研究課題/領域番号 |
23K21660
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補助金の研究課題番号 |
21H03429 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60060:情報ネットワーク関連
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研究機関 | 滋賀大学 (2023-2024) 大阪大学 (2021-2022) |
研究代表者 |
義久 智樹 滋賀大学, データサイエンス学系, 教授 (00402743)
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研究分担者 |
後藤 佑介 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 准教授 (10551038)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2024年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2021年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
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キーワード | ビデオオンデマンド |
研究開始時の研究の概要 |
これまでの研究では、同じコンテナ(サービス提供に必要なソフトウェアを組み合わせた実行形式、多くの場合dockerコンテナを指す)数では消費電力を削減できない根本的な問題があった。この問題は、通説に従って計算端末の消費電力がコンテナ数に比例すると考えていたことに起因する。研究代表者らは、消費電力が映像配信に関連する様々な要因に対して非線形に変化することを確認した。本研究では、この消費電力の非線形性に着目した三つの戦略で通説を覆し、研究目的を達成する。
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研究実績の概要 |
近年のビデオオンデマンド映像配信サービスは、マイクロサービス基盤を利用して提供されることが多い。本研究の目的は、映像配信品質(途切れや遅延等)を低下させずに、消費電力を削減できる映像配信マイクロサービス基盤を実現することである。研究代表者らは、消費電力が映像配信に関連する様々な要因に対して非線形に変化することを確認した。本研究では、この消費電力の非線形性に着目した三つの戦略で通説を覆し、上記目的を達成する。 研究項目1「消費電力予測に関する戦略」:計算端末の消費電力は、コンテナ数の他に、映像ストリーム数や映像品質といった映像配信に関連する要因、周辺温度や経年劣化といった様々な要因に依存する。本研究項目では、数値化したこれらの映像配信等に関連する要因を入力として消費電力を出力する「映像配信指向消費電力算出機構」を研究開発してきた。 研究項目2「コンテナ配置に関する戦略」:コンテナと配信先端末の通信で経由するルータの数が多いほど配信遅延が長くなる。そこで、本研究項目では「電力・映像配信品質統合型指標」を研究開発してきた。電力・映像配信品質統合型指標では、映像配信品質と消費電力を組み合わせた指標を考案し、この指標に基づいてクラウド端末またはエッジ端末にコンテナを配置する。 項目3「映像ストリーム割り当てに関する戦略」:映像配信マイクロサービス基盤では、配信先端末数が多くなるほど実行するコンテナの数も多くなって消費電力が増加しやすい。そこで、本研究項目では「ストリームマージ」を研究開発してきた。ストリームマージでは、IPマルチキャストやIPブロードキャストを用いて異なる配信先端末に同じ映像ストリームをまとめて送信する。 研究期間内に、これらの技術の有効性を確認して高品質かつ低消費電力な映像配信マイクロサービス基盤を確立する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
環境問題への注目の高まりに伴い、低消費電力な情報サービス基盤が求められている。特に新型コロナウィルスの影響で在宅時間が長くなりビデオオンデマンド映像配信サービスが盛んに利用されており、映像配信サービスに伴う消費電力を削減することで、世界中で大幅な消費電力削減が見込める。近年の映像配信サービスは、必要に応じて計算資源を柔軟に変更できるKubernetes等のマイクロサービス(提供する情報サービスを構成する軽量なサービス)基盤を利用して提供されることが多い。従来研究では、消費電力はコンテナ数に比例すると考えられていたため、コンテナ数が同じであれば消費電力を削減できない根本的な問題があった。本研究では、この通説を覆し、実際には消費電力が非線形に変化する点(消費電力の非線形性)に着目し、この不可能を可能にしてきた。本年度は、この目的を達成するために消費電力予測、コンテナ配置、映像ストリーム割り当てに関する戦略を打ち立て、これらの戦略に沿って「映像配信指向消費電力算出機構」「電力・映像配信品質統合型指標」「ストリームマージ」を提案した。これらの技術の有効性を確認して高品質かつ低消費電力な映像配信マイクロサービス基盤を研究開発した。 本研究の成果は、国内の大規模シンポジウムDICOMOやDPSワークショップで発表した。また、国際会議IWINにおいて論文誌への推薦を得たり、IEEEが主催する大規模な国際会議IEEE COMPSACに連続採択され、発表している。また、GCCEやNBiSといった著名な国際会議でも発表している。以上の理由から、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
データセンター内にあるクラウド端末や、配信先端末に地理的に近いエッジ端末では、Kubernetes等のマイクロサービス基盤が動作している。このような環境において、本研究では、映像配信品質(映像音声の途切れ等)を低下させずに、消費電力を削減できる映像配信マイクロサービス基盤の実現を目的としている。本研究では、消費電力の非線形性を用いることで、低消費電力映像配信マイクロサービス基盤を実現する。各研究項目の今後の研究の推進方策を下記に示す。 研究項目1「消費電力予測に関する戦略」:従来研究では、様々な要因による変化を考慮せずに消費電力を直線近似で予測しており、同じコンテナ数のもとで消費電力を削減できなかった。今後、コンテナ配置や映像ストリーム割り当てに影響を及ぼす消費電力変化を与える要因を明らかにする。 研究項目2「コンテナ配置に関する戦略」:エッジコンピューティングの概念を取り入れ、配信先端末に地理的に近いエッジ端末を活用して配信遅延を短縮することが考えられるが、消費電力が増加する可能性がある。また、CDNを構築して配信遅延を短縮することが考えられるが、CDNを構成するネットワーク機器の消費電力が増加する。今後は、遅延や途切れといった映像配信品質に関する指標の設計と評価を行う。 項目3「映像ストリーム割り当てに関する戦略」:映像配信マイクロサービス基盤では、配信先端末数が多くなるほど実行するコンテナの数も多くなって消費電力が増加しやすい。単純な解決策として、コンテナ当たりの最大配信先端末数を大きくすることが考えられるが、計算負荷が増加して映像配信品質が低下する。今後は、コンテナ内でストリームマージを行って消費電力を削減する技術を開拓する。
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