研究課題/領域番号 |
23K21811
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補助金の研究課題番号 |
21H03713 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
KHASHAN AMMAR 立命館大学, 立命館アジア・日本研究機構, 准教授 (70814888)
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研究分担者 |
黒田 賢治 国立民族学博物館, グローバル現象研究部, 助教 (00725161)
足立 真理 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 特別研究員(PD) (10848675)
五十嵐 大介 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (20508907)
長岡 慎介 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (20611198)
黒田 彩加 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (90816183)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,640千円 (直接経費: 12,800千円、間接経費: 3,840千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2021年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | イスラーム福祉制度 / ワクフ(寄進財産) / ザカート(喜捨) / 相互扶助 / イスラーム福祉 / イスラーム経済 / イスラーム金融 / ワクフ(寄進財産) / ザカート(喜捨) / イスラーム的福祉 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、伝統的なイスラーム的福祉では別々の部門と考えられてきた「ザカート(喜捨)」「ワクフ(寄進財産)」「インファーク(有意な支出)」の諸制度が近年、相互補完的な相互扶助の制度として一体的にとらえられている点に着目し、タカーフル(相互扶助)が自助・利他の複合的行動原理に基づくことを明らかにする。また、国際的な研究ネットワークを活用して、その実践例を東南アジア、南アジア、西アジアについて比較・総合的に考察する。
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研究実績の概要 |
昨年度は第3年度として、次のように研究を実施した。(1) タカーフル(相互扶助)に関する原典資料・文献の収集を続け、史料の分析やデータ解析を進めた上、これまでの資料分析で得たデータと成果を活用し、特に近年のイスラーム社会・経済的理念について考察を進めた。昨年度に適用を開始したヌズム論の方法論を深化させて、タカーフルに関わる典拠と、最近のフィンテックやデジタル化に関連するその解釈を収集し、分析を行った。現代のイスラーム的諸制度の再活性化に関しては、中東のイスラーム社会を中心に、その制度の歴史的実態とそれに対する現代的な新解釈や、現代の制度再活性化とを相関させて研究を行った。(2) 伝統と現代の融合・地域間比較については、新自由主義の理念や政策に対する中東やアジアのムスリム諸国の反応とイスラーム的相互扶助・社会福祉への影響を考察した。特に1990年代以降にこれらの国々に広がった社会的格差や経済的問題に対する学術的な批判を参考にしながら、新自由主義の理念や政策がもたらす正負の影響についても検討した。(3) 総合的考察に基づいて、理論と実証研究を統合する視点の確立を目指し、(1) (2) の成果に基づいて、イスラーム経済固有の人間観の考察を進めてきた。 または、以上の内容に関して、研究分担者と研究協力者の参画と協力を得て、国内および国際学会での成果発表を進めて、現代のワクフ(寄進財産)やザカート(喜捨)とイスラーム・フィンテックの新たな発展段階に向けた課題と展望、アラビア語と日本語の架け橋としてのイスラーム金融研究、日本の言語環境におけるイスラーム金融の研究、現代資本主義の経済状況下でのタカーフル(イスラーム的相互扶助)およびイスラーム福祉の再構築の視点などから考察を行い、そしてアジアにおけるワクフ、ザカート、タカーフルの再評価といったテーマについて議論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第3年度として、全体的に順調に進展したうえ、特に最近コロナの制約が緩和されたことで、国内および国際的な研究交流も進展した。また、国際的な研究集会において若手研究者の積極的な参加を得られ、研究分担者および協力者からの研究報告や成果発表も行われた。これらの成果を総合的に評価すると、当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、原典研究とフィールドワークを組み合わせ、歴史と現代をつなぐ方法論に基づき、理論と事例の検討、伝統と現代の結合、地域間比較、そして総合的な考察を通じて、理論と実証研究を統合する視座の確立をめざして研究を展開する。今後の研究は、以下の通りの方策で推進する予定である。 第4年目では、イスラーム経済および社会福祉に関する理論と実証研究をさらに追究する。特に、新自由主義の影響下にあるイスラーム的な相互扶助・社会福祉の実践を重点的に見て、その理念を今日的な視点から再評価する。中東とアジアのムスリム諸国を対象に、イスラームの諸制度の歴史的背景と現代的な再解釈についての考察を深化させ、新自由主義の下でのその影響を明らかにすることをめざし、これらの比較研究を通して、異なる地域のイスラーム社会における共通点と相違点の解明に努める。 最終年である5年目は、これまでの研究から得られた成果を総合的に考察しながら、理論と実証研究を統合することを目指す。イスラーム社会福祉の根底にあるタカーフル(相互扶助)を含む独自の人間観を深く掘り下げ、これまで構築した理論的枠組みと実証研究の成果を基に、イスラーム経済の理念とその現代社会での応用可能性及び課題を検討する。研究の集大成として、和文および英文の学術書を出版して、国内外の学術コミュニティへの貢献とイスラーム経済学および社会福祉学の発展に寄与するよう努める。 4年目と5年目の研究は、これまでの成果を踏まえて、イスラームの伝統的価値と現代社会のニーズを繋げることにより、ザカート(喜捨)、サダカ(寄付)、ワクフ(寄進財産)、インファーク(有意の支出)といったイスラーム社会の福祉要素を統合し、タカーフル(相互扶助)の実態を明らかにすることで、新たな学術的視野を提示し、実践的指針を提供することを目標とする。
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