研究課題/領域番号 |
23K21415
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補助金の研究課題番号 |
21H02853 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52030:精神神経科学関連
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
久保 健一郎 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (20348791)
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研究分担者 |
林 周宏 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (60373354)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2025年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2024年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2021年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | 精神神経疾患 / 死後脳 / 組織学的解析 / 動物モデル / 白質神経細胞 / 空間的遺伝子発現解析 / 単一細胞解析 / Visium / 統合失調症 / 組織構築 / モデルマウス / GeoMX DSP / 死後脳組織 / 遺伝子発現解析 / 単一核解析 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、精神神経疾患に罹患した患者の死後脳組織を用いて、新たな独自の着眼点による組織学的解析と、理化学研究所との共同研究による最先端の遺伝子発現解析を行い、動物モデルを用いた解析を有機的に融合して、微細な組織構築変化を伴う精神神経疾患の一群について、その病態メカニズムを解明する。標的とする微細な組織構築変化の一つとして、大脳皮質の白質神経細胞の増加に注目する。組織学的解析によって白質神経細胞が増加している死後脳組織を抽出して、単一細胞解析や遺伝子発現解析を行う。解析の結果に基づいてモデルマウスを作成し、組織学的解析や行動解析を行い、微細な組織構築変化を伴う精神神経疾患の病態を明らかにする。
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研究実績の概要 |
統合失調症に罹患した患者と非精神疾患対照者の死後脳組織を用いた、空間的遺伝子発現解析、および、単一細胞(核)解析を行い、その結果についての形態学的な検証を進めた。 空間的遺伝子発現解析のうち、Visium法(10X GENOMICS社)を用いた解析においては、精神疾患死後脳・DNAバンクから供与された、統合失調症に罹患した患者と非精神疾患対照者の凍結脳組織4例ずつの前帯状皮質について、薄切した脳組織を解析用スライドグラスに貼付けた空間的遺伝子発現解析を行なった。 その結果、統合失調症の脳の複数の組織ドメインにおいて、GFAPやVIMなど、アストロサイトに関わる遺伝子の発現上昇が検出された。この所見を検証するため、統合失調症に罹患した患者と非精神疾患対照者の死後脳組織において、RNA蛍光in situハイブリダイゼーション(RNA-FISH)の一つであるRNAscope法を用いて、標的遺伝子の発現解析を行なった。RNAscope法では一分子のmRNAの検出が可能であるため、遺伝子発現についての定量的な解析が可能である。その結果、これらのアストロサイトに関わる遺伝子の発現増加が統合失調症の死後脳組織において有意に増加していることを確認した。類似した遺伝子発現変化は、単一細胞(核)解析においても検出された。 また、これらの解析結果を踏まえた、動物モデルの作成にも着手した。Visium法での解析の結果、統合失調症と非精神疾患対照者の間で発現変動を示す遺伝子として、アストロサイトで豊富に発現していることが知られる遺伝子に注目して、ゲノム編集技術の一種であるi-GONAD法を用いて、遺伝子変異マウスを作成した。野生型マウスとの掛け合わせを複数世代に渡って進め、系統の確立を進めた。加えて、空間的解析を行う上で基盤となる神経細胞の脳内空間的分布に関して、マウスを用いた基礎研究を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
統合失調症に罹患した患者と、非精神疾患対照者の死後脳組織を用いた空間的遺伝子発現解析を進めたところ、統合失調症における、アストロサイトに関わる遺伝子の発現上昇を検出することができた。上記のVisium法(10X GENOMICS社)を用いた解析に加え、GeoMX Digital Spatial Profiler (DSP)法を用いた解析を予定通り行うができた。これらは世界的にも新規の手法であり、国内でも実施例が少ない。このため、様々な条件検討や予行練習が必要であった。その上で、なんとか解析を進めた上で、一定の所見を得ることができたと考えている。単一細胞(核)解析についても、様々な条件検討や試行錯誤を繰り返した結果、遺伝子発現変化を検出することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、空間的遺伝子発現解析および単一細胞(核)解析によって検出されたアストロサイトに関わる遺伝子の発現上昇について、さらに多くの死後脳組織を用いた検証を進める。精神疾患死後脳・DNAバンクから提供される、統合失調症に罹患した患者と、非精神疾患対照者の死後脳組織から作成したホルマリン固定パラフィン(FFPE)切片を利用することで、より多数の症例を用いた解析を行うことが可能である。得られた所見については、臨床情報等も参照しながら、統合失調症全体のなかで、どの程度の妥当性・浸透性を持つのかを、明らかにする。 さらに、これらの解析結果を踏まえて、統合失調症の脳で変化している分子候補として得られた遺伝子の遺伝子改変マウスを作成して、その系統の樹立を進めている。この作成した遺伝子改変マウスの脳について、組織学的解析を行うとともに、行動学的解析を行い、統合失調症をはじめとする精神疾患に類似した表現形を示すかどうか、検証を行う。
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