研究課題/領域番号 |
23K21342
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補助金の研究課題番号 |
21H02567 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45040:生態学および環境学関連
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
衣笠 利彦 鳥取大学, 農学部, 准教授 (80403377)
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研究分担者 |
寺本 宗正 鳥取大学, 国際乾燥地研究教育機構, テニュアトラック助教 (10761041)
吉原 佑 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (50552379)
佐々木 雄大 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (60550077)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2021年度: 7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
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キーワード | 温暖化 / 放牧地生態系 / 寒冷乾燥地 / モンゴル / 草原 / 霜害 / 牧畜 / 融雪・融解 |
研究開始時の研究の概要 |
寒冷乾燥地の放牧地生態系における温暖化影響の解明を目指し、モンゴル草原をモデル地域とした研究を展開する。特に、早春期の温暖化影響に焦点を当て、草原の様々な生態系機能や生態系サービス(植物成長や草原の種多様性、生態系の窒素・炭素循環、植物の飼料価値や家畜生産)に対する影響を包括的に解明する。野外温暖化操作実験、室内環境操作実験、長期観測データの統計解析といった異なる研究手法を組み合わせることで、生態系の変化を異なる空間的・時間的スケールで重層的に解析する。本研究を通して、温暖化応答のプロセスの理解から生態系の将来予測まで、モンゴル寒冷乾燥草原における温暖化影響の総合的理解を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究課題では、寒冷乾燥地の放牧地生態系における温暖化影響の解明を目指し、モンゴル草原をモデル地域とした研究を推進した。特にモンゴル草原の「寒冷乾燥地」という特徴に着目し、早春期の融雪および凍土融解の早期化を通した温暖化影響に焦点を当てて研究を行った。草原の様々な生態系機能や生態系サービスに対する影響を包括的に解明するため、植物生態生理学、群集生態学、物質循環学、畜産草地学といった専門分野の異なる研究者と協力体制を築いた。研究にあたっては、野外温暖化操作実験、室内環境操作実験、長期観測データの統計解析といった異なる研究手法を組み合わせ、生態系の変化を異なる空間的・時間的スケールで重層的に解明することを目指した。 2023年度は2022年度に開始した野外操作実験を継続し、夏期に現地調査を行い植生に対する春季と夏季の温暖化の影響を評価した。温暖化操作によって植物量が減少し、その減少は冬季温暖化処理よりも夏季温暖化処理で大きい傾向が見られた。CO2フラックスも概ね同様の傾向を示しており、結果の信憑性を高めるため2024年度も実験を継続する予定である。 室内実験によってモンゴル草原植物の耐凍性を評価し、概ね-10~-6℃が50%致死低温であることがわかった。過去の気候データの解析により、調査地周辺では温暖化が進み50%致死低温にまで気温が低下する日は前進しているものの、凍害リスク(50%致死低温日までにどれだけ成長しているか)はあまり変化していないことが分かった。 実験と並行して、これまでに行った長期モニタリングデータの解析や野生牧草の飼料価値の温暖化応答および被食後再成長能力の結果を論文にまとめ、国際誌に公表した。研究期間中は研究代表者と分担者で定期的にオンラインおよび対面によるミーティングを行い、モンゴル国の調査地で合同調査を行うことで研究体制の強化に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は2022年度に開始した野外操作実験を継続し、夏に現地調査を行い植生に対する春季と夏季の温暖化の影響を評価した。冬季に実験装置に一部不具合が生じたものの、おおむね順調に実験は進んでいる。モンゴルにおける気候の長期モニタリングデータの解析により、乾燥度の高いモンゴル南部地域では年間の降水量が増加しても生産量は必ずしも増加せず、モンゴル全域を通して年間の乾燥度が改善されても生産量は必ずしも増加しないことなどが明らかとなった。また過去の春季気温のデータと実験によって決定された植物の耐凍性温度を組み合わせした解析から、調査地周辺では温暖化が進み50%致死低温にまで気温が低下する日は前進しているものの、凍害リスク(50%致死低温日までにどれだけ成長しているか)はあまり変化していないことが分かった。このように、本研究課題で目的としていた、異なる研究手法を組み合わせ、生態系の変化を異なる空間的・時間的スケールで重層的に解明するという試みは達成されつつある。これまでの結果の一部は論文として国際誌に公表されており、本研究課題の成果は順調にあがっている。
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今後の研究の推進方策 |
2024年は引き続き野外操作実験を継続して、冬季と夏季の温暖化が草原植生および草原の炭素収支に与える影響を明らかにする。2024年夏の調査でいったん区切りとし、継続実験が必要であるかどうかを検討する。モンゴルの長期気候データの解析を進め、生物多様性と乾燥度の関係を解明する。またモンゴル全土48地点の40年間の気候データの解析をさらに進め、モンゴル全土の温暖化傾向と霜害リスクの変化を明らかにする。モンゴル夏季気温と家畜の健康状態の関係を解析し、温暖化による家畜生産への影響を明らかにする。これまでの研究成果を論文にまとめ、国際誌に投稿する。本研究課題終了後の次期研究課題について、現地研究協力者および研究分担者とディスカッションを行い方針を定める。
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