研究課題/領域番号 |
23K21664
|
補助金の研究課題番号 |
21H03436 (2021-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60060:情報ネットワーク関連
|
研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
三角 真 福岡大学, 工学部, 助教 (50647419)
|
研究分担者 |
中村 遼 福岡大学, 工学部, 講師 (00881989)
上山 憲昭 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (90710294)
森 慎太郎 福岡大学, 工学部, 助教 (90734913)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2021年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
|
キーワード | 情報指向ネットワーク / 遅延耐性ネットワーク / 耐災害ネットワーク / データ分類 / 分散台帳 / ブロックチェーン |
研究開始時の研究の概要 |
災害時、被災地内での被災情報の収集や共有、行政からの災害情報の伝達が重要となる。しかし、災害時には通信インフラが利用できなくなる可能性があり、被災者の携帯端末をデータのキャッシュとして用いるDTNでの情報の伝搬が期待されているが、実現に際して、災害情報のネーミングとキャッシング、端末の電力消費、情報の確度に関する課題が未解決である。本研究では、UAVを用いた被災地内の情報の収集法、収集したデータのICDTNを用いた転送手法、転送情報量の削減法、分散台帳を用いた災害データ管理技術を確立する。
|
研究実績の概要 |
これまでに設計したキーワード型情報指向ネットワーク (ICDTN)の特性をより正確に理解するために、コンテンツ間の類似性に着目したコンテンツキャッシングの解析、および、ランダムウォークを利用した類似コンテンツ発見の基礎検討を実施した。さらに、ユーザーの社会的なつながりを考慮した時のコンテンツキャッシングの特性を実験および数理的解析により明らかにした。 また、スマホからアップされた写真を活用するMobile Crowd Photographing (MCP)を活用し、災害発生時に建造物などの障害状況を避難者で共有することが考えられる。MCPでは画像の冗長性が高い一方、ユーザの要求画像に厳密に一致する画像を配信する必要性は低い。そこでキャッシュ内に存在する他の画像との類似度が最大の画像から優先的に削除するキャッシュ置換法を検討した。また大型UAVと小型UAVの複数種のUAVと携帯端末を組み合わせた避難誘導システムを検討した. 加えて、通信インフラが途絶した被災地内で遅延耐性ネットワーク (DTN)にて被災者端末間で災害情報を共有するときの消費電力の削減を目的として、被災者端末から送信された情報を集約し、集約した情報を被災者端末に送信する情報ボックスを提案した。情報ボックスは、災害発生前にあらかじめ対象地域内に配置することを想定し、効果的な情報ボックスの配置をシミュレーションで評価した。 そして、ICDTNを支えるIC-Ad Hocネットワークにおいて、ネットワーク符号化を用いた、地上移動ノード相互の協力通信に基づく新たな無線通信プロトコルを開発した。ここでは、ネットワークレイヤのプロトコルに焦点を当てず、そこで課題となるリレー局・協力局における符号化データの転送に関して、建設的干渉現象に基づく新た下位レイヤの無線通信プロトコルを提案し、計算機シミュレーションに基づく評価を実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、キーワード型ICDTNを高度化する上で、有用となる様々な知見を得ることができた。具体的には、s-コンテンツ配送遅延と呼ぶ類似性キャッシングのためのユーザー指向な指標を定義し、キャッシュの多段化がs-コンテンツ配送遅延に与える影響を明らかにした。また、グラフ上のランダムウォークによって、類似コンテンツをどの程度迅速に発見できるかを明らかにした。 そして、キャッシュ内における画像の類似度に基づいて画像データをグループ分けすることで、類似度計算に要する時間を低減し、また人気度も考慮することでキャッシュヒット率を向上させるMCPのキャッシュ制御法を検討した。さらに大型UAVが小型UAVを運搬しながら避難者を探索し、避難者を発見すると小型UAVを大型UAVから分離し、小型UAVが避難者を避難所へ誘導するシステムを検討した。そして計算機シミュレーションにより、これら方式の有効性を確認した。 また、災害時に被災者の携帯端末で災害情報を共有するとき、被災者携帯端末の電力消費削減を目的とした情報ボックス配置法を提案した。被災者携帯端末をエージェントとしたマルチエージェントシミュレーションによる評価の結果、情報ボックスの配置数、被災者の経由数の多い地点への情報ボックスの配置が、被災者端末の消費電力削減に大きな影響を与えることを示した。 さらに、ICDTN/IC-Ad Hocにネットワーク符号化を導入する際に、リレー局・協力局において生じる干渉問題に対し、下位レイヤの無線通信プロトコルとして建設的干渉現象およびオーバヒアリング現象を駆使する手法を開発した。それによりデータ伝送の効率化が図れるので、不必要な無線通信に削減による消費電力の低減に貢献でき、システム全体のグリーン化につなげることができる点を明らかにした。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに構築した解析やネットワークモデルを拡張し、キーワード型ICDTNの制御(例: ACK 拡散によるキャッシュからの削除)に組み込む予定である。そのためには、ランダムウォークに従う移動エージェントによる類似コンテンツの発見をより正確に理解するとともに、移動エージェントの遷移確率を最適化することで、類似コンテンツの発見を迅速にする方式を検討する。また、ネットワークのダイナミクスを考慮し、テンポラルネットワークにおけるコンテンツ発見も検討する。 さらに、MCPの類似度に基づくキャッシュ制御法に関しては、k-NN法を用いてキャッシュ画像をグループ分けした場合の、配信画像の要求画像との類似度を比較評価する。さらに画像の集合が動的に変化する場合にも対応可能なよう制御アルゴリズムを拡張する。また複数種UAVを用いた避難誘導方式に関しては、小型Unmanned Aerial Vehicle (UAV)の充電を行うベースステーションを、最大空円問題を用いて、限られた個数で避難の誘導に要する時間を低減するよう適切に配置する方式を検討する。 そして、被災者の携帯端末、並びに、これまでに提案した災害情報の集約・送信する情報ボックス端末で構成される遅延耐性ネットワーク (DTN)を用いて、災害情報(被災者端末が収集した道路の損壊情報や避難所の情報)を共有を想定し、端末の特性を考慮した分散台帳技術を検討する。 また、被災地域において地上に敷設された無線通信システムが利用できない場合を想定し、上空移動ノードとしてUAVを用いたデータ収集方式を開発する。被災状況を把握するための動画・画像等の大容量データを対象とし、地対空無線ネットワークの構築し評価する。また、大容量データの取得を通じて、データ圧縮方式および無線データ伝送に関して検討する。
|