研究課題/領域番号 |
23K21850
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補助金の研究課題番号 |
21H03786 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90030:認知科学関連
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研究機関 | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
研究代表者 |
和田 真 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 脳機能系障害研究部, 研究室長 (20407331)
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研究分担者 |
篠田 陽 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (80403096)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
12,220千円 (直接経費: 9,400千円、間接経費: 2,820千円)
2024年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2021年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 身体意識 / 身体所有感 / 行為主体感 / 自閉スペクトラム症 / マウス / 身体性 / 多感覚統合 / 自閉症モデル動物 |
研究開始時の研究の概要 |
身体所有感と行為主体感から構成される身体意識についてマウスとヒトを対象に調査し、発達障害における特徴とその基盤を明らかにする。これまでの研究では、自閉スペクトラム症(ASD)のモデルマウスでは、ASD者同様に身体所有感の錯覚の障害がみられることがわかってきた。一方、行為主体感について、ASDでの障害は不明な点が多いため、マウスでの実験系の構築を試みる。その上で、マウスとヒトを対象に、身体所有感だけでなく行為主体感を評価し、身体意識の基盤と障害を明らかにする。
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研究実績の概要 |
身体所有感と行為主体感から構成される身体意識について、発達障害における特徴とその基盤を明らかにする計画である。 行為主体感を評価するための実験系について、令和3年度には、先行研究のレビューを行い、マウスでは行為主体感を評価するための実験系は未だ確立されていないことを確認した上で、時間知覚課題を応用した課題を設計した。タスクに合わせたオペラントチャンバーを発注し、実験プログラムの作成と予備実験を行った。令和4年度には研究代表者の通勤時の骨折に伴う療養のため、4ヶ月間に渡り実験が中断したものの、令和5年2月から予備実験を再開し、令和5年度前半に集中的に試行錯誤を行うことで、課題を開発することができた。年度後半に野生型マウスを対象とした行動実験を行った結果、ヒトと同様に、行為(レバー押し)に伴う時間感覚の圧縮がマウスでも生じることを見出した。年度末には研究分担者が作成した自閉症モデルマウスを搬入し、行動実験を開始した。 一方、令和3年度に自閉スペクトラム症モデルマウスShank3-KOマウスでも身体所有感の錯覚の障害が生じていることが示唆されたため、令和4年度には、神経活動に依存して発現するc-Fosに対する免疫染色を実施した。令和5年度には、免疫染色された切片の解析に取り組んだ。さらに別の系統のASDモデルマウスCaps2-KOマウスでは、身体所有感の錯覚減弱に後部頭頂皮質が関わることが示唆されたため(Wada et al., 2021 Front Behav Neurosci)、本系統でも同領域に注目した解析を進めている。さらに神経細胞の分布自体にも違いがある可能性を想定して神経細胞のマーカーNeuNに対する免疫染色も行い、鋭意解析を進めている。 以上のように、本研究では、発達障害のなかでもASDに着目して、その身体知覚の障害の背景を明らかにするための研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
身体意識のうち、これまでの研究によりASDモデルマウスの一種であるCaps2 KOマウスでは、身体所有感の錯覚(ラバーテイル応答)が生じにくいことを見出していた。このときのc-Fos発現を解析した結果、当該マウスでは、感覚統合に関わる後部頭頂皮質の活動低下が見られることを見出し、論文発表した。さらに別系統のASDモデルマウスShank3-KOマウスにおいても、ラバーテイル応答が生じにくいことを見出したため、c-Fos発現の解析を進めている。一方、行為主体感の評価については、専門家との議論を通じて、新たにタスクを設計し、開発できた。野生型のマウスでは、ヒトと同様に行為に伴う時間知覚の圧縮が観察できたため、ASDモデルマウスの実験を開始したところである。療養の影響から実験の中断を経験したため、全体としてやや遅れているが、令和5年度の研究を通じて、概ね挽回することができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
身体意識の問題のうち、行為主体感については、マウスにおける評価系が開発できたため、発達障害モデルマウスでの実験・評価を進める。昨年度開始したCaps2 KOマウスを対象に実験・評価を本格的に行い、障害部位の検討に入る。一方、身体所有感の評価については、免疫染色の解析を進めて、c-fosにより活動部位、NeuNにより神経細胞の分布を評価する。その上で結果をとりまとめて成果発表を目指す。これまでの研究から、後部頭頂皮質の感覚統合の問題が示唆されているため、薬理学的な実験操作等についても検討を進める。
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