研究課題
基盤研究(B)
ダイヤモンドの窒素-空孔(NV)センターは、周囲の物理的・化学的環境を探知できる量子センサーである。本研究では、ナノメートルサイズのダイヤモンド(ND)に対し、電子線加速機を使ってNVセンターを多数造り込むことと、生体適合性高分子で表面修飾し、ステルス性を付与する方法論の開発を行う。これによって、細胞や体の中で執り行われている化学反応を計測することを可能とする生体ナノ量子センサーシステムを創出することを目的とする。
細胞や体の中の局所でおこっている化学反応を捉えることができれば、生命科学の発展に資するのみならず、その知見を創薬と医療に展開し、健康社会を充実させることにもつながる。ナノダイヤモンド(ND)に存在する「窒素-空孔(NV)センター」は、それを可能にするポテンシャルな素材として注目されている。しかしながら、ND中のNVセンターは極少量しか含まれていないこと、ならびに生体環境中において粒子間ならびに生体物質間で凝集してしまうことが応用の妨げとなっている。本研究では、電子線加速機を使ってND中にNVセンターを人工的に多数造り込むこと、ならびに高分子化学技術によって生体適合性高分子であるポリエチレングリコール(PEG)を修飾して凝集を抑制することを行い、応用への壁を乗り越えることを目的としている。初年度は、生体計測応用に最も汎用的と考えられる粒径50nmのNDに対して、NVセンター増設とPEG修飾法の基礎検討を進めた。22年度は、各種条件検討を進め、NV-由来の蛍光強度が増大したNDを得た。NDのPEG修飾法については、各種分光法、表面電位測定、酸塩基滴定、熱重量測定、比表面積測定を用いて反応の進行を定量的に解析しつつ、修飾するPEGの分子量を2k - 40kに拡張した。その際、分子量の異なるPEG修飾の効果を定量するために、隣接PEG鎖との重なり合い度をパラメータとして定義し、反応条件およびアルブミンをモデルとしてタンパク質吸着抑制効果を検証した。これにより、PEG分子量、重なり合い度、タンパク質吸着抑制効果の相互相関を明らかにした。23年度は、タンパク質吸着抑制効果の優れたPEG化ナノダイヤモンドの体内動態検証に進んだ。PEG化していないものは投与後肺に大部分が集積するのに対し、PEG化したものはそれが大幅に減少することが示され、生体応用に向けたPEG化の効果が実証された。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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