研究課題/領域番号 |
23K21620
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補助金の研究課題番号 |
21H03356 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
清水 英寿 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 教授 (10547532)
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研究分担者 |
石塚 敏 北海道大学, 農学研究院, 教授 (00271627)
橋口 亜由未 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 助教 (00805195)
吹谷 智 北海道大学, 農学研究院, 教授 (10370157)
吉清 恵介 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 准教授 (30510739)
田中 愛健 九州大学, 農学研究院, 助教 (90809435)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2022年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2021年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
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キーワード | トリプトファン由来代謝産物 / 炎症制腸疾患 / 大腸がん / 脂肪肝 / 肝臓がん / 腸内環境 / 大腸癌 / スカトール / インドール酢酸 / 7回膜貫通型受容体 / SLC26A3 / IL-6 / NFkappaB / AhR / CYP1A1 / インドール系化合物 / 炎症性腸疾患 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、高食肉摂取において、健康増進に寄与する一方、疾患発症・進展にも関与するという相反する効果が疫学的な調査から実証されている。しかし、この要因に関する詳細は、未だ不明である。当研究グループでは現在までに、腸内で産生される摂取タンパク質由来の腸内細菌代謝産物インドール系化合物の種類と量の違いが、各種組織の機能障害を導く一方、それら障害に対して予防・改善効果を導く事を示唆する結果を得 ている。よって本研究では、「各種インドール系化合物が臓器機能に与える影響とその作用メカニズムの解明」、および「腸内におけるインドール系化合物の代謝促進に寄与する因子の同定」を試みる。
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研究実績の概要 |
培養肝がん細胞を用いた解析では、スカトールは、その受容体として報告されているAryl hydrocarbon receptor (AhR)の活性化を介するだけでなく、7回膜貫通型受容体の活性化も介して長寿遺伝子の1つであるSirtuin 1(Sirt1)の発現増加を誘導し、それが培養肝がん細胞の増殖を導く結果を得た。培養大腸がん細胞を用いた解析では、スカトールは、p38を介してNuclear factor-κB(NF-κB)を活性化させ、Tumor necrosis factor α(TNFα)やInterleukin-6(IL-6)の発現増加を導いた。一方、スカトールによるAhRの活性化は、自身によるTNFαやIL-6の発現増加を一部減弱させた。インドール酢酸に関して、培養大腸がん細胞を用いた解析では、Toll-like receptor 4を受容体とし、c-Jun N-terminal kinase(JNK)と一部のExtracellular signal-regulated kinase(ERK)の活性化に寄与していた。p38の活性化はスカトールとは異なり、インドール酢酸では導かれなかった。また、TLR4-JNK経路は、培養大腸がん細胞に対して抗増殖効果を発揮した。炎症性腸疾患モデルマウスを用いた解析では、インドール酢酸は大腸炎に対して進行抑制効果を発揮することが示唆された。インドール酢酸とスカトールのクロストークについても培養大腸がん細胞を用いて検証を行った。インドール酢酸とスカトールは共に、Cytochrome P450 1A1(CYP1A1)の発現増加を導くものの、スカトールはインドール酢酸によるCYP1A1のタンパク発現増加の開始を遅延させた。よって、スカトールはインドール酢酸によって活性化される細胞内シグナル伝達経路、または転写因子ネットワークに対して抑制的に作用する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養肝がん細胞を用いた解析から、昨年度に引き続き、スカトールの新たな受容体となり得る候補分子が同定できた。一方、インドール酢酸については、培養大腸がん細胞を用いた解析から、TLR4の活性化を起因とした細胞内シグナル伝達経路の一部と、その機能について明らかにできた。これらに加え、大腸炎モデルマウスを用いたインドール酢酸の効果に関する解析も、昨年度から進んでいる。以上から、「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
薬剤処理やノックダウン法などを交えながら、培養腸管細胞や培養肝細胞などの培養細胞を用いて、インドール酢酸やスカトールの新規作用メカニズムのさらなる解析を進める。加えて、ラットやマウスの病態モデルを用いて、インドール酢酸やスカトールが及ぼす影響について個体レベルでの解析も進めていくことで、両インドール系化合物が導く作用効果の違いを明らかにしていく。
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