研究課題/領域番号 |
23K21707
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補助金の研究課題番号 |
21H03518 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61050:知能ロボティクス関連
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
小林 祐一 静岡大学, 工学部, 准教授 (60373304)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
12,480千円 (直接経費: 9,600千円、間接経費: 2,880千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | 非線形制御 / センサ変数変換 / 可制御性 / 非ホロノミック系 / 非ホロノミック拘束 / 非線形制御の学習 / 未知のセンサモデル / 写像学習 / 観測変数変換 / 学習制御 / フィードバック制御 / 運動学習 / 移動ロボット / 変数変換 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,ロボットの運動生成の原理として,「制御しやすい空間を発見する」という考え方のもとで,新しい運動生成方法を提案する.非ホロノミック拘束を有する車輪型移動ロボットを対象とし,その非線形性を考慮した制御方法である時間軸状態制御形という方法をベースにすることで,センサで観測した変数を,「制御しやすい変数」に写像し,単純な線形系の制御によって安定に目的位置(原点)に制御する方法を提案する.「制御しやすい空間の発見」というアイディアを,冗長性を有するセンサ観測にも適用し,「ぶつかりにくい/領域外に出ない」空間を変数変換により生成する方法を開発してマニピュレータの運動生成を実現する.
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研究実績の概要 |
ロボットの運動学習においては,強化学習や最適制御で定式化されているように,外部から与えられる評価の積分値を最大にするという考え方が一般的である.しかし,外部からの評価だけでは未知の系に対応するための情報が不足しており,ロボットの多様な運動を生成するための原理として,より低次の情報を利用できることが好ましい.本研究では,フィードバック制御という比較的単純でありながら普遍性のある制御構造をベースにして,運動学習問題を「制御しやすくなるような表現を獲得する問題」と捉えることで,異なる運動に共通して適用可能な学習原理を構築する方法を提案・開発する. そのアプローチとして,非ホロノミック拘束を受ける対向2輪型の移動ロボットの制御問題を例に取り,時間軸状態制御と呼ばれる非線形制御方法をベースにした変換生成学習方法を提案した.この考え方は,状態および制御入力に適切な非線形変換を施し,かつ,ある方向軸に沿った動きを時間のようにみなすことで,可制御な形に系を変換できることを基礎としている.2023年度は,これまでに開発・検証した方法の非効率な部分を解析し,その解決方法を提案し検証した.具体的には,これまでの学習法では,格子点を分布させることで変数変換を表現し,正則化つきの最適化問題を解くことで変換を生成していた.しかしこの格子点の分布が安定性を欠くことが問題であった.これに対して,格子点ではなくサンプルベースの線形関数近似法を用いて不安定化の要因を排除し,基底関数を用いた関数近似の枠組みの中で正則化項を導入して望ましい変数変換を獲得できるようにした.これにより,多様な条件下で安定して変数変換を行えることが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始当初に提案し,目標としてきた「線形フィードバック制御が可能な形への変換を学習することで,未知な観測系を有する非線形・劣駆動系の知覚・運動を生成する方法を提案する」という点について,懸案であった学習の不安定化の問題に対して,ある程度解決可能であることが確認できたという意味で,研究課題全体についての進捗としてはおおむね順調であると評価することができる. その一方で,格子点をベースにした変換手法における問題点を解析し対処法を構築するのに時間を要したという意味では,当初想定していなかった問題への対応が研究計画に影響を与えているという面がある.ただ,これまでに想定してきた「格子点をベースにした変数変換方法」に限定されない,より広く使われている基底関数をベースにした関数近似法でも目標とするような変数変換が獲得できるという知見を得ることができたため,この点は研究課題の進捗とみなせると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は,前年度までに提案・開発した,対向2輪型移動ロボットシステムの制御のための写像学習方法の検証結果にもとづいた改良とその実装・検証を行う.時間軸状態制御系への変換可能性を利用した写像構成方法を,シミュレーションおよび実機ロボットの両面から実装・検証する.また,2023年度に改良した方法により,従来よりも安定性の高い変数変換獲得方法を実現することができたが,そのシミュレーションならびに実機ロボットシステムにおける検証作業が十分に行えていない.そのため2024年度は,開発した変数変換学習方法を,より実機ロボットが実際に経験する状況に近い環境を想定した評価と検証を行う. また,実機実験においては,2023年度までに実装したアーム型ロボットシステムを用いた検証を継続して行う.多関節型のマニピュレータにおけるリーチング動作を提案手法の適用対象として,モジュール型アクチュエータシステムにもとづいた実験系での動作生成実験を行う.多関節型マニピュレータにおけるリーチング動作においては,センサ変数変換方法と衝突情報にもとづいた動作修正方法との統合を図る.2023年度に実装・検証したアーム型ロボットシステムの動作生成方法では,手先位置が視野から見えなくなるオクルージョンを想定する中で,その検証対象がコンフィギュレーション空間中の一部の空間に限られていた.より広い範囲での空間における動作検証を行うため,ロボットを動作させる範囲を拡大してサンプル収集を行い,その運動生成に関する空間生成能力の検証を行う.その過程で,これまでに固定された格子状の空間表現方法を,柔軟に格子数や境界を変動させられる形に拡張し,多様な状況に対応可能なものを構築する.
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