研究課題/領域番号 |
23K21382
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補助金の研究課題番号 |
21H02746 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49060:ウイルス学関連
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
山根 大典 公益財団法人東京都医学総合研究所, 疾患制御研究分野, 主席研究員 (60782761)
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研究分担者 |
結城 明香 国立感染症研究所, 安全実験管理部, 主任研究官 (50450557)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2021年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
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キーワード | 自然免疫 / インターフェロン制御因子 / 肝炎ウイルス / ウイルス |
研究開始時の研究の概要 |
宿主細胞は、ウイルス感染に応答してインターフェロン(IFN)をはじめとする抗ウイルスシグナルを活性化し抗ウイルス状態を形成すると考えられてきた。一方、肝細胞においてはIFNとは独立したウイルス抑制機構が存在し、その仕組みの一つとしてIRF1による基底レベルの抗ウイルス防御層が存在することを明らかにしてきた。本研究では、IRF1に加えて恒常的に機能していると考えられる他のIRFタンパク質(IRF2,-6,-8,-9)の活性制御機構および機能的役割について、培養細胞に加えて感染動物モデルの両面から詳細に解析する。これにより、ウイルス感染に対し基底レベルの防御層を担う自然免疫の仕組みを解明する。
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研究実績の概要 |
これまで注目されてきたウイルス感染に「応答」して活性化されるシグナル伝達機構に対し、「恒常的」な抗ウイルス防御層を制御する仕組みについてはほとんど解明されていない。この恒常的な防御層の形成に中心的な役割を果たす転写因子IRF1について、これまでIRF1結合因子を介した活性化機構の解析を行い、カゼインキナーゼ2(CK2)の制御サブユニットとして知られているCSNK2Bがリン酸化非依存的にIRF1の転写活性を調節していることを明らかにした。CSNK2Bの抗ウイルス機能について、IRF1感受性の高い病原体であるA型肝炎ウイルス(HAV)の複製量を指標として解析を行ったところ、CSNK2Bのノックアウト効率に比例してHAV複製量の増加が認められた。CSNK2Bノックアウト細胞においてはIRF1の転写活性の低下と、IRF1が転写制御する抗ウイルス遺伝子であるPLAAT4(別名RARRES3)発現量の有意な低下が認められたことから、CSNK2B-IRF1-PLAAT4経路を介した抗ウイルスシグナル伝達経路の存在が明らかとなった。IRF1は恒常的な転写活性のみならず、IFNγやオールトランスレチノイン酸によってもその発現が誘導され、抗ウイルスシグナル伝達を活性化することが知られている。実際、これらのアゴニストは濃度依存的にHAV複製を抑制した。そこでIFNγ刺激下における抗HAV活性を評価したところ、CSNK2Bをノックダウンした細胞においてはPLAAT4のノックダウンと同様にIFNγによるウイルス抑制効果が有意に減弱することが判明した。このことから、CSNK2BはIRF1の恒常的な転写のみならず、アゴニスト誘導性の転写をも増強する因子であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで未解明であった「基底レベル」で機能する抗ウイルス因子であるIRF1の分子制御メカニズムについて、CSNK2Bの結合を介した機能調節機構の存在を明らかにした。また、その結合が直接的な抗ウイルスエフェクタ―であるPLAAT4のみならず、多くのIRF1標的遺伝子の転写誘導を有意に増強することをゲノムワイドな解析により明らかにした。さらに、その増強メカニズムは恒常的な転写のみならずアゴニスト誘導性の転写においても機能することを明らかにし、これらの成果は国際誌Nucleic Acids Research誌に掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究により、CSNK2B がIRF1下流で発現制御される強力な抗ウイルスエフェクター分子であるPLAAT4の発現を有意に増強する因子として同定したが、引き続きその詳細な作用機序および基底レベルの防御機能を制御する他の因子を探索する必要がある。また、抗ウイルス機能をもつ転写因子によって活性化され、直接抗ウイルス作用を発揮するエフェクター分子の作用機序についても、創薬標的を同定するために解明していく必要がある。IRF1以外の抗ウイルス転写因子についても遺伝子ノックアウト解析により機能解析を進めているが、タンパク質解析のため最適な抗体使用条件を検討する必要がある。新たな因子を同定することが出来た折には、既に重要性が明らかであるIRF1との複合体形成および抗ウイルス遺伝子の転写増強における協調の仕組みを明らかにする。これまでに当研究室において構築したタンパク質精製、インタラクトーム解析、さらに標的DNAへの結合解析により、シグナル伝達経路の上流から下流の抗ウイルスエフェクター分子に至る作用機序の解明を目指す。また作用機序の解析から、抗ウイルス作用をもつ化合物の同定の他、ウイルス感染症の病態を再現可能な小動物感染モデルを用いた薬効および安全性評価へとつなげ、抗ウイルス薬の開発を進展させることを目指す。
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