研究課題/領域番号 |
23K21887
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補助金の研究課題番号 |
22H00615 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01050:美学および芸術論関連
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
貫 成人 専修大学, 文学部, 教授 (80208272)
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研究分担者 |
岡見 さえ 共立女子大学, 文芸学部, 准教授 (10574006)
副島 博彦 立教大学, 名誉教授, 名誉教授 (30154694)
北村 明子 信州大学, 学術研究院人文科学系, 教授 (40334875)
荒谷 大輔 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (40406749)
山田 小夜歌 京都精華大学, 国際文化学部, 講師 (40825204)
尼ケ崎 彬 学習院女子大学, その他部局等, 名誉教授 (70143344)
譲原 晶子 千葉商科大学, 政策情報学部, 教授 (80283224)
石渕 聡 大東文化大学, 文学部, 教授 (80308155)
横山 太郎 立教大学, 現代心理学部, 教授 (90345075)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
14,690千円 (直接経費: 11,300千円、間接経費: 3,390千円)
2024年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2022年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
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キーワード | コンテンポラリーダンス / 文化政策 / 政治性 / 芸術制度 / 民俗舞踊 / 政治 / 制度 / 西洋中心主義 / 近代舞踊史 / 人類史 / 世界哲学史 / 舞踊 / 伝統芸能 / アジア |
研究開始時の研究の概要 |
20世紀末、日欧で同時多発的に生まれた「コンテンポラリーダンス」は、共通の創始者や地理的中心、美学や方法がなく。その点、バレエやモダンダンス、能、舞踏など他の舞踊とは異なっている。本研究では、コンテンポラリーダンスがなぜ、そのような特色を持つのかを解明するため、その誕生メカニズムを明らかにする。そのうえでは、コンテンポラリーダンス誕生の「政治的背景」を解明することが有効であり、また、比較のためにそれ以外の舞踊や日欧以外の伝統芸能などを取り上げる。その結果、コンテンポラリーダンスを、従来の伝統的な欧米中心舞踊史より広範な、人類史に位置づけ、将来の「ワールドダンス」に資することが予見される。
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研究実績の概要 |
1990年代、日欧米各地に同時多発し、2000年代には世界各地に拡散した「コンテンポラリーダンス」は、起源や統一性の不在など、バレエやモダンダンスなどの近代舞踊、また、日本舞踊や舞踏とは異なる特異な存在性格を持つ。このようなコンテンポラリーダンスが生まれた構造的力学を探るため、その成立、存続における文化政策や政治・経済・社会・制度基盤を解明するのが本研究の目的である。 そのため、本研究においては、第一に、コンテンポラリーダンスが比較的はやく生まれた独仏、日本における、助成や法制度の概要とその根底にある政治経済社会制度的力学を当時の資料やインタビューをもとに明らかにする。 第二に、コンテンポラリーダンスの特異性を「特異性」として理解するには、それ以外の舞踊や上演芸術、芸能の成立・存続過程との比較が必須である。本研究では、能や説経節、日本舞踊などの日本伝統芸能、バレエやモダンダンスなどの近代西洋舞踊、また、日欧米以外の地域における上演芸術や民俗・民間芸能について、その実態や存立基盤を調査し、現在のコンテンポラリーダンスとの比較をおこなう。 第三に、こうして得られた諸知見や調査結果を綜合し、(1)90年代に「コンテンポラリーダンス」が生まれた根底にあった、「各地域固有の」「多様な」政治的状況を明らかにし、(2)その一方で、従来、近代西洋舞踊史もしくはそれをモデルに構築された日本舞踊史のなかに位置づけられ、近代舞踊へのアンチテーゼとされていたコンテンポラリーダンスを、ユーラシア大陸などにひろがる民俗舞踊や口承芸能などとの文脈に位置づけることが可能となる。それは同時に、西洋中心主義的な現状の舞踊研究や舞踊史の解体に通じる、いわば舞踊に関する人類史的転回とよぶことができる。(3)人類史的転回は、さらに、現在、ドイツなどで進行中の「世界哲学史」の構想とも相通じ、補完し合う可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
