研究課題/領域番号 |
23K21733
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補助金の研究課題番号 |
21H03565 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分62030:学習支援システム関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
堀口 知也 神戸大学, 海事科学研究科, 教授 (00294257)
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研究分担者 |
平嶋 宗 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (10238355)
東本 崇仁 千葉工業大学, 情報変革科学部, 教授 (10508435)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
15,600千円 (直接経費: 12,000千円、間接経費: 3,600千円)
2024年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2021年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
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キーワード | 知的学習支援システム / 例からの学習 / 類推 / 知識の一般化 / 可視化 / 構造写像エンジン / 構造一般化エンジン |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,教育学的に有効とされる「例からの学習」を,認知科学・人工知能の手法を用いて精緻化することにより,問題スキーマ(解法を概念・原理と結びつけて理解すること)および汎化スキーマ(例題間の共通点・相違点を一般化すること)の確実な獲得を支援する学習支援システムを実現する試みである.例題とその解法における本質的な知識を抽出し,それらを関係づけて構造化する認知過程をモデル化した上で,学習者にとって困難な認知処理における負荷を軽減するためのツールを実現するとともに,適切な知識構築を促進する機能を設計・実装する.これによって,計算機を用いたより高度な学習支援の基盤技術を提供する.
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研究実績の概要 |
対象領域の深い理解を達成する上で有効とされる「例からの学習」では,解法を概念・原理と結びつける問題スキーマ,例題間の共通点・相違点を一般化する汎化スキーマを獲得することが重要である.先行研究では,これらを支援するために「説明生成器」及び「問題系列生成器」を開発し,それらが問題スキーマの獲得に貢献することを実験的に確認したが,汎化スキーマの獲得には不十分との知見も得られた.これは,汎化スキーマ獲得の中心となる類推及び知識の一般化が大きな負荷を伴う認知過程であることによる.そこで本研究では,学習者の認知負荷の軽減を指向して,(1)問題構造を可視化・操作可能化し,(2)問題比較と知識の一般化をより直接的に支援する「類推マップ」を開発し,その有用性を検証する.これによって,「例からの学習」を十全な汎化スキーマの獲得に結びつけるための支援方法を確立することを目的としている. 2023年度は,まず,類推マップによる「問題照合(比較)」支援が学習者の知識構築にどのように貢献するかを検証するための学習実験(2022年度実施予定であったがコロナ禍により順延)を実施した.実験の結果,基本的な解法習得のみで解ける問題では,類推マップ使用群と非使用群の間に有意な差は見られなかったが,解法を自身で見極める必要のある発展問題では,前者は後者よりも高い学習ゲインを示した.また,問題間の高次の共通点・相違点を記述した学習者ほど,発展問題で高いパフォーマンスを示し,またインタビューにおける発話内容の質が高かった.これらの結果は,類推マップが知識構築において有用であることを示唆するものと考えられる. 次に,上記と並行して,「知識の一般化の支援機能」の設計を行ったが,上記実験の順延のため基本設計段階に留まり,プロトタイプの実装までには至らなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度は,2022年度から順延となった学習実験の実施,およびそのデータ整理・分析に多くの時間を要した.実験の結果自体は概ね良好であり,上記の通り,類推マップにおける「問題照合(比較)」支援が学習者の知識構築において有効に働き,単なる基本的解法の習得に留まらない深い理解(問題間の高次の共通点・相違点への気づきとそれに基づく問題スキーマの獲得)を促進したことを示唆する結果が得られた.しかし,一方で,当初予定の「知識の一般化の支援機能」(学習者がモデル一般化を行うための基本インターフェースおよびその診断・助言生成機能)の実現については基本設計(仕様策定)段階に留まり,構造一般化エンジン(SEQL)(研究協力者であるForbus教授(Northwestern大)らが開発)を用いた諸機能の実装,および動作・検証試験などについては,翌年度に持ち越すこととなった.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は,まず,「知識の一般化の支援機能」(学習者がモデル一般化を行うための基本インターフェースおよびその診断・助言生成機能)の実装および動作・検証試験を実施する.前年度に基本設計(仕様策定)が完了しているため,円滑に進めることができるものと見通している.次に,同機能による「知識の一般化」支援が学習者のスキーマ獲得にどのように貢献するかを検証するための学習実験を行う.当初は,教育現場における授業実践も予定していたが,対象を大学生とした検証実験のみとする.実験における運用が可能となるようシステムの調整を行うとともに,学習実験用の教材作成を研究協力者2名が担当し,その妥当性(分量や難易度など)を研究代表者・分担者間で確認する.実験の実施は研究代表者および1名の研究分担者が担当し,結果の分析と取りまとめは研究班全員で行う.分析においては,事前・事後・遅延テストおよび問題分類テストの学習ゲインに加えて,システムログから学習者によるシステム操作回数や内容(照合や一般化の質)を抽出した結果を用いることで多角的な評価を行う.分析を通して,一般化スキーマ獲得における学習者の困難を明確化し,研究協力者(Forbus教授,Gentner教授(Northwestern大))とも協議しながらスキーマ獲得に関する認知モデルの構築を目指す.
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