研究課題
基盤研究(B)
近年の遺伝性疾患の原因遺伝子診断率は30%程度であり、変異に応じた個別化医療を推進する上で、その改善が喫緊の課題となっている。本研究では、「高次構造型ヒトゲノム参照配列」の構築という課題に挑戦し、現行のヒトゲノム参照配列に基づく解析では検出が困難である病因変異の解明に貢献することを目指す。本研究の遂行により、現行の参照配列情報では捉えきれない未解決の遺伝性疾患症例を対象に原因遺伝子変異の同定が進み、遺伝子診断率の向上とゲノム情報に基づく個別化医療の進展に繋がることが期待される。
本年度も、ロングリード(長鎖)シークエンサーを用いて、高精度のヒトハプロイドゲノムを構築することを目的とし、2倍体ゲノムからの高分子DNAの抽出と解析を進めた。抽出法としてNanobindとpromega wizard kitを比較検討した。Nanobindでは、最頻値50kb強、平均40kbのDNAが約23ug、promegaでは、最頻値50kb弱、平均25kbのDNAが約10ug抽出され、Nanobindの方が、サイズ・収量ともに、良好な結果であった。Nanobindで抽出したDNA約7ugを使用してライブラリを作製し、Oxford Nanopore PromethIONを用いて、シークエンスを実施した。ライブラリ1は、総塩基数26.7Gb、リード数1.4M、N50=32.0kb、平均リード長18.8kb、ライブラリ2は、総塩基数41.1Gb、リード数5M、N50=16.6kb、平均リード長8.3kbであった。これらのシークエンスデータを用いてアセンブリーを実施し、コンティグN50=27.3Mb、最大値126.3Mb、平均4.1Mb、総塩基長が2.75Gbを得たことから、十分な質のDNAからシークエンスデータが得られていることが推察される。平均リード長が抽出したDNA断片長から期待される値よりも短い傾向があることから、NEB Monarch HMW DNA Extraction KitによるDNA抽出や、Ultra-Long DNA Sequencing Kit V14+R10.4 poreによるシークエンスの実施など、更なる検討を進める。日本人参照配列の高次元化に利用する全ゲノム情報については、解析が完了している3,000検体を約10,000検体まで拡充し、参照配列の構築に必要なゲノム上の構造変異情報の収集に努める。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、主に2倍体のDNAを用いてロングリードシークエンス解析を進めた。構築できた参照配列は、従来のヒトゲノム参照配列と比して遜色ないことから、当該データについてはHaplotype aware assemblyを実施し、ハプロタイプの構築精度の評価が可能である。高次元化に利用する全ゲノム情報についても拡充の目処がたち、日本人参照配列の構築に向けて順調に進んでいる。
本年度は、2種類の高分子DNA抽出法と、Nanoporeシークエンサーを用いたロングリードシークエンス解析を進め、de novo assemblyによって日本人ゲノム配列を構築した。当該データについては更なる分析を進めると共に、更に高分子のDNAを抽出するプロトコルや改良された長鎖シークエンスkitの採用、PacBioの高品質長鎖配列の追加も検討し、精度の高い日本人参照配列の構築を目指す方針とする。また、日本人ゲノムの網羅性を高めるため、全ゲノム解析対象検体を1万検体まで追加し、解析する予定である。日本人由来ではないが、T2Tコンソーシアムから昨年4月に公開された最新のヒトゲノム参照配列との比較検討も今後の課題である。
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