研究課題/領域番号 |
23K21804
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補助金の研究課題番号 |
21H03700 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
青山 和佳 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (90334218)
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研究分担者 |
受田 宏之 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20466816)
中西 徹 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (30227839)
清水 展 関西大学, 政策創造学部, 客員教授 (70126085)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
15,470千円 (直接経費: 11,900千円、間接経費: 3,570千円)
2024年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
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キーワード | 有機農業 / フィリピン / メキシコ / 日本 / 国際比較 / 地域社会 / アグロエコロジー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、有機農業が発展途上国の低所得層の生存戦略として経済的・社会的意義のみではなく文化的意義をももつことを、日本、メキシコ、フィリピンの具体的な事例について比較検討を通じて明らかにする。この3国は、歴史的にみてアメリカとの密接な関係(隣国、植民地、占領支配)をとおしてグローバル化の影響を受けてきたという共通点がある。とくに、それらの3国で小地域社会における社会関係を基礎とする「提携」と「参加型有機認証制度」という二つのシステムの展開に着目し、未来への可能性を実証的に探る。
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研究実績の概要 |
3年目にあたる2023年度は、新型コロナウィルス流行収束後、本格的に現地調査(おもに海外フィールドワーク)を対面で実施することができるようになり、下記のような成果を得た。 (1)教科書『現代国際社会と有機農業』にもとづき放送大学で講義を提供した。本講義は、グローバル社会における有機農業の意義、フィリピン、メキシコ、日本、イタリアの事例が紹介されている。(2)アンソニー・リードの歴史書(アナール派、環境史を含む)『世界史のなかの東南アジア』に関して国際的な書評集会を開催した。なお本書は大平正芳記念賞・特別賞を受賞した。(3)国内外の学会等において研究成果の発表、論文や書評を刊行した。(4)有機農業の実践主体(農民学校、有機農家等)との交流をはかり、講演等を実施した。(5)フィリピンの東ネグロス州における現地調査により、白色とうもろこしの除草剤耐性遺伝子組み換え(GM)種が広範に普及し、在来種が失われていることが明らかになった。(6)フィリピンの中部ルソン地方における現地調査によりパンデミック禍における支援物資としてコメのF1種が有機農村に普及していることが明らかになった。(7)フィリピンの南タガログ地方(「緑の革命」中心地)における現地調査によって農薬禍が生じていることが明らかになった。(8)メキシコにおいてマヤ農民の自律的発展を目指すユカタン農民学校とトラスカラの有機農園などを訪れ、インタビューと参与観察を行った。(9)メキシコおよびフィリピンよりアグロエコロジーの活動家や歴史家を招聘し、研究交流を行った。(10)フィリピンのミンダナオにおいて、本プロジェクト企画時に調査予定としていた農園がコロナ禍で閉鎖後、移転、新たに開園した場所が鉱山跡であることが判明したため、関連して鉱山や公害に関する文献調査及び農村&鉱山生活経験者の女性(日本とフィリピン)へのインタビューを始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスの流行により、申請当時に計画していた現地調査(フィールドワーク)を行うことが、本格的に可能になったのが、昨年度からであった。本研究は、海外調査の実施をその核とするため、計画の大幅な調整を強いられた。また、コロナ禍中、ZOOMやSNSを利用し、メキシコおよびフィリピンの研究カウンターパート(現地大学、農民学校、農園など)と連絡をとったり、可能な調査(インタビューなど)を行ったりしてきたとはいえ、フィールドワーク再開には関係再構築(地域社会への再統合)に一定の時間を費やす必要があった。また、場合によっては、当初調査対象としていた農園がコロナ禍の影響により閉鎖→移転→新たに開園するという展開があり、この場合、新しい地域における文脈を理解するために新たに文献調査をする必要も生じた。 一方で、プロジェクト期間の前半において、文献調査等に時間をかけることができたため、昨年度以降、予想外の成果(教科書の作成の進展や翻訳書の出版)を得てきたことや、その成果に基づく社会的還元(学会発表、放送大学授業など)を活発にできた面もあり、その意味では研究は進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本プロジェクトにおける現地調査(大半が海外におけるフィールドワーク)が本格的に可能になったのは、新型コロナウィルスの流行とその影響が収束した昨年度からであったため、当初計画の遂行にこだわりずぎず、関係者全員の安全とカウンターパートとの関係性の再構築を重視し、柔軟にあせらずに研究を進めていくという方針に変わりはない。この方針のもとで、最終年度にあたる本年度も、コロナ禍で延期されてきた海外調査を実施する。 当初調査を予定していた有機農園のなかには、いったん閉鎖し、昨年度に別地域で新しい農園として再出発する例があった。最終年度ではあるが、この事例が、大規模金鉱山跡において地域社会の再生をめざす試みであり、本プロジェクトの目的にかなうため、現地調査の対象としたい。ただし、このような近代化/産業化による「汚染」地域を対象とすることは、本プロジェクト企画時には念頭になかったため、ひとまず文献調査やこの農園の予備的な訪問から始めたい。このように一部、本プロジェクト実施期間内に「調査終了」とはなりえない事例もあるが、それはコロナ禍がもたらした変化として今後も追っていくべき対象を考える。
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