研究課題/領域番号 |
23K21479
|
補助金の研究課題番号 |
21H03091 (2021-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56060:眼科学関連
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
野田 航介 北海道大学, 医学研究院, 客員教授 (90296666)
|
研究分担者 |
村田 美幸 北海道大学, 医学研究院, 助教 (50423752)
矢部 一郎 北海道大学, 医学研究院, 教授 (60372273)
加瀬 諭 北海道大学, 大学病院, 講師 (60374394)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2024年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2021年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
|
キーワード | 加齢黄斑変性 / パーキンソン病 / LRRK2 / 網膜色素上皮細胞 / αシヌクレイン / 滲出型加齢黄斑変性 / アクロレイン |
研究開始時の研究の概要 |
加齢を病態基盤とする代表的な失明原因の一つに滲出型加齢黄斑変性があるが、同患者にパーキンソン病の発症リスクが有意に高いことが近年注目されており、この2つの疾患には共通病態が存在すると推定される。これまでの知見から、アクロレインという不飽和アルデヒドとleucine-rich repeat kinase 2(LRRK2)という酵素が滲出型加齢黄斑変性においても重要な役割を演じていると仮説を立てた。本研究の目的は、アクロレインおよびLRRK2に着目して滲出型加齢黄斑変性におけるパーキンソン病との共通病態を探索することである。
|
研究実績の概要 |
加齢黄斑変性(AMD)の病態基盤には網膜色素上皮細胞(RPE)の変性や細胞死が関与している。AMD患者ではパーキンソン病の発症リスクが有意に高いとする報告が近年相次いでおり、パーキンソン病が神経変性疾患であることから、この2つの疾患には共通病態が存在する可能性があると仮説を立てた。本研究の目的は、「AMDにおけるパーキンソン病との共通病態を探索すること」である。 Leucine-rich repeat kinase 2(LRRK2)は、パーキンソン病の重要な病態責任分子の1つである。令和4年度は、ヒト摘出眼球切片を用いた免疫染色を行い、RPEにLRRK2が局在することが確認された。次に、培養RPE細胞株を用いたin vitro実験を行った。RPEに酸化ストレスを負荷すると、LRRK2のmRNAおよび蛋白の増加が認められた。続いて、RPEにおけるLRRK2発現増加が細胞機能に及ぼす影響を解析するため、哺乳細胞用バキュロウイルスBacMamシステムを用いてLRRK2を過剰発現させた。RPEにおけるLRRK2の過剰発現により、細胞生存性の低下とCaspase3/7活性の亢進が生じていた。また、LRRK2を過剰発現したRPEではαシヌクレイン蛋白量の増加とリン酸化の亢進が認められた。αシヌクレインのmRNAは変化しなかったことから、このαシヌクレインの増加は蛋白レベルの変化であると考えられた。更に、in vivo実験においてLRRK2の活性が亢進する遺伝子変異であるLRRK2-G2019Sを導入したトランスジェニックマウスでは野生型と比較し網膜電図の振幅の低下が認められた。これらの結果から、LRRK2の増加がRPE細胞死を引き起こし、in vivoにおいてはLRRK2活性の亢進により網膜機能の障害が生じる可能性が示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した本年の研究計画のうち、LRRK2過剰発現によりRPEの機能がどのように変化するかについて複数の学術的価値のある結果が得られていることから、概ね順調に進展していると自己評価するものである。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度までに、血清飢餓、アクロレイン添加、酸化ストレスなどの刺激によりRPE細胞においてLRRK2の発現が増加すること、LRRK2過剰発現によってαシヌクレイン蛋白の増加と細胞死の亢進が生じることが明らかになっている。R5年度はこれらの分子機序について、培養RPE細胞を使ってさらに詳細に検討を進める。また、LRRK2-G2019Sを導入したトランスジェニックマウスを用いたin vivo実験も前年度に引き続き行う予定である。今後は光干渉断層計(スペクトラリス)による網膜層別厚評価、網膜電図の測定および評価、眼底カメラによる観察、HE染色によるRPEの形態評価、TUNEL染色、LRRK2やα-シヌクレインに対する免疫染色を行い、網膜機能、特にRPEの形態や機能に変化が生じているかを解析する。
|