研究課題/領域番号 |
23K21321
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補助金の研究課題番号 |
21H02521 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44040:形態および構造関連
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
大原 裕也 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (80771956)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2021年度: 7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
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キーワード | 核内倍加 / ショウジョウバエ / 前胸腺 / DNA損傷 / ATM / エクジステロイド / DNA損傷応答経路 / エクジソン / H2Av |
研究開始時の研究の概要 |
核内倍加は分裂期がスキップされた細胞周期であり、複製期の繰り返しによってゲノムDNA コピー数ならびに細胞サイズが増大する。核内倍加は生物界に広く認められており、細胞の機能発現および分化に関与すると考えられているが、核内倍加によって駆動される下流経路とその生理的意義は不明である。本研究では、核内倍加の進行に伴いDNA二本鎖切断(DSB)をはじめとしたDNA損傷が蓄積することに着目し、DNA損傷応答経路とその下流遺伝子群によるエクジソン産生制御機構の解明を目指す。本研究で得られる成果は、核内倍加による遺伝子発現ならびに分化の制御機構を解明する基盤となる。
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研究実績の概要 |
2023年度の研究では、近年新たに開発された前胸腺選択的なGal4系統・spok-Gal4を用いて、DNA損傷応答において中心的な役割を果たすATM(Ataxia Telangiectasia, Mutated)およびH2Avの遺伝学的解析を行い、以下の結果を得た。①前胸腺選択的なATMノックダウン個体およびH2Avノックダウン個体において蛹への変態が遅延し、これらの個体ではエクジステロイドの濃度が低下した。②H2Avノックダウン個体においてエクジステロイド合成酵素群の遺伝子発現が低下していた一方で、前胸腺選択的なATMノックダウン個体ではneverland遺伝子(エクジステロイド合成の初発段階を担う酵素をコード)の発現が選択的に低下した。これらの結果は、ATMおよびH2Avはエクジステロイド産生および蛹化に必須な役割を果たすことを示しており、特にATMはneverlandを選択的に制御すると考えられる。 次に、neverland遺伝子領域周囲でDNA損傷が引き起こされている可能性を検証するために、Saber-Fish法を用いてneverland遺伝子領域の可視化および免疫染色によるDNA損傷領域の共染色を試みた。現在、neverland遺伝子領域の可視化に成功しているが、再現性に問題があるため、今後の条件検討が必要である。 上記の結果は、前胸腺以外の組織で発現するATM遺伝子もまたエクジステロイド合成に関与する可能性を示唆している。この成果を出発点として、エクジステロイド合成を制御する液性因子を産生する脳や成虫原基におけるATM等のDNA損傷応答経路の機能を明らかにすることができれば、ATMおよびDNA損傷応答経路によるホルモンネットワークの調節機構を浮き彫りにすることができると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
DNA損傷応答経路の遺伝学的解析に関してはおおむね順調に研究が進行しており、ATMおよびH2Avが前胸腺で機能していることを強く示すデータを得ている。 一方、RNAシーケンシングは遅れており、前年度はシーケンシングに必要な前胸腺をプールするための解剖と組織回収にほとんどの時間を割くことになった。今年度はプールした組織からRNA等を抽出し、シーケンシングを行う。
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今後の研究の推進方策 |
【研究1. 核内倍加およびDNA損傷応答経路によって制御される遺伝子群の同定】核内倍加およびDNA損傷応答経路の下流で機能する遺伝子群を網羅的に解析するために、正常な前胸腺、ATMをノックダウンした前胸腺、および、Fzr(Fizzy-related)のノックダウンにより有糸分裂を継続する前胸腺を対象に、網羅的オープンクロマチン領域解析およびRNAシーケンシング等を行い、核内倍加およびATM依存的にクロマチン構造がオープンとなり発現が惹起される遺伝子群を同定する。また、同定した遺伝子群をRNAiによりノックダウンし、ATMのノックダウン時と同様にneverland遺伝子の発現量が選択的に低下するか否かを検証する。
【研究2. ATMとSu(var)2-10との相互作用の解析】これまでに、クロマチン制御因子であるSu(var)2-10がneverland遺伝子の発現を選択的に制御することを見出している。Su(var)2-10はDNA損傷領域にリクルートされる性質を有していることから、ATM依存的にSu(var)2-10が機能する可能性が考えられる。この可能性を検証するために、ATMをノックダウンした前胸腺において、Su(var)2-10タンパク質の局在に異常が生じるか否かを免疫染色等を用いて調べる。
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