研究課題/領域番号 |
23K21764
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補助金の研究課題番号 |
21H03625 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64010:環境負荷およびリスク評価管理関連
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
羽野 健志 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(廿日市), 主任研究員 (30621057)
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研究分担者 |
岩崎 雄一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (00748840)
佐藤 琢 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(廿日市), グループ長 (20455504)
伊藤 真奈 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(廿日市), 主任研究員 (60735900)
Jusup Marko 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産資源研究所(横浜), 主任研究員 (60762713)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2021年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
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キーワード | クルマエビ / 農薬 / ウイルス / 高水温 / DEBモデル / ウィルス / 殺虫剤 / 病原体 / 複合影響 / エネルギー収支モデル |
研究開始時の研究の概要 |
重要水産種クルマエビの国内漁獲量はこの30年間で約9割も減少し、その原因究明と資源回復は喫緊の課題である。申請者らは沿岸干潟域における予備調査において、クルマエビに影響が及ぶ濃度の農薬を検出するとともに、天然稚エビが疾病ウイルスを保有していること、さらに農薬の毒性が水温上昇で高まることを確認した。本研究では、農薬・ウイルス・高水温の3つの複合要因が、クルマエビ(個体)に及ぼす影響とその作用機序を明らかにするとともに、数理モデルと野外調査による予測と検証により、クルマエビ個体群(資源)に及ぼす影響を明らかにする 。
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研究実績の概要 |
課題1 沿岸干潟域における高リスク農薬の抽出:約20種の殺虫剤(ネオニコチノイド系殺虫剤7種及びその分解物、フェニルピラゾール系殺虫剤フィプロニル、フィプロニルの3分解物等)を対象に瀬戸内海沿岸干潟域の農薬の分布実態を調べた。2022年6-9月の調査では、使用量が比較的多いジノテフラン(ネオニコチノイド系殺虫剤の1種)が最大約400 ng/Lで検出されたが、フェニルピラゾール系殺虫剤は検出されなかった。 課題2 クルマエビ稚エビのウイルス保有状況:天然稚エビ採捕調査を沿岸干潟域を中心に実施した。各個体からDNAを抽出後、Real-time PCRによりWSSV感染の有無を確認した結果、採捕された全個体に占めるWSSV陽性個体の割合は1%程度であった。 課題3 複合要因の影響と作用機序解明:殺虫剤、ウイルス感染の同時複合曝露を3段階の水温下で実施し、クルマエビ稚エビの生残に及ぼす影響を調べた。殺虫剤はフィプロニル(100 ng/L:実環境での最高濃度91ng/L付近に相当)、水温は3温度区(20、25、30℃)とした。ウイルス感染は、フィプロニル曝露に先立ちウイルス感染したクルマエビの組織懸濁液を500倍希釈した海水中で2時間行った。引き続いて行ったフィプロニル14日間の曝露試験の結果、30℃区のフィプロニル+ウイルス区で死亡率は75%で最大となり、対照区に比べ有意に増加した(ログランク検定)。以上の結果から、フィプロニルとウイルスの影響は、高水温(30℃)条件が重なると重篤化することが明らかとなった。 課題4 クルマエビ版DEBモデル構築:過年度に収集した各種試験・分析データの援用により、クルマエビ版動的エネルギー収支モデルを概ね構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題1 沿岸干潟域における高リスク農薬の抽出:沿岸干潟域における高リスク農薬の抽出:クルマエビへの高リスク物質としてフィプロニル,およびフィプロニル分解物を沿岸干潟域環境水から検出した。 課題2 クルマエビ稚エビのウイルス保有状況:天然稚エビ採捕調査を実施し、WSSV保有個体を確認した。 課題3 複合要因の影響と作用機序解明:殺虫剤曝露、ウイルス感染の影響が、高水温下で重篤化する現象を確認した。 課題4 クルマエビ版DEBモデル構築:過年度に収集した各種試験・分析データの援用により、クルマエビ版動的エネルギー収支モデル(Dynamic Energy Budget,DEB)を概ね構築した。 以上、すべての課題において順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
課題1 沿岸干潟域における高リスク農薬の抽出:引き続き沿岸干潟域の農薬の分布実態を詳細に調べる。高リスク殺虫剤については随時情報を収集し測定対象としてのアップデートを進め、分析を継続する。 課題2 クルマエビ稚エビのウイルス保有状況:引き続き天然稚エビ採捕調査を沿岸干潟域で実施する。採捕個体は、リアルタイムPCRによりウイルスの保有を確認後、ウイルス量、 遺伝子型及び多型性を調べ、感染率との関係を明らかにする。ウイルスの保有状況を踏まえつつ地域間差異や季節・経年変化の考察を進める。 課題3 複合要因の影響と作用機序解明:過年度成果をもとに、エネルギー収支に大きく影響を与える給餌量に主眼を置きつつ、引き続き複合曝露試験を行う。また、殺虫剤曝露、ウイルス感染の影響が、高水温下で重篤化する現象の解明の一助とするため、供試個体内の殺虫剤濃度、ウィルス量測定に着手する。 課題4、5 クルマエビ版DEBモデルの構築と複合影響評価:昨年度までで進めてきたクルマエビ版DEBモデルを精緻化し、課題3と連携しつつ個体レベルでのエネルギー収支の観点からの複合影響評価を進める。 課題6 クルマエビ個体群への影響評価:環境3要因によるクルマエビ個体群への影響を評価するため、課題5と連携しつつDEBモデルの組み込みに向けたモデル構築に着手する。
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