研究課題/領域番号 |
23K21833
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補助金の研究課題番号 |
21H03748 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80040:量子ビーム科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
前川 雅樹 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子技術基盤研究所 先進ビーム利用施設部, 上席研究員 (10354945)
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研究分担者 |
河裾 厚男 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子技術基盤研究所 先進ビーム利用施設部, 上席研究員 (20354946)
宮下 敦巳 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 放射線高度利用施設部, 主幹研究員 (00354944)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 12,740千円 (直接経費: 9,800千円、間接経費: 2,940千円)
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キーワード | 中性化高速ポジトロニウム / スピン偏極陽電子ビーム / 最表面電子 / スピン偏極電子バンド状態 / スピントロニクス / 高速中性化ポジトロニウム / スピン偏極低速陽電子ビーム / スピン偏極電子バンド構造 / エネルギー・角度分解測定 / ディレイライン型二次元検出器 / スピントロニクス材料評価 / スピン偏極 / 陽電子ビーム / 中性化高速ポジトロニウム分光 |
研究開始時の研究の概要 |
スピン偏極陽電子ビーム技術と新開発の二次元検出技術を融合し、従来不可能であった表面ポジトロニウムのスピン・放出エネルギー・放出角度の多重分解測定を実現することで、「真の物質最表面」といえる、物質が真空に遷移していく低電子密度領域のみに存在する電子の「スピン偏極率」を「バンド構造」「バンド分散」ごとに測定できる画期的な「中性化高速ポジトロニウム分光法」を開発し、新たな物質最表面研究領域の開拓を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、物質最表面に存在する電子だけを選択的に捉え、そのスピン状態をバンドごとに分解できる新しい物性評価手法「中性化高速ポジトロニウム分光装置」の開発に挑み、中性化高速ポジトロニウム形成理論の実験的検証を試みる。 陽電子を100 eV程度のエネルギーで金属表面に照射すると、表面原子との弾性散乱時に表面電子を引き連れ、入射陽電子と同程度のエネルギーを持つ中性化高速ポジトロニウムが生成すると考えられており、分光利用できれば高い表面敏感性を持つ解析手法が実現できると期待されるが、高速ポジトロニウムのエネルギーに対応した有効な検出手法は存在しなかった。本研究では、研究代表らが有している陽電子回折実験用二次元位置敏感型検出器技術の感度特性が高速ポジトロニウム検出に適することを利用し、課題解決を試みるものである。 まず二次元位置敏感型検出器の設置方法の詳細検討を実施した。ポジトロニウムの散乱測定には前方散乱と後方散乱の2種類がある。後方散乱測定は試料に正対して穴あき検出器を設置し、陽電子ビームを貫通孔より入射させるものである。この場合、得られる散乱イメージは軸対称となり解析が容易であるが、散乱角0度付近の波数成分(バンド図のΓ点に対応する)が入射孔から抜けるという問題がある。一方、前方散乱では試料の先に検出器を設置するため、得られるイメージが扇形に変形してしまうが、波数成分の抜けはなく、また散乱断面積も大きく検出が容易と予想される。本研究では強度の弱いスピン偏極陽電子ビームを利用するため、より散乱強度の高い前方散乱型が適すると判断した。2021~2022年度にかけて検出器の選定と必要部品の調達を行った。また2022年度には検出器試験のためのテスト陽電子ビーム装置の組み立てを行った。2023~2024年度にかけて検出器の組み立て、動作確認を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度に行った検出器の検討に基づき、対応する形状の位置敏感型二次元検出器を調達した。現在、これを組み込むための測定チャンバーの設計を進めている。購入した検出器は前方散乱ポジトロニウムに対応した平板型のものを購入したが、当初の計画では後方散乱ポジトロニウムの検出に適した貫通有孔型を調達する予定であった。これは散乱断面積の評価および測定可能角度(波数領域)を詳細に検証した結果、前方散乱型のほうがより有利であると結論付けたためである。しかし、構成機材のすべてを同軸上に配置できる後方散乱型に比べ、前方散乱型では試料部で屈曲してしまうため、装置構成が複雑になってしまった。このため検出器を納める測定チャンバーの検討および設計に時間を要している。2022年度には検出器からの信号を真空チャンバー外に取り出す接続部分の調達も行い、主要部品の調達はほぼ完了した。2023年度にはこれらをすべて組み合わせ、検出器の動作確認を行う予定であった。しかしながら回路の複雑さゆえ構築に時間がかかっており、2023年度中の完了には至らなかった。 実験に用いる予定のスピン偏極陽電子ビーム装置は、別の実験にも利用しているため時間的な成約があり、検出器の組み込のたびに大規模な改造を行うことも難しい。そこで2022年度に本研究専用のテスト陽電子ビーム装置を構築した。ビーム強度は低いものの、検出器の動作確認には利用できると思われたが、やはり有効なシグナルを得ることは難しい事がわかった。一方で、別のスピン偏極率陽電子ビーム装置をメンテナンスすることになり、本実験にも使用できるよう改造を検討することになった。2024年度は検出器の組み立てを完了し、ビーム実験を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き中性化高速ポジトロニウム分光法装置の構築を進める。研究代表らがこれまで開発してきたスピン偏極陽電子ビーム装置に、新たに開発した二次元位置敏感検出器を組み込むことでこれを行う。 本装置は2021~2022年度に検出器の調達、ビームライン設計を行い、2023年度以降に高速ポジトロニウム分光の検証、さらには各種表面状態解析に取り掛かる予定であった。検出器の調達は予定通り実施できたが、前述の通り装置構成が予定より複雑になってしまったため測定チャンバーの設計に時間を要している。検出器は到達した粒子の電流を増大させるマイクロチャンネルプレート、粒子位置を二次元情報として取り出すためのワイヤー電極、及び信号処理システムから構成されている。必要な部品の調達はほぼ終了しており、実際に組み立てを始めているが、完了には至っていないため、精力的に進める。 実験に使用するスピン偏極陽電子ビーム装置にも改良を加え、本実験と別実験を併用できる形にする計画である。Na-22線源と静電偏向器を用いて発生させた横スピン偏極陽電子ビームを輝度増強と収束静電レンズにより100 eV程度の収束陽電子ビームに形成し、試料表面で形成された高速ポジトロニウムを二次元検出器で検出し、放出角度分布(θ,Φ)を得る予定である。今後は装置開発を進め、まずは検出器の動作検証、その後に放出ポジトロニウム角度分解測定に取り組む予定である。
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