研究課題/領域番号 |
23K21499
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補助金の研究課題番号 |
21H03151 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57080:社会系歯学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 信博 東北大学, 歯学研究科, 教授 (60183852)
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研究分担者 |
佐藤 拓一 新潟大学, 医歯学系, 教授 (10303132)
鷲尾 純平 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (20400260)
坂本 光央 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 専任研究員 (50321766)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2024年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2021年度: 8,450千円 (直接経費: 6,500千円、間接経費: 1,950千円)
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キーワード | 口腔マイクロバイオーム / 副代謝系 / 硝酸塩代謝 / アルコール代謝 / ポリアミン代謝 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、口腔マイクロバイオーム(口腔細菌叢)と全身の健康を紐づけるものとして、口腔マイクロバイオームが持つ「見過ごされていた代謝系(副代謝系という)」が注目されている。本研究では、 1. 口腔マイクロバイオームの持つ「高血圧、がん、老化」に関わる「アルコール代謝、硝酸塩代謝、ポリアミン代謝」といった副代謝系の存在を明らかにする。 2. 副代謝系を持つ細菌を特定し、副代謝系の仕組みを明らかにする。 3. 副代謝遺伝子の網羅的解析によって、個人の持つ副代謝系の多寡と全身の健康状態との関連を探る。 4. 副代謝系を活用した健康増進戦略を提案し、口腔からの全身の健康への貢献を目指す。
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研究実績の概要 |
1. 「副代謝系(エタノール代謝系)」の活性測定と細菌の同定 代表的「副代謝系」である口腔マイクロバイオームのエタノール代謝は、アルコール飲料等に含まれるエタノールを発がん性の高いアセトアルデヒドに変換し、口腔・咽頭における発がん因子の一つと考えられている。そこで、ボランティアを募り、研究倫理審査に基いてインフォームドコンセントを得たのち、口腔マイクロバイオーム(プラーク)を採取し、試料の1/2量にエタノールを加え、37℃、30分間代謝させた。代謝産物を同定・定量したところ、口腔マイクロバイオームによるエタノールからのアセトアルデヒド産生活性は個人差が大きいことが分かった。さらに、ほとんどの口腔マイクロバイオームはアセトアルデヒド分解活性も持つことが新たに明らかになった。試料の残り1/2量を血液寒天平板に播種し、エタノール産生能、アセトアルデヒド分解能を持つコロニーを検出し、菌種を同定した。これらの結果は学会にて発表し、さらに、現在、論文として投稿準備中である。 2. 「副代謝系(硝酸塩代謝系)」活性測定と細菌の同定 葉物野菜に多く含まれる硝酸塩は口腔マイクロバイオームによって亜硝酸塩に代謝され、亜硝酸塩は小腸より血液循環に吸収されて全身の血管を拡張することで高血圧を予防すると考えられている。そこで、口腔マイクロバイオームによる硝酸塩代謝活性についても並行して行い、全ての口腔マイクロバイオーム試料において硝酸塩代謝による亜硝酸産生活性が存在するものの、その個人差は大きいことが明らかになった。加えて、産生された亜硝酸塩は口腔マイクロバイオームによってさらに代謝分解されることが明らかになり、これらの活性を持つ細菌の同定と、その中の代表的細菌を用いた代謝系および代謝調節機構について現在、研究を進めている。これらの結果は学会にて発表し、現在、その一部は論文として投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
口腔マイクロバイオームの主要な「副代謝系」として「エタノール代謝」と「硝酸塩代謝」があるが、その両者において実際の口腔マイクロバイオームにてその存在が確認され、さらに、それぞれの代謝産物であるアセトアルデヒドと亜硝酸塩をさらに代謝する活性も確認された。また、これらの代謝活性を持つ口腔細菌が特定され、代謝系や代謝制御の詳細について明らかになりつつあることから、おおむね順調に進展しているものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
口腔マイクロバイオームの主要な「副代謝系」として「エタノール代謝」と「硝酸塩代謝」について、口腔マイクロバイオームはエタノールからのアセトアルデヒド産生活性だけではなくアセトアルデヒド分解活性を、硝酸塩からの亜硝酸塩産生活性だけではなく亜硝酸塩分解活性を持つことが明らかになった。このことは、口腔マイクロバイオームによる産生と分解のバランスが全身の疾患(アセトアルデヒドによる発がん性)及び健康(亜硝酸塩による高血圧予防)をコントロールしている可能性を示す。そこで、これらの産生と分解のバランスが何によって決定されるのかについて、口腔マイクロバイオームの細菌構成の違いや口腔環境の違い等に着目して、本研究を推進して行くこととした。
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