研究課題/領域番号 |
23K21397
|
補助金の研究課題番号 |
21H02812 (2021-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分51030:病態神経科学関連
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
伊東 大介 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任教授 (80286450)
|
研究分担者 |
西本 祥仁 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (30398622)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2021年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
|
キーワード | 神経変性疾患 / 炎症 / 遺伝子改変マウス / ミクログリア / 認知症 / 筋萎縮性側索硬化症 / 前頭側頭型認知症 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、アルツハイマー病(AD)を始めとする神経変性疾患の病態において、炎症とミクログリアの重要性が明らかとなりつつある. 一方、脳の炎症の中核を担うミクログリアの活性過程の分子メカニズムは未だ不明のままである. 申請者らが同定したミクログリア特異的カルシウム結合蛋白Iba1は、ミクログリアの活性化時に鋭敏に誘導されるが、活性化の分子スイッチとしての役割は検討されていない. 本研究では、神経変性におけるミクログリア/炎症の分子病態解明を目指し、3つの遺伝子改変マウスを樹立して新規治療標的の同定を目標とする.
|
研究実績の概要 |
近年、アルツハイマー病(AD)を始めとする神経変性疾患の病態において、炎症とミクログリアの重要性が明らかとなりつつある. 申請者らが同定したミクログリア特異的カルシウム結合蛋白Iba1は、ミクログリアの活性化時に鋭敏に誘導されるが、活性化の分子スイッチとしての役割は検討されていない. 本研究では、神経変性におけるミクログリア/炎症の分子病態解明を目指し、3つの遺伝子改変マウスを樹立して新規治療標的の同定を目標とする. AIM1: Iba1-KOマウスをゲノム編集で作成し、アルツハイマー病、タウオパチーモデルマウスとの交配を始めている。 AIM2: 抗IgLON5抗体脳症は、睡眠障害、進行性核上性麻痺と類似した嚥下障害や歩行障害、認知機能障害、不安などの精神症状と亜急性に脳幹被蓋部にタウ蛋白が蓄積することが特徴である. 我々はIgLON5-KOを作成、表現型の解析を行った. IgLON5-KOマウスは野生型に比べ、運動機能検査であるワイヤーハングテストやロータロッドテストの成績が劣っていた。さらに、IgLON5-KOマウスは、open-field testなどの行動試験において、不安様行動や多動性が低下した。また、IgLON5/-マウスは、文脈的恐怖条件付け試験において、遠隔記憶が不良であった。しかし、脳波による睡眠障害やタウ凝集(hTau.P301S (Tg2541)との交配)は検出されなかった。これらの結果は、IgLON5が活動性、不安、運動能力、文脈的恐怖記憶と関連していることを示唆している。 AIM3:新規筋萎縮性側策硬化症モデルマウスとしてゲノム編集マウス(FUS-H517D)の解析を進めている.歩行解析とRotarodで歩行異常を認め,組織学的評価では脊髄前角の運動ニューロンの減少やFUSタンパク質の核内から細胞質への局在変化など明白な表現型を認めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AIM1:Iba1-KO マウスは既に樹立しており、現在計画繁殖の下、網羅的行動解析を行っている。また、アルツハイマー病モデルマウス(AppNL-G-F/NL-G-F )、タウオパチーモデルマウス(hTau.P301S (Tg2541))との交配を始めている。 AIM2: IgLON5ノックアウトマウスの表現型解析和終了し、IgLON5が活動性、不安、運動能力、文脈的恐怖記憶と関連していることを示した。一方、hTau.P301S (Tg2541)との交配から、IgLON5は、タウのホメオスタシスには直積関与していない可能性が示唆された。抗IgLON5病の様々な表現型を比較すると、抗IgLON5病は部分的にIgLON5の機能喪失と関連している可能性がある。しかし、睡眠障害やタウ凝集などの他の表現型は、IgLON5の機能獲得や/炎症による神経細胞損傷によって引き起こされる可能性がある。本内容は、Neurol Neuroimmunol Neuroinflammに掲載された(doi:10.1212/NXI.0000000000200234) AIM3:新規筋萎縮性側策硬化症モデルマウスとして、ゲノム編集マウス(FUS-H517D)を作成した.歩行解析(DigiGait解析)とRotarodで歩行異常を認め,組織学的評価では脊髄(腰髄)前角の運動ニューロンの減少やFUSタンパク質の核内から細胞質への局在変化など明白な表現型を認めている.また,病初期から脊髄(腰髄)前角の運動ニューロンにおける核膜・核膜孔の顕著な歪みを観察した。
|
今後の研究の推進方策 |
AIM1:Iba1-KOマウスは,発達過程の評価のため行動学的,組織学的検討を推進している.行動解析としては,運動機能:Rota-rod,hanging wire test,認知機能:不安様行動 (open field),空間作業記憶 (Y maze),文脈記憶 (Trace fear conditioning test),社交性の障害(3 chambers test)を検討する. 神経系形態学的検討は詳細に進め,神経発生,正常脳組織におけるミクログリアIba1の役割を明らかにする. また,電子顕微鏡にて髄鞘の構造の変化,特にMcNamaraらの報告で見られたinner tongueの増大やミエリンの肥厚などを評価する. さらに,Single cell RNA-seq解析にて,ミクログリアを含めた各細胞の特徴的な遺伝子発現プロファイルの変化を明らかにする. Iba1-KO マウスは、アルツハイマー病モデルマウス、タウオパチーモデルマウス、ALSモデルマウスマウスとの交配により海馬、大脳皮質でのアミロイドβ、タウ/FUS蓄積の出現、神経細胞死、不溶性タウ/FUSを定量的に評価する. 運動解析、認知機能の解析を行う。 AIM3:ALSモデルマウス(FUS-H517D)における空間オミックス解析(spatial transcriptomics)を計画しているこれにより,細胞間相互作用や組織内の細胞組織構造など立体的な遺伝子発現パターンの特徴を捉えることが可能となり,ALSモデルマウスにおいて,経時的に空間オミックス解析を行い,核膜・核膜孔の障害の詳細なメカニズムを明らかにすることができる.具体的には,核膜・核膜孔の形態異常が認められる運動ニューロンと認められない運動ニューロンにおける遺伝子発現の相違点を評価することで,核膜・核膜孔の保護目的とした新規治療ターゲットを同定する.
|