研究課題/領域番号 |
23K21315
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補助金の研究課題番号 |
21H02495 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44020:発生生物学関連
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
西村 隆史 群馬大学, 生体調節研究所, 教授 (90568099)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | インスリン / PI3K-Aktシグナル / ショウジョウバエ / 性成熟 / 器官間相互作用 / PI3K-Aktシグナル |
研究開始時の研究の概要 |
多くの生物は、生活史を通して様々な体内および体外の環境変化を経験する。生活史の各段階に特有の、恒常性を支える器官間相互作用やシグナル伝達経路が存在すると想定されるが、個体レベルでの理解は断片的である。本研究は、モデル生物キイロショウジョウバエの「成長期から成熟期への移行」に着目し、成長と代謝に深く関わる「PI3K-Aktシグナル伝達経路の再編成」を理解することを目的とする。この再編成は、遠隔的なシグナルによる組織非自律的な制御(成長期)から、ステロイドホルモンの作用による組織自律的な制御(成熟期)への切り替えにより達成される作業仮説を元に研究を展開する。
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研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、ショウジョウバエ幼虫の成長期から成熟期への進行に伴う、脂肪体PI3K-Aktシグナル伝達経路を制御する受容体型チロシンキナーゼ(RTK)と器官間相互作用システムの再編成を解明することである。様々な末梢組織におけるPI3K-Aktシグナル伝達経路は、体液を循環するインスリンの作用で制御されていると考えられている。一方、代表者らは、脂肪体に蓄積されるグリコーゲンを指標にして、PI3K-Aktシグナル伝達経路を制御するRTKを再評価したところ、成長期に機能するRTKは、従来考えられていたインスリン受容体ではなく、Egf受容体であることを明らかにした。また、Egf受容体はグリコーゲン生合成のみならず、PI3K-Aktシグナルを介して細胞成長や脂肪蓄積など広範囲に細胞の生理機能を制御していることを明らかにした。 2022年度は、脂肪体のPI3K-Aktシグナル伝達経路を制御する主なEgfリガンドの由来と種類の解明を試みた。成長期におけるインスリン受容体の機能を組織ごとに再評価したところ、筋肉組織でインスリン受容体の発現抑制を行うと、脂肪体のPI3K-Aktシグナルが減少することが明らかになった。よって、脂肪体で機能するEgf受容体のリガンドは筋肉に由来している可能性が考えられた。また、筋肉でインスリン受容体の発現抑制を行うと、複数のEgfリガンドの発現が減少した。そこで、筋肉組織で候補となるEgfリガンドの発現抑制を行ったが、顕著な表現型が観察されなかった。よって、複数のEgfリガンドが重複して機能している可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脂肪体PI3K-Aktシグナル伝達経路を制御する器官間相互作用の理解が深まったため、当初の予定通りに研究が進んでいると判断した。
また、研究の過程で、インスリン受容体の細胞外領域に挿入された温度感受性点変異体を新たに同定した。この変異体は、飼育温度に依存して末梢組織におけるPI3K-Aktシグナル伝達経路が減弱した。また、変異体では、グリコーゲンの減少に加えて、解糖系やTCA回路の中間代謝物が上昇するだけではなく、アミノ酸やヌクレオチドなど、広範囲な代謝物の変化が起こることを明らかにした。これらの研究結果を論文にまとめて、誌上発表した(Banzai and Nishimura, Development, 2023)。この温度感受性変異体を使用することで、任意のライフステージでPI3K-Aktシグナル伝達経路を操作することが可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
成長期の脂肪体PI3K-Aktシグナル伝達経路を制御するEgf受容体のリガンドは筋肉に由来している可能性が考えられた。そこで、筋肉組織で発現するEgfリガンドが、脂肪体のEgf受容体に作用しているかどうか、遺伝学的な解析と共に、組織培養などの実験系を用いて検討する。また、幼虫の体液中にEgfリガンドが検出されるかどうか、質量分析装置を用いて検討する。さらに、筋肉組織で発現するEgfリガンドの発現や分泌を制御する上流シグナルに着目し、成長期と成熟期でのEgfリガンドの発現レベルなど、発育ステージにおける差異を検討する。 一方、成熟期に入ると、脂肪体で発現するインスリン受容体が組織自律的に重要になる。成長期と成熟期でPI3K-Aktシグナルを制御する上流シグナルが変遷する仕組みを明らかにする。具体的には、成熟期に入ると脂肪体で発現が上昇するインスリンの関与を検討する。また、新たに同定したインスリン受容体の温度感受性点変異体を用いることで、発育時期に特異的なインスリンシグナルを制御することの生理的な意義を検討する。
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