研究課題/領域番号 |
23K21308
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補助金の研究課題番号 |
21H02474 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44010:細胞生物学関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
駒田 雅之 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (10225568)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2021年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
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キーワード | メンブレントラフィック / 脱ユビキチン化酵素 / USP8 / クッシング病 |
研究開始時の研究の概要 |
脱ユビキチン化酵素USP8はエンドサイトーシス、オートファジー、エキソサイトーシスなどの細胞内小胞輸送(メンブレントラフィック)経路を制御することが明らかになりつつある。本研究では、USP8がこれらの輸送を制御するしくみを分子レベルで解明し、複数の経路が合目的的に調節されることを明らかにする。一方、難治性疾患クッシング病は、USP8に遺伝子変異が生じて発症することがわかっている。本研究では、変異型USP8が小胞輸送の異常を介してクッシング病を引き起こす分子機構も明らかにする。最終的に、USP8を介した多彩なメンブレントラフィックの制御を統合的に理解し、その生理的・病理的意義を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は、複数のメンブレントラフィック経路をUSP8が制御する分子機構を解明することを目指している。 USP8によるエンドソームを介したメンブレントラフィックの制御については、これまでにUSP8の標的としてエンドソームの膜融合を担うSNAREタンパク質VAMP8などを同定していた。今年度の解析により、エンドソームに存在するユビキチンリガーゼRFFLが VAMP8をユビキチン化すること、形成されるユビキチン鎖はLys27連結型であること、SNARE複合体を形成していないVAMP8よりも形成しているVAMP8の方がよりユビキチン化を受けていることがわかった。さらに、細胞分裂期にはUSP8が活性化し、これを反映してVAMP8のユビキチン化レベルが減少することがわかり、USP8-VAMP8を介したメカニズムにより細胞分裂期のエンドソーム動態が制御される可能性が示された。 HIV1型レンチウイルスの感染細胞からの出芽の制御については、これまでに、USP8がウイルス構造タンパク質Gagを脱ユビキチン化するとGagとウイルスRNAの相互作用が弱まる可能性を見出していた。今年度は、ウイルスRNAをMS2 -MCPシステムで標識し、Gagのユビキチン化がGagとウイルスRNAの結合に重要であることを実証した。さらに、ユビキチン結合タンパク質であるALIXがGagとウイルスRNAの相互作用を仲介している可能性が示された。 クッシング病で見られる変異型USP8は過剰な酵素活性をもち、ACTHの分泌を過剰に促進して疾患発症を引き起こす。変異型USP8が脱ユビキチン化されるタンパク質を網羅的に同定するため、Split-TurboID法を応用し、変異型USP8に結合するユビキチン化タンパク質を濃縮する新手法の開発を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
エンドソームを介したメンブレントラフィックの制御については、これに含まれるSNAREタンパク質がユビキチン化されることは知られていたが、その意義はこれまで不明であった。本研究から、SNAREタンパク質のユビキチン化がSNARE複合体の乖離を阻害するという当初予想していなかった作業仮説を立てることができた。これを示すことができれば、メンブレントラフィック分野において重要な発見になると期待している。 レンチウイルス出芽の制御については、Gagのユビキチン化がGagとウイルスRNAの相互作用に重要であることを初めて示すことができた。さらに、詳細な分子機構を解析し、ユビキチン化されたGagにユビキチン結合タンパク質ALIXが結合し、Gag-ALIX複合体にウイルスRNAが効率的に結合するという作業仮説を構築することができた。これも、当初は予想していなかったモデルである。これを証明できれば、ウイルス粒子へのウイルスRNAの動員機構の理解を大きく進めることができると考えている。 クッシング病を引き起こす変異型USP8によるメンブレントラフィック制御を明らかにするため、まずは、変異型USP8の基質タンパク質を同定することを目指した。これまでに変異型USP8に結合するタンパク質をIP-MS法で多数同定してきたが、基質同定には有効でなかった。そこで、Split-TurboID法を応用した新手法の開発を行なった。TurboIDの分割部位など種々のパラメーターを最適化する必要があるとわかり、それらの技術的課題を一つずつ解決したことにより、広範な脱ユビキチン化タンパク質の基質同定を可能とする方法として完成しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
エンドソームと細胞膜やオートファゴソームの間のメンブレントラフィックについては、VAMP8のユビキチン化がSNARE複合体の乖離を抑制する(脱ユビキチン化がSNARE複合体の乖離を促進する)分子メカニズムの解明を進める。最終的に、このメカニズムを介してエンドソームと細胞膜やオートファゴソームの膜融合が制御されることを明らかにする。 HIV1型レンチウイルスの感染細胞からの出芽については、GagとALIXの結合様式やALIXとウイルスRNAの結合様式を調べ、USP8とALIXを介したウイルス形成制御の分子機構の解明を進める。 クッシング病で見られる変異型USP8によるメンブレントラフィック制御については、Split-TurboID法を応用した新手法を完成させ、変異型USP8の基質タンパク質を網羅的に調べる。同定された候補タンパク質その中からACTH分泌に関連するものを特定する。 次に、USP8によるメンブレントラフィック経路の制御の独立性/連動性を調べる。具体的には、細胞に野生型/変異型USP8を発現し、共免疫沈降-質量分析法によって結合タンパク質を同定する。同定したタンパク質の中から、特徴的な細胞内部位に局在化するものなどを選び、これらの発現抑制がUSP8の局在化/活性化/基質結合を阻害するか確認する。次に、同定した因子を発現抑制し、USP8を介したメンブレントラフィック経路の制御に及ぼす影響を解析することにより、各制御の独立性/連動性を明らかにする。
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