研究課題/領域番号 |
23K21774
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補助金の研究課題番号 |
21H03651 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64040:自然共生システム関連
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
山本 智子 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 教授 (80305169)
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研究分担者 |
久米 元 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 准教授 (00554263)
藤井 琢磨 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (30772462)
平 瑞樹 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 助教 (40284913)
中村 啓彦 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 教授 (50284914)
寺田 竜太 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 教授 (70336329)
本村 浩之 鹿児島大学, 総合科学域共同学系, 教授 (90433086)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2021年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
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キーワード | 生物多様性 / 生物地理区 / 黒潮 / トカラ列島 / 温暖化 |
研究開始時の研究の概要 |
琉球列島北部の薩南諸島を対象に、海岸生物各種の分布を決める分散と着底のプロセスを決定する要因について明らかにし、温暖化に伴って起こり得る変化を予測する。当該地域の沿岸は極めて高い生物多様性を有するとともに、2つの生物地理区にまたがっており、温暖化に伴う海岸生物の分布変化を考える上で重要な位置にあるとされている。しかしながら海岸生物に関する情報が少ないことから、本研究では、この地域の沿岸生物相を明らかにすることで保全のための基本的な知見を提供するとともに、島嶼域における海岸生物の分布を決定するメカニズムを明らかにし、温暖化による影響が懸念される生物多様性の保全に資することを目標とする。
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研究実績の概要 |
本研究では、島嶼域の海岸生物が分布を維持する仕組みを、各種の分散能力と島嶼間でのハビタットの空間分布に着目して明らかにし、地球温暖化によって起こりえる変化を予測する。以下の4項目に沿って研究を進めることにしており、2022年度は以下のA)B)を進めるとともに、C)の代表種選定を行う予定であった。 A)海岸ハビタットの空間配置:GIS技術を用いた海岸生物のハビタット(岩礁・転石・砂質など)の空間配置の整理 B)海岸生物の島嶼別分布:島嶼別ハビタット別に既存情報のデータベース化と現地での分布調査 C)代表種の分布と分散能力:分類群別代表種について地域集団間のネットワークと分散能力との関連付け D)温暖化による影響:温暖化に伴う物理場の変化予測から分散パターンと生息可能範囲の変化を予測 2023年度に現地調査を行い、海岸生物の生息地がある全ての有人島で海岸地形と海岸生物相の調査を終了した。また、2022年度に上陸した無人島再度上陸し、異なる海岸の調査を行うことができたため、これまで情報の少なかった無人島の海岸地形と海岸生物について貴重な情報を入手できた。対象海岸の多くはサンゴ基質や転石、砂質海岸であった。また、琉球列島から種子島まで分布し、奄美群島のいくつかの海岸で優占種であるミナミコメツキガニをC)の代表種として選定し、遺伝子の抽出と解読を終了した。各集団間の遺伝的構造について解析したところ、八重山諸島から種子島までの地理的分布域において、遺伝的な空間構造が見られなかった。このことは本種が極めて広い範囲での分散能力を有していることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記載したA)B)C)D)の項目のうち、A)海岸ハビタットの空間配置の情報整理は、人工衛星情報等を活用して基質の異なるハビタットの空間分布パターンを整理しており、概ね終了している。また、現地調査を行い、ドローンを活用してより詳細かつ立体的な海岸地形の調査を行ったが、特にこれまで情報のなかった無人島について、島周辺の海岸地形をほぼ網羅する調査を行い、貴重な情報を得ることができた。B)海岸生物の島嶼別分布については、海岸生物のハビタットを持つ全ての有人島と無人島ひとつに加えて、比較対象とする周辺島嶼における海岸動物相が明らかになった。また、琉球列島から種子島まで分布し、奄美群島のいくつかの海岸で優占種であるミナミコメツキガニをC)の代表種として選定し、遺伝子の増幅と解読を行った結果、集団間の遺伝子構造を解析することで、幼生の分散ネットワークをについて推定することができた。以上のことから、2023年度に計画していた項目はほぼ終了しており、進捗状況は概ね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
トカラ列島の島嶼に加えて、その近辺の島嶼についても海岸動物相を明らかにすることができた。海岸動物はその発生様式によって幼生の分散能力が異なることが想定されるため、それによって島嶼間、海岸間での分布様式に違いが出るかどうかを検証する。また、分散能力と島嶼間の分布について解析するモデル種に選定したミナミコメツキガニについて、島嶼における地域個体群間のネットワークを明らかにすることができた。今後は、このようなネットワークを形成する上で海岸動物の幼生分散を決定する海流について、粒子追跡モデルによって分散パターンの再現を試みる。モデル形成に寄与するため、ミナミコメツキガニの繁殖生態について詳細な調査(本種は2010年に新種記載されており、基礎的な生態情報に乏しい)を行なう必要がある。その上で、現在進行する気候変動がこの流れに与えるであろう影響を予測することによって、当該地域における海岸生物の分布が気候変動に伴ってどう変化するかについても考察する予定である。
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