研究課題/領域番号 |
23K21856
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補助金の研究課題番号 |
21H03826 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90120:生体材料学関連
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
山下 親正 東京理科大学, 薬学部生命創薬科学科, 教授 (30622188)
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研究分担者 |
秋田 智后 東京理科大学, 薬学部生命創薬科学科, 講師 (60801157)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | 慢性閉塞性肺疾患(COPD) / 活性型ビタミンD3 / 核移行DDS / 肺胞再生 / 吸入システム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題では、COPDの根治治療薬の開発を目指して、「VD3封入機能性ナノ粒子(LNP)の経肺投与により、VD3の作用点の核内へ効率よく送達させることで、肺胞修復効果を維持しつつ、高カルシウム血症の副作用を軽減し、肺内での炎症抑制で全身性炎症疾患も抑えることができる」という仮説を検証し、臨床応用できるVD3封入LNPの吸入粉末システムの構築を目的に検討を行った。その結果、マウスに経肺投与されたVD3封入VD3封入LNPは、Free体VD3の1/100の投与量で肺胞を修復することを見出すと共に、臨床用量を満たす吸入粉末剤の開発に成功した。本年度は、主にVD3による肺胞修復機構の解明を目的に検討を行う。
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研究実績の概要 |
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、肺自体の炎症が全身へ波及し、栄養障害、骨格筋機能障害などの併存症が生じる全身性炎症疾患で、世界の死亡原因第3位の疾患にも関わらず、破壊された肺胞を再生する根治治療薬が存在しない。 申請者らは、活性型ビタミンD3(VD3)の経肺投与による肺胞修復効果を世界に先駆けて見出している。しかし、VD3は経肺投与の連投により高カルシウム血症を生じることも明らかにしている。 そこで申請者は、「VD3含有機能性ナノ粒子の経肺投与により、VD3の作用点の核内へ効率よく送達させることで、肺胞修復効果を維持しつつ、高カルシウム血症の副作用を軽減し、肺内での炎症抑制で全身性炎症疾患も抑えることができる」という仮説を立てた。 本研究では、この仮説を検証し、臨床応用できるVD3含有ナノ粒子の吸入剤化を行うことを目的に、本年度は以下の検討を行った。VD3封入細胞内環境応答脂質ナノ粒子(LNP)の有用性を検討した結果、VD3をLNPに封入することで、Free体VD3の10分の1の曝露濃度で未分化細胞における分化誘導効果を示した。 また、VD3封入LNPのマウスへの経肺投与では、Free体VD3の100分の1の投与量で肺胞を修復することが示された。さらに、VD3封入LNPの吸入粉末剤化に関する検討において、実験計画法による製剤作製と、遺伝的アルゴリズムを用いた最適処方の選択により、臨床用量を満たす吸入粉末剤の開発に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、VD3封入細胞内環境応答脂質ナノ粒子(LNP)の細胞内動態の解明と核内送達戦略の検証を行うと共に、吸入粉末剤として、申請者が開発した凍結乾燥吸入システム(LDPI)を用い、吸入粉末剤の開発に関する検討を進めた。VD3をLNPに封入することで、Free体VD3の10分の1の曝露濃度で未分化細胞における分化誘導効果が得られた。VD3封入LNPのマウスへの経肺投与では、Free体VD3の100分の1の投与量で肺胞を修復することが明らかとなった。 また、吸入粉末剤の開発に関する検討では、フェニルアラニン(Phe)とロイシン(Leu)を添加剤とし、最適な添加剤量を決定するために、中心複合計画を適用した製剤処方に基づいて吸入粉末剤を作製した。作製した製剤について、肺送達率、外観、放出性の評価を行い、応答曲面を作成して添加剤量と吸入性能の関係を分析したところ、肺送達率及び放出性と製剤外観の間にトレードオフの関係が認められることが示された。 そこで、遺伝的アルゴリズムを用いることでPhe及びLeuの最適な添加剤量が算出され、最適な製剤が作製できた。得られた製剤について吸入特性試験を行った結果、外観良好かつ、肺送達率が48%、放出率が82%となる肺送達効率の高い製剤が得られ、臨床用量を満たす吸入粉末剤化に成功した。 これらの知見は、本研究の目標である革新的な核内送達戦略を用いた活性型ビタミンD3によるCOPD根治治療の開発に着実に貢献していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、昨年度に引き続き、VD3封入細胞内環境応答脂質ナノ粒子(LNP)の吸入粉末剤に関する検討を行うと共に、VD3の肺胞修復機構を解明するため、以下に示すCOPDモデルマウスにおける肺胞修復に関わるシグナル経路の同定を行う。 1.VD3投与群及び対照群の肺組織についてマイクロアレイ解析を行う。 2.1で見出した分化誘導及び肺胞修復関連遺伝子についてリアルタイムPCR法により確証を得る。 3.2で同定した遺伝子に関連するシグナル経路について下流転写領域の活性化をウエスタンブロット法により評価する。 4.肺組織切片中の該当タンパク質の発現を免疫組織化学染色により評価し、肺胞修復関連因子の局在を明らかにする。
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