNAによるmtDNAの全置換の実現を目指しており,この目標を達成するために以下の3つの課題を設定した.すなわち,外来mtDNA受容細胞の創出(課題1),外来mtDNA受容細胞を用いた合成DNAに由来する自己複製子の構築(課題2),合成mtDNAによる内在性mtDNA置換の実現とその機能解析(課題3),である. 2022年度までに,課題1で計画した外来mtDNA受容細胞の有力な候補細胞を一系統得ることに成功した.この進捗に基づいて,2023年度は,その他の外来mtDNA受容細胞を得るための試行を継続するとともに,すでに得られた外来mtDNA受容細胞の候補細胞を用いて合成mtDNAに由来する自己複製子の構築を目指した試行(課題2)を行なった.具体的には,得られた候補細胞の外来mtDNA受容細胞としての機能評価を進め,外来mtDNA受容細胞として必須な性状を備えていることを確認した.第二に,この細胞に対するミトコンドリア移植と定着方法の検討を行ない,合成mtDNAの導入の際に必要なミトコンドリア移植条件の検討を行なった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までに,一系統のみではあるが,外来mtDNA受容細胞として機能する有力な候補細胞を得ることができた.この進捗に基づいて研究3年目にあたる2023年度は,研究計画の通り,得られた外来mtDNA受容細胞の候補細胞を用いてDNAに由来する自己複製子の構築を目指した以下の実験を実施した. まず初めに,得られた候補細胞がmtDNA受容細胞として機能するための性質を備えているか検討を行なった.具体的には,ピルビン酸/ウリジン添加培地で3ヶ月以上の長期培養を行なっても良好な細胞増殖能力を呈し,且つ,ホモプラズミックなmtDNA組成が維持されていることを確認した.次に,ピルビン酸/ウリジン不含の条件下では速やかに増殖が停止し,その後死滅することを確認した.即ち,ピルビン酸/ウリジンに対する栄養要求性があることを明らかにした.さらに,この候補細胞に対してHeLa細胞を脱核して得た細胞質体を融合させるとでミトコンドリアを移植したところ,およそ移植後3ヶ月程度で候補細胞のmtDNAがHeLa細胞由来のmtDNAに完全に置換されるとともに,ピルビン酸/ウリジンの栄養要求性が消失すること,即ちミトコンドリアの呼吸機能が回復することを確認した.これらの結果は,得られた候補細胞がヒトmtDNAに対する外来mtDNA受容細胞として機能することを示唆するものである.さらに,現在,この候補細胞に対する合成DNAの導入に必要と想定される細胞質体の融合以外の種々のミトコンドリア移植方法を検討している.これらの状況により,本研究課題は概ね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
現在のところ,得られた候補細胞を用いた合成DNAに由来する自己複製子の構築には成功していない.この課題は2024年度までの実施が計画されているため,今後もこの課題を継続する.具体的には,2024年度は以下の二つの研究課題を軸に,合成DNAに由来する自己複製子の構築に向けた研究課題を推進する予定である. (1)新規外来mtDNA受容細胞候補の取得:これまでに異種間ハイブリッドのスクリーニングから,外来mtDNA受容細胞の有力な候補を一系統得ることに成功しているが,これが外来mtDNA受容細胞として機能する保証はない.そのため,同様のアプローチを継続し,その他の新規mtDNA受容細胞の候補を得る.これに加えて,独自のマイクロ流体デバイスを用いたmtDNA改変技術を用いた外来mtDNA受容細胞の樹立も進める.これらの試行を通じて,合成DNAに由来する自己複製子の構築を可能にする外来mtDNA受容細胞の樹立を目指す. (2)ミトコンドリアへのDNA導入方法の開発:合成DNAに由来する自己複製子の構築には,ミトコンドリアに対するDNA導入と,導入対象となったミトコンドリアを外来mtDNA受容細胞へ移植する技術が必須である.そのため,全細胞,脱核細胞,単離ミトコンドリア,膜抽出ミトコンドリア,等の様々な状態のミトコンドリアに対するDNA導入条件の検討を行うとともに,外来mtDNA受容細胞への移植と定着に必要な実験条件の検討を行う.
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