研究課題/領域番号 |
23K21830
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補助金の研究課題番号 |
21H03742 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80040:量子ビーム科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
塚田 和明 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究専門官 (30343916)
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研究分担者 |
伊藤 正俊 東北大学, 先端量子ビーム科学研究センター, 教授 (30400435)
橋本 和幸 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究所 研究炉加速器技術部, 嘱託 (80414530)
金 政浩 九州大学, 総合理工学研究院, 准教授 (80450310)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2021年度: 8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
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キーワード | 医療用RI合成 / 加速器中性子 / 生成量評価 / 副生成物評価 / 計算シミュレーション / 医療用放射性同位元素 / 副生成物 / 合成量評価 / 中性子発生量評価 / 標的物質検討 / 最適照射条件検討 / 新規医療用RI / 高速中性子 |
研究開始時の研究の概要 |
核医学用放射性同位元素(RI)は、患者の生活の質を保持しつつ高感度の診断(癌、脳神経疾患、心疾患等)及び治療が可能であり、世界中で重用されている。特に最近は、RI 内用療法にも注目が集まり、今後の期待も大きい。しかし、これらはほぼ全量が輸入である事に加え、半世紀の間、新たな合成手法の提案と実践がない。我々は、これまで利用されてこなかった、加速器で得られる高速中性子に着目し、その合成及び分離精製、標識化、マウス集積実験などを進めてきた。本研究では、既存のRIの大量合成に向けた基礎研究と共に、利用が期待されているが必要量を合成できていない新たな医療用RIの合成と利用可能性について検討・提案する。
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研究実績の概要 |
将来のがん治療に応用が期待されているCu-67について、加速器中性子を利用した大量合成を目指して、東北大学サイクロトロン施設において電流量100μAを目指し、大電流を発生可能な重陽子用イオン源から標的周辺の自動化、更に化学分離装置の改良など、様々な検討を進めている。特に、本研究では、大電流の重陽子を効果的に利用出来かつ実験者の被ばくを低減するために必要な、試料を遠隔で照射し、照射後は照射位置からコンクリート遮へい外まで自動的に搬送するための自動試料交換装置と共に、水冷式回転炭素標的の設置、高強度ビームラインと高強度ビームライン付属装置などの開発を進めた。特に、ビームライン付属装置としては、新たに大電流の重陽子ビームを照射位置までなく的確に輸送するため上下左右のビーム位置を確認可能な水冷式4分割スリットの導入を行った。これらの開発・改良の結果、実際に約電流量約50μAで40MeVの重陽子ビームを、約50gの天然Zn試料に照射し、数十MBqのCu-67の合成にすることに成功した。また、今後、サイクロトロンのビーム量が更に増強されれば、300μA程度の大強度ビームにも対応可能であることが、シミュレーション結果から明らかとなった。同じく将来性が期待されるSc-46については、高価な濃縮ターゲットの利用が必要であるという昨年度の研究結果から、照射試料をTiからCaへ変更するため、試験的な照射による副生成物の生成量評価を開始した。その結果、特に患者の体内残留の影響が危惧される半減期84日のSc-46の生成の影響は、Tiターゲットと比較して生成量の比が1/10以下になることが分かったが、同時に目的とするSc-47生成量そのものもが減少することも確認された。化学分離手法の開発を含め、引き続き更なる検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
合成研究においては、将来の医療用RIとして期待されているCu-67について、新たな照射環境の構築によって、実際に約電流量約50μAで40MeVの重陽子ビームの利用が可能になり、上述したように数十MBqのCu-67の合成にすることに成功した。この生成量は現在でも国内では最大級である。また、シミュレーション結果から、本照射装置は300μA程度の大強度ビームにも対応可能であることが明らかとなり、引き続き進めている加速器本体の大電流化に関する改良が進めば、照射環境の自動化による実験者の被ばく低減、実験の効果的実施など、スムーズな研究遂行が可能であり、Cu-67の更なる増量が見込まれる。また、生成したCu-67の大量の標的試料からの化学分離に関しても、標識試験やマウス等への投与などを目指した改良を進めている。Sc-47については、副生成物で有り、化学分離では除けない、半減期84日のSc-46の生成の影響について、PHITSコードによるシミュレーション計算なども考慮しての検討を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、Cu-67について新たな照射環境を利用して、大電流の重陽子ビームの利用を進め、濃縮ターゲットの利用を考慮した、化学分離装置の構築を視野に入れた研究を進める。Sc-47については、副生成物のSc-46の生成について、標的物質を更に変更可能かも含めたPHITSコードによるシミュレーション計算などを進める。また、先行研究で対象としてきたMo-99及びY-90などの医療用RIについても、15~30MeV陽子及び重陽子照射の際の生成に関わる励起関数測定など、患者の体内残留の影響が危惧される半減期が数か月の副生成物の生成量評価を中心に実施する。また、上記の医療用RIに加えて、更に核医学利用が期待されているが実際に必要量を合成できていないRIを中心に合成実験を行う。この時、15~30MeVの重陽子・陽子照射はタンデム加速器を、30MeV以上の重陽子・陽子照射については東北大CYRIC施設を利用する。また、ポリエチレン遮へい実施の際に発生する熱中性子利用について引き続き検討を進める。特に、ポリエチレン遮へいの効果的な配置についてPHITSコード等によって、熱中性子の発生状況のシミュレーションを行い実験データと比較検討する。今後、この熱中性子を利用した医療用RI生成について基礎研究を開始し、Lu-166あるいはTb-161など実用に繋げるようデータの蓄積を行う。
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