研究課題/領域番号 |
23K21712
|
補助金の研究課題番号 |
21H03530 (2021-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61060:感性情報学関連
|
研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
杉原 厚吉 明治大学, 研究・知財戦略機構(中野), 研究推進員 (40144117)
|
研究分担者 |
宮下 芳明 明治大学, 総合数理学部, 専任教授 (40447694)
大谷 智子 大阪芸術大学, 芸術学部, 准教授 (40422406)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2024年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
|
キーワード | 錯視 / 視覚の数理モデル / 不可能立体 / VR / 錯視遊具 / 立体錯視 / 平行移動錯視 / 錯視標識 / 4ストローク運動錯視 / 教育プログラム / 変身立体 / 起き上がり立体 / 対称性 / 高さ反転錯視 / 錯視体験ツール / 錯視教育プログラム / 遊び / 奥行き誇張画像 / 運動錯視 / VR |
研究開始時の研究の概要 |
見たものが実際とは違うように知覚される錯視は事故などの原因となるため、その仕組みを理解することは、安全な生活環境を整えるための社会的課題であると同時に、事故を回避する生活力を身につけるための知育課題でもある。本研究では、視点を固定するなどの人工的制御をしない自然な状況で起こる奥行きの錯視に注目し、その仕組みを理解するための数理モデルを構築する。それを利用して、事故の遠因となりかねない危険な道路形状などの環境構造を洗い出し、安全を確保するための指針を提供する。また、自然な環境で錯視を体験できる遊具を試作し、それを用いた安全教育の効果的指導法を開発する。
|
研究実績の概要 |
本研究の目的は、自然環境下で起こる錯視について、その仕組みを説明する数理モデルの構築、数理モデルを応用した安全環境整備、錯視体験遊具の試作と安全教育への応用を推進することである。 研究代表者杉原は、数理モデルの構築とその応用を主に受け持った。錯視の収集では、一つの(主に生き物を表す)立体を二つの鏡に映すと左右反転錯視と平行移動錯視が同時に起きる新しい錯視を発見し、それを生み出す錯視立体の設計法を構成した。さらにそれを発展させて、一つの立体から向きがそろって輪を成す4つの立体が生まれる錯視なども創作した。これらの錯視の多くは両目で見ても成立すること、およびその理由が立体の対称性から来ることも発見した。これにより、視覚の数理モデルも改良できた。大型錯視標識・錯視遊具については、案内矢印が地面から窪んで見える標識の実装、人が窓から顔を出して写真を撮ると巨人化して見えるフォトスポットの設計などができた。 研究分担者宮下は、周波数を疑似再現した4ストローク運動錯視を対象とし、脳波計を用いて定常状態視覚誘発電位(Steady-State Visual Evoked Potential:SSVEP)を測定した。識別精度について調査した。各個人で複数試行分の脳波データを平均化したテンプレートを参照信号として用いる識別手法Individual template-based CCA(IT-CCA)が有効であることを示した。 研究分担者大谷は、小型遊具を用いた教育プログラム開発を主に受け持っている。2023年度は,高校におけるSTEAM教育を念頭においた授業プログラムの実施結果をまとめ,論文にまとめた。また,物理的な照明方向と奥行知覚の変化に関する錯視を題材とした体験型授業プログラムを開発し,実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
立体錯視の収集に関しては、平行移動錯視と左右反転錯視が同時に起きる新種の錯視を発見するとともに、その錯視立体例を創作する設計手法を開発できた。視覚の数理モデルの改良に関しては、対象立体がもつ対称性などが視点移動に対してロバストな錯視の強さを説明できるという知見を組み込むことができた。安全環境整備に関しては、地面に敷いたシートが立体に見えるために見落としにくい標識の例を実装できた。錯視遊具の開発と応用に関しては、人が巨人化して見えるフォトスポットの設計、4ストローク運動錯視をマンマシンインターフェイスへ応用するための基礎的脳波データの収集・解析、小型錯視遊具を用いた教育プログラムの開発・評価などを行った。以上の通り、4つの研究項目のすべてに関して、ほぼ予定通りの研究実績を積み重ねることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
次の4つの項目を平行して遂行する。第1に、視点に制限を加えないでも起こる奥行き錯視事例の収集を継続する。特に複数の錯視が複合的に起こる視覚現象を収集する。第2に、奥行き錯視の数理モデル構築を継続する。自然環境下で両眼立体視に反して奥行きを誤認するのは、錯視を起こす要因が、対象が固有に持つ幾何学的対称性などの視点位置に依存しない性質による場合が多いことがわかりつつある。この観点を掘り下げ、それに基づいて数理モデルを改良すると同時に、その振る舞いを実際の錯視と突き合わせながらモデルを検証していく。第3に、床に描かれた絵が立ち上がって見える錯視を利用して、注意喚起のメッセージを目立たせることにより、見落とされ難い標識の設計法を構成する。第4に、奥行き錯視を体験できる遊具を開発する。積み木や紙工作によって錯視を創作できる小型遊具、コンピュータと対話する中で錯視を体験できるVRやゲーム、その中に入って遊ぶことのできる大型遊具の三つの種類を考える。ここでも、数理モデルから得られる視覚効果の予測を利用して、開発の効率を上げる。 研究代表者杉原は、項目1,2,3を主導するとともに、項目4では大型遊具の開発を担当する。特に、人が巨大化して見える錯視フォトスポットを実装し、その視覚効果を観光資源の観点から検証する。 研究分担者宮下は、項目4の錯視を体験するVRコンテンツの開発を主に受け持ち、その評価を行う。特に、輝度変化による運動錯視を応用し、SSVEP(定常状態視覚誘発電位)ベースのBCI (Brain-computer Interface)の開発と評価を行い、論文誌投稿を目指す。 研究分担者大谷は、項目4の小型遊具を用いた錯視を意識化するプログラムの構築を主に受け持つ。錯視の専門家が不在な環境においても実施できるプログラムのパッケージ化を目標とし、これまでの検証をもとにさらに改善する。
|