研究課題/領域番号 |
23K21634
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補助金の研究課題番号 |
21H03383 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 松本大学 |
研究代表者 |
河野 史倫 松本大学, 大学院 健康科学研究科, 教授 (90346156)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2024年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
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キーワード | 骨格筋 / エピジェネティクス / 運動 / ヒストン修飾 / H3K27me3 / 運動誘発性H3K27me3 |
研究開始時の研究の概要 |
運動によって生じるエピジェネティクスは運動効果獲得やその記憶に重要であると考えられているが詳細な仕組みは不明である。本研究は、先行研究において同定した運動誘発性H3K27me3修飾が骨格筋における運動効果獲得にどのような役割を果たすのか明らかにすることを目的として実施する。運動誘発性H3K27me3の意義が明らかになれば、骨格筋に運動効果を記憶する仕組みや運動効果獲得における個体差発生の仕組みを解き明かす重要な手掛かりとなる。
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研究実績の概要 |
骨格筋に生じる運動エピジェネティクスのひとつとして「運動誘発性H3K27me3」を発見した。運動によるH3K27me3増加は、運動応答性遺伝子の転写促進に役割を果たしているため。このヒストン修飾の分布量が運動適応範囲を規定する重要な因子のひとつであると考えられる。2023年度は、この運動誘発性H3K27me3が付加される機序として、H3K27メチル化酵素EZH1/2のスイッチングに関する直接的な観察を試みた。ストラテジーとしては、EZH1/2にそれぞれ異なるタグを結合させた変異体をウイルスベクターを用いて骨格筋特異的に発現させ、どちらが運動時におけるH3K27me3増加と相関するか調べるものであった。ところが、ウイルスベクター注入によりEZH1/2自体は発現増加するもののタグが検出できないという予想外の結果が得られた。タグをコードする配列を有する遺伝子の発現はウイルスベクター注入により増加することから、翻訳の段階でタグ配列が読み飛ばされていると結論付けた。EZH1/2はタンパク質の品質が高度に管理されており、タグによる検出は困難となった。したがって、運動時にH3K27をメチル化すると予測しているEZH1を骨格筋特異的に強制発現する実験モデルにシフトし、マウスを用いた急性運動に対する遺伝子応答性を検証する実験ならびに慢性のトレーニング実験を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度の研究結果は予想外であったものの、EZH1/2を研究ターゲットとするうえで重要なユニーク特性が理解できたことは予想外の収穫であった。これらの研究結果は決してネガティブなものではなく、研究コミュニティへ共有すべき重要な事象であるため、今後発表する本テーマの論文には重要な研究方法の検討過程として含めたい。したがって、研究の進行度合いに関しては「おおむね順調」と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度が最終年度となる。前年度に得られたサンプルを解析完了し論文にまとめることに注力する。一方で、加齢に伴うH3K27me3の変化と運動に対する遺伝子の応答性に着眼した実験も実施する。加齢に伴い骨格筋ではヒストンH3.3バリアントが増加し、それに伴いH3K27me3が増加する。運動時と類似したエピジェネティック変化であるが、運動時と加齢時におけるH3K27me3の機能の違いは不明である。そこでH3.3の特性に着目し、H3.3特有の31番目セリンのリン酸化が加齢に伴うH3K27me3と関連し、運動応答性に影響することを明らかにするための実験を行う。骨格筋特異的ACTA1プロモーターの制御下においてリン酸化模倣H3.3S31Eを発現するウイルスベクターを筋注したマウスを、30週齢から60週齢まで加齢させる。各時点において急性運動を実施し、H3.3S31phが制御するH3K27me3と運動応答性について関係性を明らかにする。実験自体は2024年4月に完了しており、現在エピジェネティクス解析を進めている。
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