研究課題/領域番号 |
23K21429
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補助金の研究課題番号 |
21H02877 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52050:胎児医学および小児成育学関連
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
伊藤 悦朗 弘前大学, 医学研究科, 特任教授 (20168339)
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研究分担者 |
照井 君典 弘前大学, 医学研究科, 教授 (00333740)
工藤 耕 弘前大学, 医学部附属病院, 助教 (20455728)
土岐 力 弘前大学, 医学研究科, 講師 (50195731)
金崎 里香 弘前大学, 医学研究科, 助教 (60722882)
佐藤 知彦 弘前大学, 医学部附属病院, 助教 (70587005)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
採択後辞退 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
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キーワード | ダウン症候群 / TAM / 急性巨核芽球性白血病 / GATA1 / MYC / 分子標的療法 |
研究開始時の研究の概要 |
ダウン症新生児の約10%にTAMと呼ばれる前白血病が発症し、その約20%は急性巨核芽球性白血病 (DS-AMKL)に進展する。我々は、TAMにコヒーシン等の遺伝子異常が加わりDS-AMKLに進展することを発見した。我々はさらに多数例について解析し、DS-AMKLの新規原因遺伝子を10種類以上見出した。本研究では、新規遺伝子変異の機能解析とその結果に基づく治療法の開発を異なる3つのシステム(DS-AMKL細胞株、遺伝子改変マウス、ゼノグラフトモデル)を用いて行い、白血病の多段階発症の分子機構を解明し、治療法の開発のために様々な遺伝子変異によって共通に障害される経路を明らかにする。
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研究実績の概要 |
ダウン症新生児の約10%にTAMと呼ばれる前白血病が発症し、その約20%は急性巨核芽球性白血病 (DS-AMKL)に進展する。我々は、DS-AMKLの新規原因遺伝子を10種類以上見出した。本研究では、新規遺伝子変異の機能解析とその結果に基づく治療法の開発を異なる3つのシステム(DS-AMKL細胞株、遺伝子改変マウス、ゼノグラフトモデル)を用いて行い、白血病の多段階発症の分子機構を解明し、治療法の開発のために様々な遺伝子変異によって共通に障害される経路を明らかにする。令和4年度は以下の解析を行った。 1. X遺伝子の機能解析:ヘテロX-PTDノックイン (RKI) マウスは、白血病を高率に発症した。この結果は、X-PTDが強力な白血病誘発活性を持つことを示唆しているが、発症した白血病のサブタイプは急性リンパ性白血病であり、DS-AMKLの完全なモデルにはなっていなかった。TAMはGATA1変異のためにN末端を欠いたGATA1のアイソフォーム (GATA1s) のみを発現する。DS-AMKLの完全なモデルを作成するため、Gata1のIEエクソンを出生後に選択的に欠損させてGata1sのみを発現するマウス(Gata1sマウス)との交配実験を行った。しかし、AMKL発症はみられなかった。 2. I遺伝子の機能解析:I、Z、N遺伝子変異はMYC/E2F経路の活性化を誘導することが明らかになった。さらに、I遺伝子は野生型をDS-AMKL細胞株に発現させると赤血球分化と巨核球分化が誘導されることが明らかになった。 3. MYC経路の下流にはサイクリンD・CDK4/6・RB1経路が存在することから、実際に臨床で使用可能なCDK4/6インヒビター (Palbociclib) のDS-AMKL細胞株に対する感受性試験を行った。その結果、4株中3株で高い感受性を示すことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに本研究では以下の研究成果が得られ、概ね順調に研究が進展している。 1. 我々が作製したX-PTDノックイン(KI) マウスは、白血球減少と血小板減少を認め、高率に急性リンパ性白血病を発症した。白血病発症の仕組みを解明するために、フローサイトメトリー法を用いて造血幹細胞・前駆細胞数を解析した。その結果、骨髄球系およびリンパ球系造血の両者が障害されていることが明らかになった。次に、造血幹細胞を純化してATAC-seq及びRNA-seqを行った。その結果、X-PTD KIマウスの幹細胞は、遺伝子発現パターンとオープンクロマチン領域がX遺伝子のノックアウトマウスと類似しており、X-PTDは機能喪失変異であることが示唆された。しかし、X-PTD KIマウスとGATA1sのみを発現するGATA1sマウスと交配したが、DS-AMKLの発症は見られなかった。 2. N遺伝子の機能解析の結果、I遺伝子及びZ遺伝子と同様に、N遺伝子もMYC/E2F経路を抑制することにより、がん抑制遺伝子として機能していることが明らかになった。MYCの発現を抑制するBRD4阻害剤に、これらの遺伝子が変異している4つのDS-AMKL細胞株はいずれも感受性が高く、DS-AMKLの新たな分子標的薬剤の有力な候補となることが示唆された。さらに、MYC経路の下流にはサイクリンD・CDK4/6・RB1経路が存在することから、実際に臨床で使用可能なCDK4/6インヒビター (Palbociclib) のDS-AMKL細胞株に対する感受性試験を行った。その結果、4株中3株で高い感受性を示すことが明らかとなった。 3. 野生型IをDS-AMKL細胞株に発現させると赤血球分化と巨核球分化が誘導されることが明らかになった。この結果より、I遺伝子の機能喪失変異による分化障害がDS-AMKLの発症に関与している可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、昨年度の研究成果をもとに、申請者らが発見したDS-AMKLの新規遺伝子変異の機能解析を継続する。 1. DS-AMKLモデルマウスの作製: TAMはGATA1変異のためにN末端を欠いたGATA1のアイソフォーム (GATA1s) のみを発現する。DS-AMKLの完全なモデルを作成するため、X-PTD KIマウスとGata1のIEエクソンを出生後に選択的に欠損させてGata1sのみを発現するマウス(Gata1sマウス)との交配実験を行ったが、AMKL発症はみられなかった。そこで、 X-PTD KIマウスとGata1のエクソン2欠失を有する別のGata1sマウスと交配実験を行い、AMKL発症を観察する。まず、ホモ接合体 (♀)とヘミ接合体(♂)を交配し、GATA1sのみしか発現しないホモ接合体(♀)とヘミ接合体(♂)のラインを作成し維持する。次に、ヘテロ接合体X-PTD KIマウス(♂)とこのGata1sマウス(♀)を交配し、長期に経過観察する。もし、AMKLの発症が認められない場合は、Gata1sマウスの胎児肝造血細胞にレトロウイルスベクターを用いてX-PTDを高発現させ、AMKL発症の有無を観察する。フローサイトメトリー法で腫瘍細胞の表面マーカーを解析し、白血病のサブタイプを解析する。腫瘍細胞のエクソーム解析を行い、付加的遺伝子異常を解析する。 2. MYC/E2Fパスウェイを標的とした新規治療法の開発:本研究により、DS-AMKL細胞株がMYCシグナリング経路を抑制するBRD4インヒビターやCDK4/6インヒビターに高感受性であることが明らかになった。新規治療開発が必要な予後不良群を同定するために、同一のプロトコールで治療されたDS-AMKL患者(177名)について、遺伝子変異と予後との関連を明らかにする。
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