研究課題/領域番号 |
23K21345
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補助金の研究課題番号 |
21H02575 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45060:応用人類学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
前田 隆浩 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (40284674)
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研究分担者 |
吉浦 孝一郎 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 教授 (00304931)
青柳 潔 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (80295071)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,250千円 (直接経費: 12,500千円、間接経費: 3,750千円)
2024年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2021年度: 6,890千円 (直接経費: 5,300千円、間接経費: 1,590千円)
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キーワード | HTLV-1 / 分子系統解析 / コホート研究 / THLV-1 |
研究開始時の研究の概要 |
ヒトレトロウイルスの一種であるHTLV-1は成人T細胞白血病・リンパ腫やHTLV-1関連脊髄症の原因ウイルスとして良く知られている。HTLV-1は主に母乳や性交渉を介して感染し、CD4陽性リンパ球の宿主DNAにプロウイルスとして組み込まれ生涯にわたって感染宿主と共存するが、多くの研究でキャリアの死亡リスクとの関連が明らかにされている。本研究ではHTLV-1キャリアを対象としてHTLV-1ゲノムの塩基配列を決定し、分子系統解析によってサブグループ分類を行った上で、ブループ毎の疾患感受性について解析する。そして、HTLV-1キャリアの追跡研究によって多疾患との関連について研究を行う。
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研究実績の概要 |
長崎県五島市に構築している多疾患コホート研究で収集したHTLV-1キャリアの384血液検体(2017年度77検体、2018年度120検体、2019年度154検体、2021年度33検体)から抽出したDNAを用い、ハイブリダイゼーションキャプチャー法によって作成したライブラリーを次世代シークエンサーを使ってHTLV-1プロウイルスの全ゲノム解析を行った。このうち、HTLV-1プロウイルスゲノム情報の取得状況が良好であった261検体(68.0%)のゲノム情報を使って分子系統解析を行った結果、HTLV-1プロウイルスは大きく3つのサブグループに分類できることが明らかになった。 そして、HTLV-1の分子系統別疾患感受性を検討するため、HTLV-1関連疾患の一つであるぶどう膜炎について、多疾患コホートに登録されている住民の追跡調査を行った結果、HTLV-1キャリア671例中、21例のぶどう膜炎患者がリストアップされた。この21例と261検体分のHTLV-1プロウイルスゲノム情報とを突合したが、ぶどう膜炎特異的なサブグループは検出されなかった。 2021年度の研究によって、HTLV-1キャリア追跡研究は五島市多疾患コホート研究のテーマとして確立されたが、2022年度は五島市で開催された一般住民健診のうち10日間の健診に参加し、トータルで571名の研究協力者を登録してデータとサンプルを入手した。データは専用のデータベースに登録し、血清は専用のディープフリーザーに保存した。また、571名の研究協力者から抗HTLV-1抗体陽性者を選定し、全血サンプルからDNAを抽出して2023年度の解析に備えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HTLV-1キャリアの全血から抽出したDNAを用い、ハイブリダイゼーションキャプチャー法によって68.0%のサンプルでHTLV-1プロウイルスの全ゲノム解析が成功し、分子系統解析によって3つのサブグループに分類できたこと、そしてHTLV-1関連疾患の一つであるぶどう膜炎の患者データを分子系統解析結果と突合することができたことは大きな進展である。さらに、地域医療機関と多疾患コホート関係者の協力を得て、HTLV-1関連疾患の追跡研究が主研究テーマに位置づけられたことで本研究の手法は確立されたと考える。 また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって制限されていた一般住民健診が、コロナ禍前に近いレベルに戻ってきたことから、安定的なサンプルとデータの収集が可能となったことは、本研究を進めていく上で大きな推進要因となっている。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度から2021年度までに取得・保存されたHTLV-1キャリアのDNA671検体のうち、384検体のHTLV-1プロウイルスゲノム解析が終了したが、2023年度には残り287検体と2022年度の検診で新たに取得したHTLV-1キャリアのDNA検体についてHTLV-1プロウイルスゲノム解析を行う。HTLV-1の分子系統別疾患感受性を検討するために、2022年度はぶどう膜炎とサブグループとの突合を行ったが、2023年度は検体数を増やして実施する予定である。また、HTLV-1関連疾患として、ぶどう膜炎に加えて、歯周疾患と動脈硬化についても分子系統別疾患感受性の検討を行う。 2022年度には、HTLV-1プロウイルスの全ゲノムを使って分子系統解析を行い、3つのサブグループに分類できることを証明したが、HTLV-1はgag, pol, env, pxの4領域から構成されていることから、この各々の領域で分子系統解析を行い領域ごとのサブグループ解析を実施する予定である。そして、全ゲノム・領域ごとの5パターンについて、ぶどう膜炎・歯周疾患・動脈硬化の分子系統別疾患感受性を検討する。 2023年度においても、五島市の一般住民健診とあわせて多疾患コホート研究を進め、研究協力者からHTLV-1キャリアを抽出して本研究に組み入れる。ただ、2023年度は、2022年度とは異なる地域での一般住民健診に参加し、広く五島市全域での検体・データ収集に務める。
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