研究課題/領域番号 |
23K21496
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補助金の研究課題番号 |
21H03147 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57060:外科系歯学関連
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
中原 貴 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (10366768)
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研究分担者 |
望月 真衣 日本歯科大学, 生命歯学部, 准教授 (90821934)
小林 朋子 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (10548283)
相良 洋 東京大学, 医科学研究所, 特任助教 (50145041)
中島 慎太郎 日本歯科大学, 生命歯学部, 助教 (40817095)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2025年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
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キーワード | 歯の再生 / バイオ再生歯根 / 再生歯インプラント / 細胞培養 / 歯性幹細胞 / 歯髄幹細胞 / 自己多層化 / 細胞シート / 無血清培養 / 間葉系幹細胞 / 器官培養 |
研究開始時の研究の概要 |
現在の歯科インプラント治療で使用されるチタン製人工歯根に対し、細胞・組織からなるバイオ再生歯根の実現が待望されている。本研究は、歯根・歯周組織ユニットの器官再生能を有する幹細胞群(Reg細胞群)の分離培養、および分離培養したReg細胞群の多方面解析による再生誘導因子の同定により、バイオ再生歯根の形成を可能とする普遍的な新規培養システム「器官再生法」の確立と再生誘導医薬の創出をめざす基盤研究である。
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研究実績の概要 |
これまでの研究実績の概要は、器官再生法に供する歯性細胞群を得るため、歯科治療で抜去された智歯から歯髄組織を採取し、コラゲナーゼ/ディスパーゼ酵素液で処理して細胞を解離し、ウシ胎仔血清(FBS)フリーの無血清培養下において初代培養を行った。継代数3~4で間葉系幹細胞(MSC)の特性評価、および後述する自己多層化能の評価を行った。 In vitro評価としては、我々がすでにMSC特性評価として確立している細胞増殖評価、フローサイトメーターによるMSCマーカーの表面抗原解析、mRNAおよびタンパクの遺伝子発現解析、骨芽細胞と脂肪細胞への多分化誘導実験を行った。In vivo評価は、歯髄細胞と骨補填材を混合した複合体を免疫不全動物に移植して硬組織形成能を評価した。これらのin vitro/in vivo評価によって、高度なMSC特性を有する歯髄幹細胞を選別し、Regenerative(Reg)細胞群の候補となる複数の智歯に由来する歯性細胞群を樹立した。 そして昨年度までに、「自己多層化細胞シート」と名付けた新規細胞シートの作製技術の開発に成功し、特許出願を完了した。この特許技術は、無血清培養下で細胞増殖と細胞外マトリックス産生が持続的に維持されることで、自律的に多層化して細胞シートを形成する歯髄幹細胞が有するユニークな能力(自己多層化能)に基づいた全く新しい細胞シート技術である。これまでに、安定的に同細胞シートが作製できる培養プロトコールの確立を行い、自己多層化細胞シート技術の完成度を高めた研究開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの進捗状況は、無血清培養下で活発に増殖する歯髄由来の歯性幹細胞をin vitro/in vivoの両者で多角的に評価することによって、歯根・歯周組織ユニットの器官再生能を有するReg細胞群の候補集団の同定を行った。In vitro評価では、フローサイトメトリー解析によって、分離した歯髄細胞はCD29, CD44, CD73, CD90, CD105陽性(およびCD14, CD34陰性)からなるMSCマーカーを発現した細胞集団であり、さらに骨分化誘導による石灰化ノジュール形成能と脂肪分化誘導による脂肪滴形成能を有するMSC特性を認めた。In vivo評価では、ヌードマウスの背部皮下に歯髄細胞と骨補填材の複合体を移植し、豊富な新生硬組織を認めた。以上から、無血清培養下で分離した歯髄細胞は、優れた細胞増殖能とMSC特性を有する歯髄幹細胞であることが分かった。 さらに、MSC特性評価の一つである細胞増殖評価を行うなかで、過去に報告がなかった興味深い知見を得た。その新知見とは、歯髄幹細胞を特定の条件で無血清培養することで、持続的に細胞増殖を維持しながら自律的な多層化(自己多層化)を示し、多層構造から成る細胞シートを形成する能力を備えたReg細胞群の存在を見出したことである。我々は、この多層構造を示す細胞シートを「自己多層化細胞シート」と命名し、Reg細胞群が自己多層化細胞シートを効果的に作製する新規細胞シート技術の開発に成功し、特許出願を行った。 以上の結果は、無血清環境下における歯髄幹細胞には、自己多層化能を有するReg細胞群の存在が明らかとなり、自己多層化能を効果的に誘導することによって作製される自己多層化細胞シートは、新たな器官再生法を確立する基盤技術になり得ることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、歯髄幹細胞の自己多層化能が寄与する「自己多層化細胞シート」の特性評価と分子メカニズムの解析を進める。同細胞シートは多層構造を有することから、従来の単層構造の細胞シートよりも機械的強度が高いことが想定され、材料工学的な解析手法によって細胞シートの機械的特性を評価する。また、自己多層化を誘導する細胞内シグナルの解析を進め、多層化細胞シートが形成される分子細胞生物学的プロセスについて明らかにする。これらの解析によって、歯髄幹細胞に存在するReg細胞群が担う自己多層化誘導シグナルの分子基盤が明らかとなり、器官再生法に供する同細胞シートの安全性と有効性の評価に結実する。 以上の研究を推進する方策として、令和6年度に購入を予定しているインキュベーションモニタリングシステムを活用することで、培養中の細胞の動態を連続的に撮影することができる。この解析装置は、自己多層化細胞シートが形成される経時的変化を動画として詳細に観察することができる点で本研究を強力に推進できると考えている。 これらの研究成果によって、歯髄幹細胞が作製する自己多層化細胞シートを用いた新たな器官再生法による歯根・歯周組織ユニットの体外再生、さらに自己多層化誘導シグナルの同定によるバイオ再生歯根の再生誘導医薬の開発を推進する。こうして、普遍的な器官再生法の確立と再生誘導医薬による新規再生医療の創出に貢献し、真に臨床応用できるヒト歯の再生、すなわち『再生歯インプラント』の実現を目指す。
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