コンテンポラリーダンスの特異な成立基盤を解明するうえで、以下のような進捗があった。 (1)コンテンポラリーダンス成立に際して、各地固有の政治性があったことが代表者貫、分担者副島と岡見、協力者寿田の調査により明らかになりつつある。一方、コンテンポラリーダンスは、ただ一度の政治的決断で生まれたのではなく、長期にわたる異文化同士の混淆によって準備されたことが分担者横山により示された。 (2)他ジャンル・地域の舞踊などに関しては、分担者山田が創生期のバレエ作品の民間芸能からの創出過程、また、協力者兵藤、横山、飯田が、説経節や能、日本舞踊生成構造に関して、分担者尼ヶ崎、譲原が、現代演劇における、コンテンポラリーダンスに類似の事情を、分担者北村と石渕は、舞踊の振付実践を介して、フィリピンやフランスなどにおける事情を明らかにした。 さらに、代表者貫、分担者副島、協力者兵藤は、欧米とも日本とも異なる文化を持つウズベキスタン共和国で広範な調査をおこない、同国立科学アカデミー歴史部門リーダーのアドハム・アシロフ教授などとの討議を経て、(a)日欧とは異なる近代芸術助成制度と「コンテンポラリーダンス」、(b)ソ連やイスラーム以前から存在するとされる舞踊や音楽、芸能が民族アイデンティティや日常生活、人生において果たす機能、(c)楽器や神話の「国境を越えた」分布、(d)その逆のベクトルをもつ、他国や他地域に対する固有化圧力、(d)演者間の伝承、また、即興をめぐる演者同士、観者とのダイナミズム、などについて多大な知見を得た。 (3)理論構築に関しては、ドイツのMathias Quabbe、Rolf Elberfeldとの討論により大きな進展があり、また、分担者荒谷が「贈与経済」、横山が能について、貫がコンテンポラリーダンスの美学と制度について論文単著を上梓するなど、各メンバーがその完成に向けて準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は本研究最終年度であり、以下のように研究を推進、完成する。 (1)各地固有の政治構造について、代表者貫、分担者副島、岡見、協力者寿田らが、日本や独仏において一次資料収集、現地ジャーナリストや政治家への聞き取りをおこない、これまで表明されなかった政治状況や決断を明らかにする。 (2)他ジャンル・他地域の舞踊などに関しては、分担者山田が初期バレエ作品の成立や、当時の「劇場法」などの制度や運営との関係を明らかにする。また、協力者兵藤、横山、飯田が、説経節や能、日本舞踊生成構造に関して、分担者尼ヶ崎、譲原、石渕が現代演劇やコンテンポラリーダンスについて、分担者北村と石渕はダンサー、振付家として、舞踊振付実践を介して、フィリピンやフランスなどにおける事情を引き続き調査する。欧米や日本とは異なる地域に関してウズベキスタンもしくはカザフスタンの調査も継続する。 (3)過去二年間とあわせた調査結果や知見をふまえたうえで、代表者貫や分担者尼ヶ崎、荒谷、協力者兵藤などを中心に、(a)各地のコンテンポラリーダンスが登場した根底にある政治的状況と政策意図を解明し、(b)中世から近世日本における諸芸能、中央アジアなどにおける歌舞の生活や人生における機能、また、即興をはじめとする諸技能の分析から、従来の「古典舞踊(宮廷舞踊)/近代舞踊/コンテンポラリーダンス」という歴史モデルAを、「ユーラシア大陸にひろがる民間舞踊・芸能やヨーロッパ農民舞踊/近代化/コンテンポラリーダンス」という新たなモデルBによってとらえなおし、舞踊研究や舞踊史をヨーロッパ中心主義から解放することが見込まれる。(c)さらに、現在、ヒルデスハイム大学ロルフ・エルバーフェルト教授を中心に推進されている「世界哲学史」の文脈に、上記モデルBを連接することが可能となる。 (4)各人の調査、研究成果を論文にまとめ、報告書を公表する。
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