研究課題/領域番号 |
23K21421
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補助金の研究課題番号 |
21H02863 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
白崎 謙次 東北大学, 金属材料研究所, 講師 (70447176)
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研究分担者 |
菊永 英寿 東北大学, 先端量子ビーム科学研究センター, 准教授 (00435645)
近藤 創介 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (10563984)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2021年度: 8,450千円 (直接経費: 6,500千円、間接経費: 1,950千円)
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キーワード | Ac-225 / 超高感度電気分析法 / 微小電極 / 電気化学測定法 / 元素分析 / 放射化学 / 電気化学 / 不純物測定 / 放射線測定 / 229Th/225Ra,225Acジェネレータ / 放射化学的純度 / 超高感度電気分析 |
研究開始時の研究の概要 |
Th-229/Ra-225, Ac-225ジェネレータから分離精製したAc-225を用いて標識した際の放射化学的純度(RCP)における再現性の欠如が課題となっている。 本研究では、収束イオンビーム微細加工装置を用いて微小電極を作製し、電極触媒増幅法を利用したフェムトモル超高感度電気分析によるAc-225系列核種の検出、定量を試みる。 さらにマイクロバンド電極による自己誘発型レドックスサイクルと電極触媒増幅法を組み合わせた超高感度電気分析法を新たに開発し、溶液中のAc-225系列核種の物質量を定量し、その化学状態を解明することで、RCPの再現性を確保すると共に分離精製法の最適化を試みる。
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研究実績の概要 |
本研究は4つのテーマについて実施した。テーマ1は「収束イオンビーム超微細加工装置(FIB)を用いた最適形状・材質の微小電極の作製」であり、テーマ2は「微小電極を用いた放射性物質使用環境下での電気化学測定」、テーマ3は「超高感度電気分析の実証」、テーマ4は「Ac-225分離精製法の最適化」である。 テーマ1では、マイクロバンド型についてはシングルバンド電極の検討を継続し、ナノピペット型については、ピペット原型を電気炉以外の方法で作成することを目標に、炭素コーターを用いた積層炭素皮膜の厚さと面方向の抵抗の関係を明らかにした。 テーマ2では、電気化学測定用ファラデーゲージ内にフローセルを設置し、市販の微小電極を使用した定電位電解時に発生するノイズを溶液フロー時と停止時との比較により検討した。同セッティングの下、希薄な酢酸鉛を含むメタノール溶液を用いた定電位電解を行った。測定濃度範囲とノイズの評価の結果から、一部のノイズに関しては制御系の設定によりフィルタリングが可能なこと、nM以下となると信号とノイズの判別が難しいことを確認した。 テーマ3の準備として、電極触媒増幅法のための電気化学セルの基礎検討を行なった。2種類の電解液を2槽に分けて入れ、両槽間に塩橋を介して接続することにより電気的、イオン的に中性となるような工夫がなされている。塩橋の代わりにイオン交換膜を使用した場合について、溶液中の陽イオンの膜透過について検討し、陰イオン交換膜を使用した場合でも特定の陽イオンについては膜透過量が陽イオン交換膜を用いた場合と同等であることが判明した。 テーマ4では、ICP-MSでは軽元素の定量分析が難しいこと、簡易迅速な分析に向かないことから、XRF測定による分析方法を検討した。また、Ac-225の分離精製時に、カラムから流出した無機成分を、カラム処理手順を変えることにより除去する方法を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
テーマ1では、櫛形に代わり単線電極の検討をした。電極端子部分を金、電極部分を炭素蒸着により作成することを試みた(具体的には、ガラスプレート上に炭素及び金を蒸着する)。横方向抵抗測定を実施したところ、1cm離れた2点間の抵抗が3MΩ程度あり、積層炭素膜の厚さの再現性を含めて電極作成の課題が明らかになった。ナノピペット型については、ピペット原型を電気炉以外の方法で作成することを目標に、イオンコーターを用いた積層炭素皮膜の検討を継続している。 テーマ2では、ファラデーゲージを購入し、市販のフローセル(φ3mm, GC電極)を使用した定電位電解時に発生するノイズ評価を実施した。ポンプ位置によってノイズが増減することが観測されたが、ある程度は抑制させることが可能であることが判明した。いずれにせよ、fM濃度の測定のためには数pAレベルに低減する必要があり、更なるノイズ低減対策が必要である。 テーマ3では、電極触媒増幅法のための電気化学セルの検討を実施中である。2槽式の電気化学セルを想定し、両槽間にイオン交換膜を設置し、これを介して接続することにより電気的、イオン的中和をとる構造となるようにした。イオン交換膜を用いた際に、濃度勾配による膜透過現象についてマグネシウムイオンやバナジウムイオンを用いて基礎的な評価を行なった。 テーマ4では、XRFを使ったAc-225分離精製手順の評価を実施中である。基本的には硝酸系にてTh-229とAc-225を含む子孫核種を、陰イオン交換樹脂を使用して分離した後、DGA樹脂を用いてRa-225とAc-225を分離する。陰イオン交換樹脂を用いたTh-229分離後の手順に関して、硝酸系から塩酸系に変えること、DGA樹脂によるAc-225分離後に陰イオン交換樹脂による精製過程を追加してみるなどの検討を実施中である。
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今後の研究の推進方策 |
テーマ1では、マイクロバンド(単線)型又はマイクロスポット(円形)の微小電極を作製する。微小金属スポット上に炭素膜を成膜し、電極外縁部分をFIBにより除去する方針である。また、ナノピペット型の微小電極については、引き続きピペット原型をイオンコーターによる積層炭素皮膜によって調製する方向で検討を進める。作製した電極をテーマ3にて使用、問題点をフィードバックし、最適形状・材質を決定する。 テーマ2では、フローセル、ファラデーゲージを含めた系全体のノイズ除去性能の検証を行う。またフィルターを適切に使用し、fM濃度の測定のためのノイズレベル(pAレベル)実現に向けての課題を明確化すると共に、現状の検出限界について明らかにする。 テーマ3では、イオン交換膜を組み込んだ2槽式の電気化学セルを用いて電極触媒増幅法を用いた鉛イオン検出を実施し、どこまで定量評価が可能なのかの結論を得る。 テーマ4では、引き続きの課題であった減衰後のAc-225試料溶液のICP-MSによる定量分析を行い、不純物元素の物質量を推測する。また、Ac-225の分離精製後の溶液について、TLCを用いて錯化剤との反応を評価する。
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