研究課題/領域番号 |
23K21379
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補助金の研究課題番号 |
21H02741 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49060:ウイルス学関連
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研究機関 | 藤田医科大学 (2024) 神戸大学 (2021-2023) |
研究代表者 |
定岡 知彦 藤田医科大学, その他部局等, 准教授 (00435893)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2021年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
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キーワード | 水痘帯状疱疹ウイルス / 潜伏感染 / 再活性化 / 融合転写産物 / エピジェネティクス |
研究開始時の研究の概要 |
90%以上の人類に感染する水痘帯状疱疹ウイルスは、初感染で水ぼうそうを発症し、全身の中枢神経軸に沿った知覚神経節神経細胞に潜伏感染する。潜伏感染者ではその生涯においてほぼ一度だけ再活性化し、帯状疱疹を含む様々な病態を示す。知覚神経細胞での潜伏感染・再活性化の分子機構はいまだ不明な点が多い。本研究計画では、研究代表者が確立したヒトiPS細胞由来知覚神経細胞潜伏感染モデルを用いて、水痘帯状疱疹ウイルス潜伏感染・再活性化機構のさらなる理解を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究計画では、水痘帯状疱疹ウイルスがヒト体内での潜伏感染標的細胞である知覚神経細胞での潜伏感染中に発現する、水痘帯状疱疹ウイルス潜伏感染遺伝子、VZV latency transcript:VLTの発現制御機構を明らかにすることで、潜伏感染より再活性化しない弱毒生ワクチンを創生すること最終目標の一つとしている。これを達成するためには、VLTの発現制御機構を明らかにすることと並行して、その開発基盤となる現行の生ワクチンウイルスの弱毒化機構を明らかにすることも重要となる。 研究計画2年目である2022年度は、VLT発現制御機構の探索を継続しながら、現行の生ワクチンウイルスの現在まで明らかではなかった弱毒化機構を明らかにし、その研究成果を論文としてウイルス学・微生物学研究においてトップランクに位置するmBio誌に掲載した(筆頭著者兼責任著者)。さらに共同研究の一環として、ヒトiPS細胞由来唾液腺オルガノイドがSARS-CO-V2ウイルス研究に有用であることを示す論文をNature Cell Biologyに掲載した。まったく異なるウイルス研究ではあるが、本研究対象である水痘帯状疱疹ウイルスは、ヒト体内において再活性化時にその唾液よりウイルスを排出することが明らかとなっており、同時にヒト唾液腺でのウイルス生活環は全く明らかになっていない。さらに再活性化時に唾液中にウイルスが排出されるが、唾液腺細胞におけるウイルス増殖による負の影響は認められず、唾液腺細胞におけるウイルス生活環は不明なままである。この共同研究を通して、神経細胞に限らない新たなウイルス潜伏感染・持続感染機構を明らかにできる可能性があり、ヒトiPS細胞由来唾液腺オルガノイドを用いた新たな水痘帯状疱疹ウイルス研究への足掛かりとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画初年度に明らかとなり、昨年度に改良を試みていた1)潜伏感染細胞数の増加、2)ウイルス再活性化の簡便な指標となるウイルス前初期遺伝子プロモーターに制御される蛍光タンパク発現遺伝子改変ウイルス作製、3)プロトコール改良によるヒトiPS細胞由来知覚神経細胞の分化の加速、以上の3点を達成し、律速要因の改善を達成した。 これらの改良したプロトコール・材料を使用し、当初の予定であったCUT&Tagによるウイルスゲノムエピジェネティック修飾の解析を行なったが、神経細胞を用いた最適化されたプロトコールが存在せず、現在も検討中であり、この点において当初の研究計画よりも遅れている点があると考えられる。 同時に、研究計画当初には想定していなかった、開発基盤とすべき現行生ワクチンの、今まで報告がなかった最も重要な弱毒化機構を明らかにし、かつ論文化できたことは計画以上の進展として評価できる。さらに、神経細胞以外のヒトiPS細胞由来唾液腺オルガノイドという、劇的に研究計画を推進できる可能性のある研究材料を見出し、ウイルス研究に有用であることを論文化したことも当初の計画以上の進展として評価できる。 全体として、当初の研究計画では予想していなかった問題に直面し、それらを解決、あるいは検討中であるという点と、飛躍的に研究を推進することができる研究成果を2報論文化したという点を考慮して、おおむね順調に進展していると自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、新たに作製が完了した再活性化を可視化可能な遺伝子組換えウイルスと、ヒトiPS細胞由来知覚神経細胞を組み合わせた潜伏感染モデルにおける、ウイルスゲノムエピジェネティック修飾を明らかにすることに注力する。昨年度の検討により、抑制性ヒストン修飾は細胞数を2倍程度に上げることで解析可能であると予測されるが、主な標的である転写因子の検討にはさらなる細胞数が必要な可能性が明らかとなっている。またVLTの発現制御には、標的としてきた転写因子と同時にオープンクロマチン領域の検討も視野に入れ、ATAC-seqも考慮する。潜伏感染細胞数を増加させ、CUT&Tag(あるいはCUT&RUN)、ATAC-seq等を検討し、潜伏感染におけるウイルスクロマチンの全体像を捉えることを目指す。 同時に、in silico解析により、すでに転写因子が結合しうるウイルスゲノム領域の探索は完了しており、上記のwet実験を推進しつつ、VLT発現制御に関わるウイルスゲノム領域における変異を、再活性化可視化可能な遺伝子組換えウイルスに導入し、これらの領域における変異がウイルス再活性化に及ぼす影響の探索も開始する。 以上の達成を目指しながら、共同研究をベースとして、ヒトiPS細胞由来唾液腺オルガノイドを用いたウイルス感染実験を開始し、まず唾液腺におけるウイルス感染環を検索する。さらに明らかとなった感染環(溶解感染・潜伏感染・持続感染)におけるウイルス遺伝子発現を検討し、新たな知見の獲得・研究の推進を目指す。
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