研究課題/領域番号 |
23K21477
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補助金の研究課題番号 |
21H03085 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56050:耳鼻咽喉科学関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
脇坂 尚宏 金沢大学, 医学系, 協力研究員 (70377414)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2025年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2021年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 頭頸部癌 / 遺伝子発現シグネチャー / 局所リンパ構造 / 免疫 / ニッチ / 免役 |
研究開始時の研究の概要 |
所属リンパ節や扁桃をはじめとする二次リンパ器官(SLO)は抗腫瘍免疫の主役である。癌組織内の三次リンパ様構造(TLS)は非リンパ器官で異所性に発生し、SLOと類似した構造を持つ。研究代表者は、頭頸部癌に近接する扁桃とTLSは、発癌・転移を促進するニッチとして機能すると考えた。 本研究では、上咽頭癌・中咽頭癌が発生する扁桃と口腔癌が発生する口腔粘膜のTLSとが、癌の発癌・転移にどのように関与するかを解明する。そのためにまず、扁桃・TLSを構成する細胞の機能・活動性を本研究独自の遺伝子発現シグネチャーセットで解析して評価する。そしてその成果を、新規治療法の開発や外科治療の低侵襲化へ繋げる。
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研究実績の概要 |
中咽頭癌原発巣摘出標本では腫瘍の周辺に扁桃組織が付着し、HE染色を参考に腫瘍組織と扁桃組織をマクロディッセクション法で分離しやすい。そこで、摘出中咽頭癌標本を腫瘍部分と扁桃部分に分離してマイクロアレイ法によるmRNAの解析を行った。27症例を頸部リンパ節転移有りの7症例と無しの20症例の2群に分けて解析した。その結果、転移無し群では有り群と比較して、有意に免疫促進関連遺伝子の発現が多く保たれていることが判明した。さらに解析した結果、転移無し群ではリンパ球の増殖やTリンパ球を活性化する因子の発現が促進していることが判明した。この結果は、扁桃で活性化した腫瘍特異的リンパ球がリンパ系からさらに血管系を介して腫瘍原発巣へホーミングして腫瘍の転移を抑制することを示唆している。さらにこの事実を応用して、中咽頭癌の扁桃組織の解析により免疫促進関連遺伝子の発現を比較することで転移の有無の判定までできる可能性があり、臨床的にも有望な結果である。 腫瘍組織内の免疫組織をさらに詳細に解析する手段としてマイクロディッセクション法に代わりGeoMx Spatial Profilerによる解析を導入した。合計6症例についてそれぞれ6カ所リンパ領域と腫瘍領域、合計72領域について解析した。6症例の内訳は転移有り・無しがそれぞれ3例、HPV関連腫瘍はそれぞれに2例含まれている。解析を進めた結果、上述のマイクロアレイ法による結果と同様に転移無し群では免疫促進因子の発現が有意に多いことが判明した。一方で、HPV感染の有無で比較しても優位な結果は得られず、腫瘍周囲のリンパ組織の腫瘍転移抑制能はHPV感染によらず転移無し群で促進していることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)マイクロディッセクション法に関する問題点を克服して解析は順調に進んでいる。その結果、本研究テーマから英語論文第1報が受理された。 2)引き続く解析の準備も順調である。 以上から、研究は概ね順調に推移している、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、中咽頭癌原発巣摘出標本について扁桃組織・腫瘍組織に分けて遺伝子発現プロフィールの解析を続ける。加えて、中咽頭癌周囲の扁桃組織と炎症性扁桃や所属リンパ節についての解析を行い、腫瘍に関わる扁桃組織の特異性を抽出する。さらに昨年度に続き、発癌・転移を予測するためのツールとしての遺伝子発現シグネチャーをさらに限定していく。 口腔癌では三次リンパ様構造を探索し、腫瘍空間におけるRNA発現レベル解析手法を適用して、口腔白板症の癌化から転移へ至るプロセスを解明する。 これまでの研究の結果、グラム陰性菌やヒト乳頭腫ウイルスに関わる因子と結合するToll-like Receptor 4 (TLR4)経路の活性化が転移抑制に重要であることが判明した。転移メカニズムの解明の観点から細菌叢・ウイルス叢の分析も進め、本研究をさらに発展させる。 そして、これらの研究成果を英語論文化するとともに、これまでコロナ禍で滞っていた学会発表を行って周知していく。研究成果の周知は、今後さらに多くの症例について検討するために研究協力者を募るうえで重要である。
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