研究課題/領域番号 |
23K21666
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補助金の研究課題番号 |
21H03439 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60070:情報セキュリティ関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
杉田 典大 東北大学, サイバーサイエンスセンター, 教授 (90396458)
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研究分担者 |
八巻 俊輔 東北工業大学, 工学部, 准教授 (10534076)
湯田 恵美 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (50771763)
市地 慶 東北大学, 医学系研究科, 講師 (90743443)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2021年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
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キーワード | 動脈紋 / イメージプレチスモグラム / バイオメトリクス / 非接触計測 / 非接触 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,生体の映像解析によって得られるイメージプレチスモグラム(IPG)を用いて,詐称が極めて困難である“動脈紋”認証の手法を提案すると共に,その基礎技術の確立及び精度検証を行うことを目的とする. 具体的には,IPGの生成パターンが皮下を走行する動脈の形状に起因するものであるという仮説をたて,その生成パターンから再現性の高い“動脈紋”を抽出するための手法を確立し,これが従来の生体認証と同様の精度で使用できるかどうかを確認する.さらに,この手法を複数の部位に適用することで,部位間の脈動位相情報から認証対象の同一性を保証する技術を確立することを目指す.
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研究実績の概要 |
本研究では,映像から得られる脈動情報であるイメージプレチスモグラム(IPG)の生成パターンが皮下の動脈走行状態によって決まるという仮説のもと,身体の各部位でみられるIPG生成パターンに基づいて個人認証を行う「動脈紋」認証の手法を確立することを目指している.本研究課題では,この「動脈紋」抽出に関する基礎的技術を確立すると共に,その認証精度について検証を行う.従来の生体認証が主に静止画像から捉えられる身体的特徴を用いるのに対し,本提案手法では経時的変化を伴うIPGの生成パターンから得られる身体的特徴を用いており,偽造が極めて困難であると考えられる. 初年度にあたる今年度は,先行研究で報告されている,手掌部において得られるIPGで生じる特異的な脈動領域である「ホットスポット」の存在を確認するため,白色光と近赤外光を照射光として用いた際の手掌部マルチスペクトル画像から緑色光画素と近赤外光画素によるIPGデータをそれぞれ取得し,これに周波数スペクトル解析を行って脈動成分を抽出した後,手掌領域内における脈動強度の空間分布を計算した.3人の被験者に対して分析を行った結果,先行研究と同様に,脈動が強く現れる箇所とそうでない箇所が存在し,特に緑色光画素における脈動強度分布において個人毎に異なるパターンが生じることを確認した. 次に,このIPG脈動強度分布パターンに認証として活用できる情報が含まれているか否かを調査するため,生体認証の基本要件である「普遍性」に着目して検証実験を実施した.実験では,複数の被験者から日付や時間帯を変えた場合のIPGを取得し,前述の脈動強度分布を求めた.その結果,測定回によらず,同一被験者の脈動強度分布では特に強い相関がみられることが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では,「動脈紋」認証技術に関して以下に示す3つの課題を設定し,より高い認証精度が得られる手法について検証を行っている. (課題1)IPGの脈動強度分布に基づく手法と有効部位の確認 (課題2)IPGの伝搬特性による動脈紋抽出の検証 (課題3)照射パターン変化による秘匿性向上の検証 今年度に実施した研究では,特に(課題1)の内容について注力し,複数波長の画素情報を含むマルチスペクトル画像から,「動脈紋」の候補の1つである手掌部におけるIPG脈動強度分布を安定的に計算するための手法を確立した.さらに,複数人の被験者を対象とした検証実験を実施して得られたデータを用いて解析を行った結果,このIPG脈動強度分布において個人毎に異なるパターンが生じていることを確認した. これらの成果は,従来想定していたものと凡そ一致しており,本研究課題における進捗は概ね良好であると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに行った実験では,対象部位である手掌部における体温や押し圧などの外的要因に加え,計測日の違いなどが認証精度に与える影響についての検証が未だ十分ではないという課題がある.この点を考慮し,今後は,特に認証の「唯一性」と「永続性」について検証を行うことを目的として,数十人以上の被験者を対象とした実験を実施する.検証実験では,サーカディアンリズムの関係で循環動態に違いが生じている可能性が考えられることから,午前と午後といった1日の中で異なる時間帯に計測を行った場合や,季節性の変動を考慮して,数ヶ月の間をおき気温が大きく異なる日で計測を行う場合などについて,同じ被験者からデータを取得することを目指す. 一方,現在の手法では,IPG脈動強度分布を得るためには数十秒間の映像データが必要であり,これを出来る限り短くすることが課題となっている.このことに関しては,前述の実験で得られる数十人規模のデータをそれぞれ時間方向で細分化し,データ長と認証精度の関係を調べる検証を行うことで,認証に必要なデータ長の限界値についての知見を得ることが可能である.その上で,認証に必要なデータ長をより短くするための新しいアルゴリズム開発を行う. 更に,より簡単な計測が可能となる顔面部についても,個人認証に耐えうるIPG情報を得ることができないか検証を行ない,身体の動きや周辺の照明環境に対して頑強なIPG情報を抽出するためのアルゴリズム開発を進める.
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