研究課題/領域番号 |
23K21495
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補助金の研究課題番号 |
21H03145 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57060:外科系歯学関連
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
有吉 渉 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (40405551)
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研究分担者 |
臼井 通彦 九州歯科大学, 歯学部, 准教授 (10453630)
望月 慎一 北九州市立大学, 国際環境工学部, 准教授 (10520702)
安達 禎之 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (60222634)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
15,990千円 (直接経費: 12,300千円、間接経費: 3,690千円)
2025年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 破骨細胞 / dectin-1 / β-glucan / オートファジー / 小胞体ストレス / エンドサイトーシス |
研究開始時の研究の概要 |
申請者は、破骨細胞前駆細胞上に特異的に発現する免疫受容体dectin-1 が、糖鎖β-glucanの認識を介して破骨細胞分化を抑制すること、そのメカニズムとして分化のマスター転写因子であるNFATc1の負の制御の関与を明らかにした。本申請では、(1)各種β-glucanのキャラクタリゼーションと受容体の同定、(2)β-glucanのNFATc1発現抑制に関わる詳細な分子機構の解明、(3)モデル動物における骨破壊に対するβ-glucanの作用の検証の3課題について、歯工学連携による専門性の高い融合研究を展開し、骨代謝疾患や炎症性骨破壊に対する新たな治療戦略の提案を目指す。
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研究実績の概要 |
免疫受容体を介した破骨細胞分化制御機構の解明や選択性の高い骨代謝疾患治療薬の開発を目指した研究を遂行する。糖鎖β-glucanは、破骨細胞前駆細胞に特異的に発現する受容体dectin-1との結合により、マスター因子NFATc1の負の制御を介して、破骨細胞分化を抑制することを見出した。さらにこの抑制作用に、sykタンパクのオートファジーを介した分解系が関与していることを証明している。分解標的タンパクであるsykは、β-glucan添加後、ただちに早期エンドソームマーカーとの共局在が観察されたことから、この選択的なオートファジーの誘導には、エンドサイトーシスとの協調が関与していることが強く示唆された。これらのメンブレントラフィック制御に関わる新規遺伝子同定のために遂行したRNA-seqの解析結果から、オートファジーやエンドサイトーシスに加え、小胞体ストレス関連の遺伝子群の発現が誘導されていることを確認している。 また、基質選択性のないオートファゴソームが、基質特異的にタンパク分解を行うためには、分解対象の標的化が要求される。この標的化にエンドサイトーシス誘導時の液-液相分離により液滴状態となったタンパク質(END)の形成が関与するという仮説のもと、レセプタータンパクEps15をノックダウンしたところ、β-glucanによるsykタンパクの分解は抑制された。このことから、β-glucanとdectin-1の相互作用によるEND形成にEPS15が関与することが証明された。さらに、基質特異的なタンパク分解に、標的タンパクであるsykのリン酸化も関与していることが示唆された。 また、β-glucanにはNF-κB経路の抑制を介したdectin-1非依存的な破骨細胞分化の負の制御機構が存在することが確認され、これに補体受容体CR3による認識が関与することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年に引き続き、「β-glucanによるNFATc1発現抑制の分子メカニズムの解明」について、より深化した研究を展開した。CR3の認識によるβ-glucanのdectin-1非依存的なNF-κBの活性化抑制を介したNFATc1の負の調節については、分子レベルでの詳細な解析結果を取りまとめ、英文誌への投稿を終了している(査読中)。 また、β-glucanによるオートファジーを介したタンパク分解について、標的タンパクであるsykの標的化に着目した研究では、END選択的オートファジーに着目した検証を継続し、このシステムにリガンド結合受容体の内在化を調節するアダプタータンパク質であるEps15が関与することを証明した。加えて、メンブレントラフィック制御機構のさらなる解明のため、研究計画調書の記載通り、昨年度実施したRNA-seqについて、Dry解析を行った。その結果、β-glucanとdectin-1の相互作用により、破骨細胞前駆細胞において、オートファジーやエンドサイトーシスに加えて、小胞体ストレス関連遺伝子の発現が誘導することを見出しており、注目した遺伝子群について、real-time RT-qPCRによる発現同定に着手している。 また 付随研究として、口腔バイオフィルムを構成する糖鎖α-glucanについて、ともにグルコースより構成されるβ-glucanとは、生物学的活性が大きく異なることを明らかしている。口腔感染症の制御という観点から、α-glucanの成分分析および破骨細胞分化修飾能の解明のため、口腔レンサ球菌由来のα-glucanの精製に取り組み、質、量ともに担保された精製プロトコールを確立した。 加えて、β-glucanの構造解析やモデル動物を用いた歯周病モデルに対する検討も引き続き実施しており、骨代謝疾患に対する新たな治療戦略確立に向けた研究活動を行う。
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今後の研究の推進方策 |
(1)破骨細胞分化修飾に関わるβ-glucanのキャラクタリゼーションと受容体の同定:β-glucanに加え、口腔バイオフィルムの主要糖鎖であるα-glucanの精製法を確立しており、キャラクタリゼーションおよび受容体の同定を継続する。 (2)β-glucanによるNFATc1発現抑制の分子メカニズムの解明:3つの候補機構の関与を想定しており、それぞれについて検証する。 ①CR3を介したNF-κB経路の活性化抑制;研究成果を英文誌に投稿中であり、採択に向けた対応を適宜実施する。 ②Sykのオートファジーを介したタンパク分解;i)オートファゴソームの誘導・制御の分子機構について得られた知見を取りまとめ、英文誌に投稿する。ii)メンブレントラフィック制御に関わる新規遺伝子同定のため、RNA-seq解析を遂行し、dectin-1を過剰発現した破骨細胞前駆細胞ではβ-glucanの添加により、オートファジーやエンドサイトーシス、小胞体ストレスに関連する遺伝子の発現亢進を証明した。これらの遺伝子発現をPCRで確認し、着目する分子を抽出する。iii)β-glucanによる小胞体ストレスセンサーであるIRE1の発現増強に伴うIRE1-XBP経路の活性化について検証する。iv )基質特異的なタンパク分解誘導について、END選択的オートファジーの関与を証明した。内在化されたdectin-1およびsykのトラフィッキングを解明する。 ③カルシウムシグナリングの修飾:β-glucanによる破骨細胞分化誘導時の細胞内カルシウム動態修飾に関わる細胞内シグナル分子を同定する。 (3)動物実験 :ラット歯周炎モデルに対するβ-glucanの投与実験の結果、得られた標本について解析を継続する。さらに臨床応用を見据えて、-OH基を付加し、水溶性を高めたβ-glucanの調製および破骨細胞分化抑制能の評価を行う。
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