研究課題/領域番号 |
23K21312
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補助金の研究課題番号 |
21H02484 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44020:発生生物学関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
佐藤 純 金沢大学, 新学術創成研究機構, 教授 (30345235)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | カラム構造 / ショウジョウバエ / 視覚系 / カラム / 視覚中枢 / Ephrin / Wnt / IRM / 数理モデル / Dscam1 / Ncadherin / 神経発生 |
研究開始時の研究の概要 |
哺乳類の大脳皮質では多数の神経細胞が円柱状に集合し、カラム構造と呼ばれる脳の機能単位を形成する。さらに、多数のカラムが規則正しく配置されることで脳の機能が実現する。従って、神経細胞の集積化によるカラム形成、個々のカラムの形態制御、カラムの正確な配置は脳の発生メカニズムを考える上で非常に重要である。ショウジョウバエの脳の視覚中枢においては100程度の神経細胞によって1つのカラムが構成されるため、哺乳類のカラムより遙かに単純である。本研究ではハエの脳をモデルとしてカラム形成の基本原理を解明する。
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研究実績の概要 |
哺乳類の大脳皮質では多数の神経細胞が円柱状に集合し、カラム構造と呼ばれる脳の機能単位を形成する。さらに、多数のカラムが規則正しく配置されることで脳の機能が実現する。従って、神経細胞の集積化によるカラム形成、個々のカラムの形態制御、カラムの正確な配置は脳の発生メカニズムを考える上で非常に重要である。ショウジョウバエの脳の視覚中枢において見られるカラム構造は、哺乳類のカラムより遙かに単純である。本研究ではハエの脳をモデルとしてカラム形成の基本原理を解明する。今年度は以下の点を明らかにした。 1. Ephrinのリン酸化を介したカラム形成機構: EphがEphrinに結合することで細胞間の反発を引き起こすことが知られているが、これまでにEphrinのリン酸化を介した細胞間の反発作用を見出した。Ephrinのリン酸化を担うリン酸化酵素の候補をRNAiスクリーニングによって同定し、この因子が実際にEphrinのリン酸化を制御することを見出した。また、Ephrinの下流で働く因子の候補を同定し、この因子がEphrinシグナルに必要であることを見出した。 2. Wntリガンドが神経細胞の方向性を決定するメカニズム: Wntリガンドの受容体およびその下流で働くFz1, Fz2, Vangに対して細胞種特異的に蛍光ラベルする系統を作製したが、十分な明るさが得られなかった。蛍光蛋白質の明るさを増幅させる工夫を加え、新たな蛍光ラベル系統の樹立を推進した。 3. カラムの規則正しい配置を制御するメカニズム: 細胞間に働く「接着力」「反発力」「誘引力」を表現するARAモデルを構築し、様々なカラムの配置パターンを再現した。得られた成果を国際的な学術誌に投稿する準備を進めた。 4. 細胞接着分子IRMファミリーによるカラム形成機構を明らかにし、国際的な学術誌に成果を報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Wntリガンドが神経細胞の方向性を決定するメカニズムについては、蛍光蛋白質の明るさが不足していたため、系統を作り直す必要が生じた。従って、この点については進展が遅れていると言える。 しかし、Ephrinによるカラム形成についてはリン酸化酵素や下流で働く因子の候補を同定することに成功した。また、カラム配置の数理モデルについても論文投稿の準備を進めている。IRMファミリーによるカラム形成機構については論文を出版したため、全体としては順調に進展していると言えるだろう。
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今後の研究の推進方策 |
多数の神経細胞が集積して形成されるカラム構造は脳の機能単位として働くが、その発生機構はほとんど分かっていない。ショウジョウバエ視覚中枢において見られるカラム構造はたかだか100程度の神経細胞から成る上、精密な遺伝学的操作が可能であるため、カラムの発生機構を解析する上で優れたモデル系である。本研究ではショウジョウバエ視覚中枢をモデル系として、神経細胞が集積してカラムを形成する機構、カラムの形態を制御する機構、カラムの規則正しい配置を制御する機構を解明する。 今後は、これまでの研究成果をもとに以下の点を明らかにする。 1. Ephrinのリン酸化を介したカラム形成機構: これまでにEphrinリン酸化酵素およびEphrinの下流で働く因子の候補を同定したので、これら分子の機能をリン酸化型および非リン酸化型Ephrinに対する抗体を指標として解析し、Ephrinのリン酸化を介したカラム形成機構を解明する。得られた成果を論文として取りまとめ、国際的な学術誌に投稿する。 2. Wntリガンドが神経細胞の方向性を決定するメカニズム: Wntリガンドの受容体およびその下流で働くFz1, Fz2, Vangに対して細胞種特異的に蛍光ラベルする系統について、蛍光シグナルを増強した系統の作製を進める。カラムを構成する神経細胞におけるこれら蛋白質の細胞内局在を解析する。 3. カラムの規則正しい配置を制御するメカニズム: カラムを構成する神経細胞特異的にNcadherin (Ncad)をノックダウンすると、カラムの配置パターンに変化が生じることを見出している。細胞間に働く「接着力」「反発力」「誘引力」を表現するARAモデルを用いて、コントロール、Ncadノックダウン、Ncad過剰発現と一致するパラメーターを探索する。得られた成果を国際的な学術誌に投稿する。
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