研究課題/領域番号 |
23K21378
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補助金の研究課題番号 |
21H02726 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49050:細菌学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山口 博之 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (40221650)
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研究分担者 |
中村 眞二 順天堂大学, 大学院医学研究科, 助教 (40207882)
THAPA JEEWAN 北海道大学, 人獣共通感染症国際共同研究所, 助教 (40837449)
大久保 寅彦 北海道大学, 保健科学研究院, 講師 (90762196)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2021年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
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キーワード | クラミジア・トラコマティス / 癌細胞 / 低酸素 / ミトコンドリア / 癌創薬 / PI3K/AKTシグナル / ドラッグ・スクリーニング / 芳香族炭化水素受容体AhR / MAPK / 情報伝達経路 / ドラッグスクリーニング |
研究開始時の研究の概要 |
私達は、発癌リスク因子でもある細胞内寄生性細菌性器クラミジア(Chlamydia trachomatis)の感染動態の解明研究から、クラミジア感染細胞と癌細胞の動態が類似していることに気づいた。具体的には、感染細胞は、癌細胞同様に低酸素環境に適応し、AKTの活性化にその増殖は依存していた。そこで本研究では、今迄紐付けられてこなかったこれら癌細胞の挙動と類似する感染動態の主軸をなす分子を手掛かりに、クラミジアが利用する新たな細胞内情報伝達経路と修飾機構を解明し、それら分子が癌治療の標的になりうるのか探り、新たな癌創薬研究を展開する。
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研究実績の概要 |
発癌の危険因子でもあるクラミジア(Chlamydia trachomatis)の細胞内への適応機構は、未だ遺伝子改変ができないこともあって明らかになっていない。一方、 クラミジア感染細胞の動態は癌細胞と極めて類似している。私達は癌細胞の挙動と類似する感染動態の主軸をなす分子を手掛かりに、クラミジアが利用する新たな細胞内情報伝達経路と修飾機構の解明を行ってきた。具体的には、PI3K-AKT経路の活性化やミトコンドリアに付随する経路、更にダイオキシン等毒物に対して解毒を司る芳香族炭素水素受容体AhRの活性化がクラミジアの増殖に影響を与え、また幾つかの癌標的既存薬がクラミジアの増殖を阻止することを見いだしている。当該年度は以下の成果を得た。1. Ct感染細胞では、細胞の生存性を促進する働きのあるリン酸化(Ser473)したAKTが封入体膜に集積することを見いだした。2. トリプトファンの誘導体であるインドールを用いた阻害実験とAhRのレポーターアッセイさらにsiRNAを用いたAhRのノックダウン実験より、Ctが細胞内で増殖する際に、AhRのスカベンジャー機能を利用していることを明らかにした。3. PI3K-AKT経路の活性化に関わるクラミジアが分泌するエフェクター蛋白を同定するために、タグ付けしたAKTとその抑制制御に関わるPTENの組み替え蛋白発現系を構築した。4. 炎症応答の制御に関わるリンパ系細胞(Jurkat)へのクラミジア感染が、酸素依存的に産生する炎症性サイトカインプロファイルを切り替えていることを見つけた。5. 既存薬ライブラリー(約4,000)のスクリーニングでクラミジアの増殖を顕著に抑制した薬剤(抗菌薬を除く)のKEGGとReactomeによる標的分子とパスウェイ解析より、クラミジアが標的とする新規候補分子と情報伝達系の同定に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度に立てた計画がほぼ予定通り遂行できたので本研究の進捗区分を「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果を踏まえ、以下の研究を実施する予定である。1. クラミジアによる感染細胞のAKT情報伝達系の修飾機構について: タグ付けしたAKTとその抑制制御に関わるPTENの組み替え体を用いて免疫沈降にてこれら分子に会合するクラミジア分泌エフェクターを同定する。またこれら組み替え蛋白を持続的に発現する細胞を構築し、その細胞内でのクラミジア分泌エフェクターとの相互作用をイメージングにて精査する。2. クラミジアによるAhRを介した細胞内修飾に関わる分子機構の検証: クラミジアがAhRのスカベンジー機能のみならずAhRを介してチューブリンの動態に必須なチューブリンの脱チロシン化を促進するので、この脱チロシン化により変動する分子を明らかにし、クラミジアの細胞内増殖におけるその分子動態の役割について明らかにする。3. 既存薬ライブラリー(約4,000)のスクリーニングでクラミジアの増殖を顕著に抑制した薬剤(抗菌薬を除く)のKEGGとReactome解析から同定された新規標的候補分子の妥当性について検証: それぞれの新規標的候補分子をsiRNAでノックダウンした細胞を用いてクラミジアの増殖様式の変化について検証する。4. クラミジアの細胞内標的分子に対する阻害剤の癌細胞のコロニー形成に与える影響: 阻害剤の足場依存的なコロニー形成抑制効果を検証すめとともに単癌マウスに標的分子に関わる阻害剤を摂取し、それら阻害剤の癌抑制効果についても検討する。
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