研究課題/領域番号 |
23K21319
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補助金の研究課題番号 |
21H02517 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44040:形態および構造関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
井川 智子 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 准教授 (00360488)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2025年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
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キーワード | 重複受精 / 膜タンパク質 / 配偶子融合 / GCS1 / タンパク質相互作用 / ゲノム編集 / 被子植物 / 細胞膜 / 受精因子 / 配偶子膜融合 / 配偶子 / 膜融合 |
研究開始時の研究の概要 |
オス精細胞膜タンパク質であるGCS1はメスの配偶子である卵細胞および中央細胞と融合するための膜融合因子である。我々はGCS1を人工的にメスの卵細胞で発現・分泌させるシロイヌナズナ組換え体を作製し,この組換え体の雌ずい組織を材料として,卵細胞から分泌されたGCS1と相互作用するタンパク質を捕捉し、プロテオーム解析を行っていた。本研究ではプロテオーム解析の結果から候補として選定した同定タンパク質の機能検証による新たな受精因子の発見を目的とする。さらにDMP9を含めた既知受精因子との相互作用解析を生化学的、細胞学的に追究することで重複受精を制御する分子メカニズムの解読を目指す。
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研究実績の概要 |
被子植物の有性生殖では、2つ形成された雄の精細胞が1つずつ、雌の卵細胞・中央細胞とそれぞれ融合する「重複受精」を行う。GCS1は精細胞特異的な膜タンパク質で、卵細胞及び中央細胞との細胞膜融合因子として機能する。R5年度の時点で,GCS1を人工的に雌の卵細胞で発現・分泌させる手法によって卵細胞由来のGCS1相互作用因子を捕捉し、プロテオーム解析を終えた段階にあった。R5年度では同定タンパク質の中から膜局在および生殖細胞での発現可能性を指標に選定した数種のタンパク質種について,主にGCS1との相互作用を生化学的に評価した。解析タンパク質の合成または発現には無細胞翻訳系,酵母ツーハイブリッド解析,ベンサミアナタバコでの発現を試み,さらに免疫沈降またはpull-downアッセイによる相互作用評価を行った。これらの解析結果を総合すると,プロテオーム解析によって同定されたタンパク質種のうち,配偶子での局在が確認されたGAH1タンパク質(仮名)との相互作用が示唆された。 R5年度にはGCS1の機能領域をより確実に検証するために,ゲノム上のGCS1コード領域全長を脱落させるゲノム編集を行い,遺伝子組換え当代でホモの編集個体を高頻度で作製した。他種のGCS1オーソログを解析した先行研究で,翻訳を修飾を受けるアミノ酸配列について,シロイヌナズナの変異GCS1をgcs1へ導入した結果,受精が相補された。この結果は進化の過程でGCS1が翻訳後修飾による機能制御が変遷を受けている可能性を示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GCS1は膜貫通領域を一つ持ち,長いN末端側が細胞外に配向している。膜タンパク質の合成は現代でも技術的に難しく,過去のGCS1オーソログ研究でも,膜貫通領域からN末端側のectodomainのみを合成して構造解析を行った研究例も報告されている。本研究では,無細胞翻訳系,酵母ツーハイブリッドシステム,ベンサミアナタバコ発現システムのそれぞれにおいて,シロイヌナズナGCS1の全長とectodomainをそれぞれ合成させる遺伝子発現コンストラクトを構築し,相互作用解析に用いた。各システムにおいてGCS1の発現効率を評価した結果,先行研究と同様に全長での合成は難しいことが示された。その中でもectodomainを用いた場合に,膜タンパク質用の酵母ツーハイブリッドシステムにおいて相互作用の評価が行えた。これらの解析を通じて,困難ではありながらもよりvivoに近い評価のために全長GCS1を植物の体細胞で発現させる技術を作る課題が生じた。 GCS1の詳細な機能領域解析を行うために,これまでT-DNA挿入変異体や,部分的な塩基配列の編集によるノックアウト変異体を用いた機能解析研究が報告されていた。しかし,研究で用いられるgcs1変異体の遺伝子型が個々の論文で異なり,機能についても相反する知見が報告されているなど,GCS1の分子機能については未だ学術的な論争が続いている。本研究で新たに採用したゲノム編集法によって,GCS1のコード領域全長をゲノムから欠失させることに成功した。ゲノム編集のためのCRISPR遺伝子群を導入したシロイヌナズナ組換え体T1世代において,ホモで編集を誘導し,完全な不稔の組換え体系統を高頻度で作出できる。
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今後の研究の推進方策 |
GCS1の全長を植物体細胞で発現させる遺伝子発現コンストラクトを導入しても,効率的な合成が難しい。この課題を解決するための遺伝子発現系を現在新たに立案するに至ったため,R6年度において評価する。 また,高効率でGCS1のノックアウトホモ個体を得ることができたため,数値データを蓄積し,新たな解析材料作出法としての技術論文として査読付き国際誌に発表する。 GCS1相互作用因子について,酵母ツーハイブリッドでの解析が有効であることが示されたため,R6年度はこれら相互作用因子とGCS1のどの領域が複合体形成に関与するのかについて,複数のGCS1デリーションパターンを発現するコンストラクトを作製し,評価を行う。 既にGCS1との相互作用が示唆されたGAH1タンパク質については詳細な機能解析を進める。現在までに,オス生殖細胞の膜構造にGAH1が局在することが明らかになっているため,GCS1との相互作用が生殖プロセスにおいてどのような意義を持つのか,を追究する。
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