研究課題/領域番号 |
23K21439
|
補助金の研究課題番号 |
21H02944 (2021-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54010:血液および腫瘍内科学関連
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
豊嶋 崇徳 北海道大学, 医学研究院, 教授 (40284096)
|
研究分担者 |
冨塚 一磨 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (40444640)
山田 勇磨 北海道大学, 薬学研究院, 教授 (60451431)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
|
キーワード | GVHD / 炎症記憶 / 造血幹細胞移植 / 腸幹細胞 / 幹細胞 / 白血病 / 慢性GVHD / 疲弊T細胞 / ミトコンドリア / R-Spondin / Gilteriinib / GVL |
研究開始時の研究の概要 |
造血幹細胞移植は白血病などの根治的治療であるが、移植片対宿主病(GVHD)と移植後再発が最大の問題である。本研究では我々のこれまでの研究結果に基づき、新たな視座である「免疫寛容」と「組織寛容」の観点から、GVHDと再発の制御法を開発する。免疫系ではT細胞疲弊に至るT細胞分化のプロセスの解明と、白血病細胞免疫逃避を阻止する治療法を開発し、組織寛容を高める方策として、Lgr5+腸幹細胞を標的とした幹細胞増殖因子R-Spondinの組織特異的送達を可能とする組織移行性抗体との複合バイオロジクス創薬とナノ創薬によるT細胞機能と組織感受性の修飾法を開発する。
|
研究実績の概要 |
前年度に見出した同種造血幹細胞移植後の免疫寛容メカニズムに関する新知見を、マウスモデルを用いて確認実験を行い、そのメカニズムに研究へと展開した。ドナーT細胞疲弊のプロセスは多段階でありさまざまな疲弊T細胞(exhausted T-cell: Tex)サブセットが存在することが慢性ウイルス感染モデルを中心に明らかにされてきた。我々は本研究において、同種造血幹細胞移植後の移植片対宿主病(GVHD)においても移行期疲弊T細胞(transitory Tex)が出現することを世界に先駆けて証明した。この移行期疲弊T細胞が疲弊T細胞に最終分化することでGVHDは終息し、免疫寛容が導入される。しかし我々の研究において、同種造血幹細胞移植後にGVHD予防として投与されるcyclosporine (CSP)が疲弊T細胞への最終分化を抑制し、移行期疲弊T細胞を増加させることがわかった。CSPはT細胞疲弊のマスター制御因子であるTOXの発現を抑制することがそのメカニズムであった。そこで臨床的意義を検討するために、マウス骨髄移植後にCSPを投与し、移植後14日目に脾臓からT細胞を採取し、移行期疲弊T細胞と最終疲弊T細胞をそれぞれソートし、二次マウスに移植した。その結果、移行期疲弊T細胞を投与したマウスでは体重減少、シルマー試験による涙液分泌量の低下、唾液腺の線維化がみられ、慢性GVHDが発症した。一方最終疲弊T細胞を投与した二次マウスではGVHDは発症しなかった。この結果は、臨床的に同種造血幹細胞移植後のGVHDが減少しないメカニズムと考えられ、移植後QOLの向上を目指した新たな研究の基盤となる重要なデータである。またミトコンドリアナノメディシンについてはマウスCAR-T細胞の作製に成功し、ミトコンドリアの導入に成功した。組織寛容については、組織送達R-spondinの設計についての検討を実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は同種造血幹細胞移植後にアロ応答性T細胞がT細胞疲弊へと至るプロセスをマウスモデルにおいて昨年よりさらに詳細に可視化することが出来た。移植片対宿主病GVHD予防として投与されるカルシニューリン阻害剤がこのプロセスに与える影響を新たに見出し、T細胞の転写因子TOXの発現低下がそのメカニズムであることを発見できた。これにより新規GVHD予防法の開発や、現行のカルシニューリン阻害剤を用いた移植のQOLの向上を目指す研究の基盤データが得られた。ミトコンドリアナノメディシンについてはマウスCAR-T細胞の作製に成功し、ミトコンドリアの導入に成功した。これらの成果が2022年米国血液学会で2演題が口演に採択されたことは画期的であった。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、アロ抗原特異的な2Cトランスジェニックマウスを用いて、同種造血幹細胞移植後のアロ応答性T細胞のscRNAseq、scTCRseqを行い、移行期疲弊T細胞のclonalityやその同定のための候補分子を選定していく。ミトコンドリアナノメディシン研究においてはキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)へのミトコンドリア導入効率を高める研究を進める。組織幹細胞研究においては、腸幹細胞増殖因子R-spondinの組織送達を可能とする技術を開発、改良していく。
|