研究課題/領域番号 |
23K21675
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補助金の研究課題番号 |
21H03453 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60100:計算科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
越塚 誠一 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (80186668)
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研究分担者 |
松永 拓也 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (40782941)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
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キーワード | 計算力学 / 流体力学 / 混相流 / 粒子法 / 界面 |
研究開始時の研究の概要 |
研究代表者らは自由表面を有する非圧縮性流れを計算できる粒子法としてMoving Particle Semi-implicit(MPS)法を考案し、粒子法による流体解析の研究では世界を先導してきた。本研究では、粒子法による混相流解析のための計算手法の研究を行う。具体的には、(1) 二流体の混合の解析と評価、(2) Particle Shiftingを用いた界面形状の平滑化、(3) DEM-MPS法による気液混相流解析手法の開発、である。得られた成果は、粒子法の学術的発展のみならず、幅広い産業への貢献が期待できる。
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研究実績の概要 |
粒子法は計算格子を用いないため界面の大変形を扱うことが容易であり、混相流解析に適している。本研究では、混相流解析のための粒子法の研究を行い、どこまで複雑な混相流を解けるか、どこまで精度良く解けるようにできるかを追究している。具体的には以下の成果が得られた。 (1) 二流体の混合の解析と評価:密度の異なる二流体の不安定性であるレイリー・テイラー不安定性を取り上げ、界面面積の増加の定量的な評価を行った。あらたに考案した粒子交換法を用いることで、計算精度を落とすことなく界面形状を滑らかにすることに成功した。さらに、粒子交換法による3次元解析を行った。 (2) Particle Shiftingを用いた界面形状の平滑化:独自に考案した粒子交換法は、これまでのParticle Shiftingと比較して、アルゴリズムが単純であり、かつ、どのような問題にも容易に適用できる。そこで、粒子交換法を用いて二軸スクリューによる混合問題に適用した。二軸スクリューの狭隘流路の解析のための可変解像度手法において、小さな粒子を合体させて大きな粒子にする過程に粒子交換法を適用し、可変解像度手法を安定に適用することができた。 (3) DEM-MPS法による気液混相流解析手法の開発:ジェットに流体粒子を配置し、ジェットの周囲の流体には粒子を配置せず、流れの計算を行った。ジェットの流体粒子に対する周囲の流体の影響として、液滴流れにおける抗力を導入した。主にジェット先端部に流れと垂直な抵抗力を受けるため、ジェットの先端部が横に広がり、典型的なきのこ状の形状が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各課題に対する成果を以下のように評価することができる。 (1) 二流体の混合の解析と評価:二流体の混合に関して、典型的なレイリー・テイラー不安定性の問題を取り上げ、界面の変化を計算した。粒子法では界面形状が乱れて、界面面積が大きくなる誤差が生じやすかったが、粒子交換法を適用することにより、界面形状を滑らかにして、界面面積が大きくなるという問題点を回避することに成功した。 (2) Particle Shiftingを用いた界面形状の平滑化:Particle Shiftingにかわる粒子交換法を新たに考案し、混相流の粒子法シミュレーションに関する界面平滑化に成功した。また、可変解像度における粒子合体の過程に粒子交換法を適用することで、可変解像度を安定に適用することもできるようになった。特に、可変解像度と粒子交換法を組み合わせる計算手法については、二軸スクリュー内の狭隘流路の3次元計算に適用することに成功し、その有用性を示すことができた。 (3) DEM-MPS法による気液混相流解析手法の開発:ジェットに流体粒子を配置し、ジェットの周囲の流体には粒子を配置せず、流れの計算を行った。ジェットの流体粒子に対する周囲の流体の影響として、液滴流れにおける抗力を導入した。主にジェット先端部に流れと垂直な抵抗力を受けるため、ジェットの先端部が横に広がり、典型的なきのこ状の形状が得られた。これまでの研究で、液滴流れにおいても同様の計算しており、典型的な気液二相流の解析において有用であることが示された。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果に基づいて、混相流の粒子法シミュレーションに関する3つの研究課題について以下のように取り組む。 (1) 二流体の混合の解析と評価:これまでの研究により、粒子交換法により二流体の混合に対する界面での粒子法の問題点を解決することができた。今後は、雨水が壁面を伝って流れる場合に、従来の粒子法の表面張力モデルおよび濡れ性のモデルでは、液滴として壁面上を流れる速度や、端部での回り込みがうまく計算されないという問題に取り組む。 (2) Particle Shiftingを用いた界面形状の平滑化:Particle Shiftingにかわる粒子交換法を新たに考案し、混相流の粒子法シミュレーションに関する界面平滑化に成功し、可変解像度の方法と組み合わせることで二軸スクリュー内の流れの3次元シミュレーションを行うことができた。今後は、津波や薄膜塗布などを扱うことができる浅水方程式に対する粒子法において、可変解像度手法を適用することを試みる。浅水方程式に対する粒子法では、液膜が薄くなるにつれて空間解像度が悪化するという問題があり、可変解像度手法を適用することでこれを解決する。 (3) DEM-MPS法による気液混相流解析手法の開発:これまでの研究では典型的な気液二相流である液滴流れとジェット流れを対象としてきたが、本手法は二流体流れや単相流でも適用することができる。そこで、単相流も含めたジェット流れを対象に引き続き研究を進める。粒子を配置しない周囲流体の効果を、壁境界条件と同様な方法を用いることで、汎用性のある計算モデルを新たに開発する。本計算モデルを用いれば、注目している一部の流体のみを用いて、広い領域の流れを計算することができるようになるため、単相流においても計算効率が大幅に向上すると期待できる。
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