研究課題/領域番号 |
23K21354
|
補助金の研究課題番号 |
21H02612 (2021-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47010:薬系化学および創薬科学関連
|
研究機関 | 長崎国際大学 |
研究代表者 |
佐々木 茂貴 長崎国際大学, 薬学部, 教授 (10170672)
|
研究分担者 |
塩田 倫史 熊本大学, 発生医学研究所, 教授 (00374950)
村瀬 裕貴 崇城大学, 薬学部, 助教 (10814486)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
|
キーワード | 脆弱X症候群 / リピート病 / FMR1遺伝子 / CGGリピート / 低分子創薬 / 転写活性化 / 翻訳活性化 / CGGリピー / 低分子リガンド / 分子集積薬 / 遺伝子発現促進 / FMR1 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、DNA中のCGGリピート配列に協奏的に自己集積する低分子を基盤に、リピート数増加に伴い発症する脆弱X症候群(FXS)に対する低分子創薬を目指している。CGGリピート領域のシトシン5位メチル化の阻害が、FMR1遺伝子転写を活性化し、症状を軽減させることがわかり、新しい創薬戦略として注目されている。本研究で我々はCGGリピート配列に自己集積する低分子を基盤に、細胞内でリピート数402の疾患モデル細胞のFMR1遺伝子の転写を活性化する分子GW283を見出した。しかし、翻訳は活性化しなかったため、翻訳の障害となっているRNAグアニン4本鎖を解離させる分子の配発を検討する。
|
研究実績の概要 |
本研究では、DNA中のCGGリピート配列に協奏的に自己集積する低分子を基盤に、リピート数増加に伴い発症する脆弱X症候群(FXS)に対する低分子創薬を目指す。FXSの原因遺伝子であるFMR1遺伝子にはCGGリピート領域があり、このリピート数が55以下では正常であるのに対し、200以上では遺伝子が転写されず、発症する。近年、CGGリピート領域のシトシン5位メチル化の阻害が、FMR1遺伝子転写を活性化し、症状を軽減させることがわかり、新しい創薬戦略として注目されている。本研究では我々が開発したCGGリピート配列に自己集積する低分子を基盤に、疾患モデル細胞のFMR1遺伝子の転写を活性化、さらには、翻訳活性化を検証し、FXSに対する新しい創薬を目指す。 2022年度までに、FMR1遺伝子のCGGリピートが伸長したヒトX染色体を微小核融合した細胞株を用いてCGGリピート作用薬のスクリーニングを行い、FMR1 mRNA発現を上昇させるGW283を同定した。FMR1 mRNA発現が全く認められないFXS由来線維芽細胞においてDNA脱メチル化剤5-aza-2-deoxycytidineとGW283を混合処置することで、FMR1 mRNA発現を上昇させることができた。しかし、FXS由来線維芽細胞でFMRPタンパク質発現解析を行ったところ、タンパク質発現の上昇は見られなかった。 このことは、転写合成されたFMR1 mRNA の核外移行が阻害されているか、あるいはFMR1 mRNAの翻訳が阻害されている可能性が考えられた。その原因として、長大なリピート部位におけるグアニン4本鎖などのRNA高次構造を想定し、モデルオリゴ核酸を用いて低分子触媒によるグアノシン酸化を検討した。有効な酸化触媒は見いだされていないが、次年度も高次構造変換や酸化を誘起する低分子の検索を継続する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、FXSの原因遺伝子であるFMR1遺伝子中にある膨大な繰り返し CGGリピートを標的にした低分子化合物を探索し、FMR1遺伝子がコードする脆弱X精神遅滞タンパク質(FMRP)の産生を促し、創薬に展開しようとするものである。まず、FMR1 mRNA発現が全く認められないFXS由来線維芽細胞において、mRNA発現を活性化する低分子化合物の決定が重要である。この点では、DNA脱メチル化剤5-aza-2-deoxycytidineとの共存によって、高リピート配列選択的にmRNA発現を活性化する低分子GW283を見出したことは、重要な展開である。さらに、GW283がCGGリピートのメチル化阻害能を持つこと明らかにした。このことから、5-aza-2-deoxycytidineの作用により脱メチル化されたCGGリピートの再メチル化が阻害されることでFMR1 mRNA発現が促進されたことが示唆された。しかしながら、タンパク質発現量は上昇しないことも明らかになった。2023年度は、mRNAに含まれるRNAのCGGリピート部分がグアニン4本鎖などの高次構造を形成し、核外移行の阻害や翻訳阻害の原因になっている可能性を考え、グアニン4本鎖構造に結合し、構造遷移を誘起させる低分子や、グアニンを酸化してG4構造を不安定化する酸化触媒の検討を行った。しかし、構造遷移を誘起させる低分子でも翻訳は促進されず、グアニンを酸化する触媒も決定することはできなかった。このことから、本研究は当初の計画からやや遅れて進行している。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに決定したGW283により膨大な繰り返しCGGリピートからFMR1 mRNAの発現増強を確認した。酵素による実験でGW283はCGGリピートのメチル化を阻害したことから、RNAの発現増強はDNA脱メチル化剤5-aza-2-deoxycytidineの作用によって脱メチル化したCGGリピートの再メチル化をGW283が阻害していることによることが示唆された。しかしながら、FMRP蛋白質の産生は増加しなかった。これまでの報告では、長大なCGGリピート繰り返しを持つFMR1 mRNAは核外移行の阻害と、リボゾーム翻訳メカニズムの阻害が報告されている。そこで、2023年度はFMR1 mRNAのRNAリピート部分のグアニン4本鎖に作用し、ヘアピン―ループ構造に変化させる化合物分子による翻訳活性化効果を検証したが、活性化は観測されなかった。また、高次構造の破壊を目的にグアニン4本鎖のグアニンの酸化触媒を検討したが、有効な触媒は見いだされなかった。2024年度はレーザー光を用いた光酸化反応触媒を見出し、GW283との協働により細胞での転写活性化に続き翻訳活性化を検討する。
|