研究課題/領域番号 |
23K21330
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補助金の研究課題番号 |
21H02547 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45030:多様性生物学および分類学関連
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
寺井 洋平 総合研究大学院大学, 統合進化科学研究センター, 准教授 (30432016)
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研究分担者 |
荒川 那海 総合研究大学院大学, 統合進化科学研究センター, 特別研究員 (90844754)
仮屋園 志帆 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 特別研究員 (00815334)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
15,470千円 (直接経費: 11,900千円、間接経費: 3,570千円)
2024年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2023年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
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キーワード | 地衣類 / 共生 / バクテリア / オミクス解析 / 代謝ネットワーク |
研究開始時の研究の概要 |
サンゴや地衣類は共生する藻類から光合成産物を供給されて生育する2者の共生体だと長い間考えられてきた。しかし近年、これらに第三の構成員が存在することが明らかになってきが、その役割は不明であった。私たちは地衣類のハコネサルオガセの共生菌、共生藻、バクテリアから地衣体を再合成する系を用いて、各種オミクス解析を行い、構成員間の代謝ネットワークと、それぞれの第三の構成員の役割を解明することを目的とする。
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研究実績の概要 |
サンゴや地衣類は共生する藻類から光合成産物を供給されて生育する2者の共生体だと長い間考えられてきた。しかし近年、これらに第三の構成員が存在することが明らかになってきが、その役割は不明であった。私たちは地衣類のハコネサルオガセの共生菌、共生藻、バクテリアから地衣体を再合成する系を用いて、バクテリアが地衣類の共生に必要であること発見した。また地衣類のイオウゴケが硫化水素依存的に生育し、硫化水素代謝に必要な遺伝子を持つ好酸性バクテリアが第三の構成員であることを明らかにした。地衣類の共生において構成員の関係は代謝物の提供と受け取りである。そのため、「代謝ネットワーク」を調べれば共生での役割を明らかにできる。そこで本研究では地衣類、ハコネサルオガセとイオウゴケを用いて各種オミクス解析を行い、構成員間の代謝ネットワークと、それぞれの第三の構成員の役割を解明することを目的とする。 本年度は、先進ゲノム支援の協力で行った解析により共生バクテリアのゲノムアッセンブルが大きく向上した。これにより、共生体内での構成員の比率が高解像度で明らかになった。また、部分的なアンプリコン解析により、イオウゴケの株間、もしくは地方集団間で藻類の系統もしくは種類が異なりことが明らかになった。藻類とは対照的に菌類とバクテリアは株間でも地方間でも保存されていた。これらも結果からイオウゴケでは菌類とバクテリアは入れ替え不可能な強い関係であるが、藻類は入れ替え可能な三者関係であることが明らかになってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は1) 先進ゲノム支援の協力もあり、イオウゴケの共生バックテリアのゲノムアッセンブルが大きく向上した。またアッセンブルでつなげるのが難しい高コピー遺伝子については、別途アッセンブルを行った2) 昨年度までに行った硫黄代謝物のメタボローム解析の結果とゲノムアッセンブルの結果から、硫化水素の代謝経路を予測を行った、3) 部分的なアンプリコン解析により、藻類は株間や地域集団間で、系統や種類が異なるが、菌類と藻類は地域集団の分化はあるがこれら2つの共生構成員が保存されていることを明らかにした。これらのことからイオウゴケの構成員は硫化水素利用のための菌類とバクテリアの結びつきが非常に強く、光合成を行う構成員の藻類は入れ替え可能であるという、共生体の三者関係の全体像が明らかになってきた。この成果は高く評価できる。 ハコネサルオガセに関しては、菌類と藻類の単独培養株から生育させた再合成共生体が夏場のインキュベーターの故障により全滅したため研究の遅れが出てしまった。再合成共生体は生育に少なくとも3ヶ月以上かかるため、研究に遅れが出ている。以上のことより、夏場のインキュベーターの故障によりハコネサルオガセの研究が遅延したが、イオウゴケの研究が順調に進んでいることから、概ね順調に進んでいると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、イオウゴケの採集を行い、藻類のアンプリコン解析、トランスクリプトーム解析、硫黄代謝物解析、プロテオーム解析を行う予定である。これらの解析により、代謝経路と硫黄酸化物のプロテオームから予測した硫化水素代謝経路をさらに明らかにできると期待している。また、イオウゴケの外群も含めて菌類と藻類のゲノムを詳細に解析することにより、硫化水素代謝の経路の獲得が共生体の構成員のゲノムどのように影響を与えたかを明らかにできる。再合成株の培養が遅れたハコネサルオガセについては共生体にバクテリアがいる場合と、いない場合で再合成株の形質に違いがあることが見出されたので、これらを数値化し有意に再合成株が異なることを起きらかにする。また、この形質の違いがどのような遺伝子発現の変化、タンパク質量の変化、代謝物の量の変化によるかを調べるため、各種オミクス解析を続ける予定である。
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