研究課題/領域番号 |
23K21389
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補助金の研究課題番号 |
21H02786 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤木 文博 大阪大学, 大学院医学系研究科, 寄附講座准教授 (40456926)
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研究分担者 |
瀬尾 茂人 大阪大学, 大学院情報科学研究科, 准教授 (30432462)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
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キーワード | CRISPR Library / 腫瘍免疫 / T細胞 / 癌免疫 / CRISPR-Cas9 / 癌免疫療法 / CRISPR gRNA / TCF-1 / CRISPR gRNA library / メモリーT細胞 / 疲弊T細胞 / CRISPR-gRNA library / CRISPR |
研究開始時の研究の概要 |
免疫療法は癌を根治させることができる治療法として期待されている。しかし、癌は巧みに自分自身や周囲の環境を変化させることで免疫細胞からの攻撃を避けることができ、これが免疫療法の大きな障害となっている。本研究課題では、網羅的な遺伝子ノックアウト技術を多角的に活用することで、癌細胞の免疫細胞からの逃避機序を理解し、それを標的とした新しい治療戦略を探索するとともにヒトへの応用を目指した基盤研究を行う。
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研究実績の概要 |
CRISPR-gRNA libraryによる網羅的遺伝子ノックアウトを活用した新しい「癌-免疫チェックポイント標的」を同定することを目指して、T細胞に焦点を当てて研究を行った。 T細胞の機能低下に関与する遺伝子として前年度までに遺伝子X(未公表のため仮称)を同定し、遺伝子XをT細胞で特異的に欠損するコンディショナルノックアウトを作製した。担癌マウスに癌抗原特異的遺伝子X欠損T細胞を移植することで腫瘍の増大を抑制し、マウスの生存期間を有意に延長することができた。この遺伝子X欠損T細胞の強い抗腫瘍効果は、腫瘍局所へのT細胞の集積が理由として考えられた。そのメカニズムを解析したところ、遺伝子X欠損T細胞の腫瘍局所への集積は、リンパ節を欠損しているマウスでも観察されたことから、リンパ節からの動員や抗原提示とは関係がない機序であることが分かった。結果として腫瘍環境下での生存能の亢進がその大きな要因であることが判明した。興味深いことに、遺伝子X欠損T細胞は野生型と同様に、腫瘍局所においてPD-1分子を高発現しており、遺伝子X欠損T細胞とPD-1分子に対する免疫チェックポイント阻害療法の併用によって強い抗腫瘍効果を惹起することに成功した。 また、癌免疫療法の基盤であるTCF-1陽性T細胞の誘導・維持に関与する遺伝子を同定するためTCF-1レポーターマウスを作製した。このTCF-1レポーターマウスとCas9マウスを交配することでCas9発現TCF-1レポーターマウスを作製し、TCF-1の誘導・維持に重要な遺伝子をCRISPR gRNAライブラリを用いて探索を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子XはT細胞の腫瘍環境下での生存を抑制していることを明らかにすることができ、また、遺伝子XはPD-1とは独立した免疫抑制分子である知見もえた。また、現在TCF-1レポーターマウスを用いることで、免疫療法の基盤となる細胞であるTCF-1陽性T細胞の分化誘導・維持に関与する遺伝子候補を単離し解析を進めている。これらの成果を総括すると、おおむね順調に本研究課題が進捗していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き遺伝子X欠損T細胞の腫瘍免疫における働きについて詳細に検討していく。さらに本年度で同定されたTCF-1陽性T細胞の分化誘導・維持を制御する遺伝子候補の機能解析を進め、癌患者の免疫力を底上げる新たな標的遺伝子の同定に発展させる。具体的には、同定された遺伝子を癌抗原特異的T細胞においてノックダウンもしくは強制発現させ、その抗腫瘍効果を評価する。また、癌免疫療法のエンジンはTCF-1陽性T細胞であるが、実際に腫瘍細胞を攻撃するのはTCF-1陰性のエフェクターT細胞である。エフェクターT細胞はアポトーシスを起こし易いことから、その利用について難しい一面があった。次年度ではエフェクターT細胞のアポトーシス感受性や弱い増殖能に注目し、これを解決する標的遺伝子を探索することで、新たな癌免疫療法の開発につなげていきたい。
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