研究課題/領域番号 |
23K21882
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補助金の研究課題番号 |
22H00610 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01040:思想史関連
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研究機関 | 聖学院大学 |
研究代表者 |
村瀬 天出夫 聖学院大学, 人文学部, 准教授 (40768503)
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研究分担者 |
伊藤 博明 専修大学, 文学部, 教授 (70184679)
小野 純一 自治医科大学, 医学部, 講師 (20847090)
中西 悠喜 自治医科大学, 医学部, 客員研究員 (30896329)
平井 浩 自治医科大学, 医学部, 客員研究員 (70897678)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
2023年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2022年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
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キーワード | イスラム / 西欧 / 中世 / 近世 / 魔術 / 占星術 / 自然哲学 / 宇宙論 / ヘルメス主義 |
研究開始時の研究の概要 |
イスラム圏および西欧圏という地中海の東西二大文化圏における双方向的な魔術思想の交流を扱う。魔術は「自然の操作」という観念のもとに、近代以前の「知の歴史」に多大な寄与をなし、実験科学の興隆や人間観・自然観の形成に影響を与えた。その背景には中世・近世にかけて両文化圏をまたぐ魔術思想の交流があった。対立的(「イスラム対キリスト教」)と捉えられがちな両者の関係を、相互依存的・相互発展的な知の往来という観点から包括的に明らかにする。そのために、分断されている現在の研究潮流の統合を試みるとともに、当時の「魔術的知」の伝統と「自然の操作」の観念が現代へ連なる「近代世界」を準備した重要な要因であることを示す。
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研究実績の概要 |
前年度の成果にもとづき、今年度は参加者それぞれがさらに研究を進めた。村瀬は近世ドイツ語圏の医化学と終末論の関係について、研究を進め口頭報告を行った。伊藤はルネサンス期イタリアの人文主義や美術・建築にかんして、一連の論文を出版した。平井はルネサンス期イタリアの自然哲学と近世ドイツ語圏の医化学にかんする研究をおこない、論文・口頭報告として発表した。小野は井筒俊彦の作品読解をつうじて、イスラム神秘思想の背景にある形而上学的な思惟の動態に光をあて、単著としてまとめた。中西はイスラム圏の宇宙論と神秘思想にかんする研究を進め、論文・口頭報告として発表した。アムステルダム大学の研究協力者Liana Saifは、アラビア魔術書『賢者の目的』の批判的校訂・英訳の作成作業を最終段階まで進めた。以上の成果とアラビア占星術・星辰魔術の関連は、研究会をつうじて検証した。また9月15日には慶應義塾大学にてSaifの公開講演会 “Understanding Islamic Esotericism” を実施した。翌16日には早稲田大学にて国際ワークショップを実施し、小野とセイフが研究発表を行い、イスラム圏の魔術史において神秘的文字論とユダヤ教魔術が果たした役割を確認した。年度末の3月23日にはシカゴで開催された米国ルネサンス学会にて、C. Burnett、S. Ortega、Joel Kleinらの研究協力者3名を招へいして、中世イスラム圏の魔術思想、近世西欧圏の医学的な魔術・錬金術思想にかかわるパネルセッション2件を実施した。なお、アウトリーチ活動の一環として2023年7月29日には、モンゴル期の東方イスラム圏を扱った歴史漫画『天幕のジャードゥーガル』の作者トマトスープ氏に依頼し、 公開オンライン講座を実施した。これにより、魔術史研究がサブカルチャーの創作といかに協働できるかについても、知見を深めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各人の研究が進展し、各々の領域と魔術史の関係性が明らかになってきた。特に平井と中西は共同研究により、スンナ派イスラム神学の宇宙論と魔術理論がルネサンス期のプラトン主義における同趣旨の議論と際立った類似性を示すことを確認した。これは先行研究で指摘されていない点であり、次年度も慎重に検討を進める予定である。その他の事業計画(海外研究者の招聘と代表者・分担者の海外出張)にかんしても、滞りなく実施できた。次年度に開催する国際会議も、順調に準備できている。ただし日本円のさらなる下落のため、会議の規模は計画より縮小を余儀なくされた。以上から「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
二年間の研究蓄積にもとづき、参加者が各人の研究をさらに発展させる。次年度は最終年度にあたるため、調査結果のアウトプットに集中する。秋には京都大学人文科学研究所にて、国内外の研究協力者を招へいする国際会議を実施する。同時にこの国際会議にかかわる英文プロスィーディングス出版の準備を滞りなく進め、活動の集大成として、イスラム圏と西欧における魔術史の実態を暫定的に示す。また今後の研究の方向性にかんしても議論を深める。
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