研究課題/領域番号 |
23K21906
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補助金の研究課題番号 |
22H00634 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01080:科学社会学および科学技術史関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
廣野 喜幸 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (90302819)
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研究分担者 |
定松 淳 東京大学, 教養学部, 特任准教授 (00723876)
大黒 岳彦 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 専任教授 (30369441)
轟 孝夫 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 人文社会科学群, 教授 (30545794)
梶谷 真司 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (50365920)
斎藤 光 京都精華大学, マンガ学部, 教授 (80211259)
小松 美彦 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (90266239)
内田 麻理香 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任准教授 (80512110)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2025年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2024年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
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キーワード | 科学コミュニケーション / 市民参加 / 双方向モデル / 欠如モデル / 科学論の第三の波 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は科学コミュニケーションに携わってきた研究者とこれまで科学コミュニケーションに携わることの少なかった隣接研究者が合同で研究を行うことで、これまでの科学コミュニケーションにおいて主流であった専門家から市民へ一方向に情報を提供する欠如モデルに基づく科学コミュニーションの実践を越え、専門家と一般市民が双方向でコミュニケーションを行う科学コミュニケーションの実践に向けた理論的課題を検討することを目標とするものである。
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研究実績の概要 |
本年度の研究グループの研究は、日本最大の科学技術コミュニケーションイベントである「サイエンス・アゴラ」への参加を中心に行われた。「サイエンス・アゴラ」では、各分野の専門家によって一般市民や他の専門分野の専門家に向けて、自らの専門分野の研究がどのように進展しているのかについて、積極的なコミュニケーションが行われる。そうした場への参加を通じて理解された科学技術コミュニケーションの在り方に関しては、専門家のコミュニケーションの具体的な特徴として、科学コミュニケーターや専門家は各専門分野の境界を強く意識しながら、自己の専門の内部の知識でコミュニケーションを行おうとすることや、たとえ話などを含めて自らの分野の専門用語を他の分野の人々に向けて分かりやすくややかみ砕いた形で伝えようとすることなどが挙げられる。そうした専門家の特徴は科学技術コミュニケーションにおいて専門性に閉じた側面を持つコミュニケーションを実施することで自らの分野の知識に責任を持つことになるという肯定面があると同時に、各専門分野の間のコミュニケーションを活発にすることで、一般市民等が関心を抱いている社会問題の解決に必要な各専門分野の垣根を越えた学際的な連携を阻む恐れもあることが想定された。このような形で、「サイエンス・アゴラ」における科学技術コミュニケーションは一般市民の参加という肯定的な側面があるものの、専門家からの一方向的なコミュニケーションの側面が未だ強い面があり、全く行われていないとは言えないが、一般市民も含めた科学が社会の役に立つ問題の解決をめぐっても積極的にコミュニケーションを行う双方向的なコミュニケーションがより多く行われていくことの必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、これまでの研究において、研究グループ①科学コミュニケーター分析と研究グループ③専門家アクター分析の研究対象である、とりわけ専門家による科学技術コミュニケーションがどのようなものであるか、その特徴を理解することができた。それは専門家の自律性という意味で、各専門分野に閉じたコミュニケーションが主体となっているという点にある。そうした面には肯定的な側面も存在するが、そのような研究成果から析出された問題点をどのように克服していくかに関する研究を科学コミュニケーター分析のグループ、専門家アクター分析のグループの担当者が行っていく予定である。さらに今後の課題としては、研究グループ②の国家アクター分析を推進し、科学技術政策に関連して、政治家や行政官といった政策関係者がどのように科学技術に関するコミュニケーションを行うのかについて政策文書や記者会見等の分析を通して理解を目指す。その際に、医師などの科学者である政治家や技術官僚とそうではない政治家、行政官の間でコミュニケーションの在り方に違いがあるのかどうかに関してもとりわけ注視したいと考えている。またこれまで推進が十分とは言えなかった研究グループの④である市民アクター分析の研究グループによって、一般市民の科学技術コミュニケーションに関しても研究を展開し、科学技術コミュニケーション論の欠如モデルにおいては専門知識を持たず、専門家が提供する知識を単に受動的に受容すると見なされてきた一般市民の間でどのように専門家から伝えられた専門知が受け止められ、また科学技術に関するコミュニケーションが行われるか、その特徴を把握することを今後は目指していく。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究グループの研究の推進方策は、科学コミュニケーションの専門家を招致しての、研究会の実施を主な内容とする。第1回は早稲田大学政治経済学部の田中幹人教授を迎えた研究会であり、テーマは新型コロナと科学技術コミュニケーションとする。科学技術社会論(Science and Technology Studies: STS)の観点から政策形成過程における専門家と政治家、行政官との関係に特に焦点を当て、日本の政策形成過程においては、政治における専門家への依存がどのようになっているか、専門家がどのように情報を提供するかという専門家と政治による共同作業に基づく科学技術コミュニケーションに注目していく。なぜ人々の移動を制限するか、店舗の営業時間を短縮するかなどについて、専門家に一方的にコミュニケーションを任せてしまうのではなく、一般市民に向けて、政治家、行政官が責任をもってコミュニケーションをし、説得を行う体制づくりをどのように行っていったらよいかをとりわけ健康危機管理政策の観点から論じていただく。第2回の研究会は崇城大学総合教育センターの鈴木俊洋教授をお迎えする。科学社会学における科学論の三つの波を踏まえ、第三の波の具体的な研究者であるハリー・コリンズらの専門性を擁護する科学の復権(擁護)の流れという区分を踏まえた科学技術コミュニケーションの在り方を考える。その上で、コリンズらによる専門性の擁護論を踏まえ、専門家コミュニティと一般市民の関係を科学者コミュニティに属していながら、科学技術社会論的知見(STS)にも通じている人物が参加する組織によって、どのように科学技術コミュニケーションが変化していくのかについて特に注視をして考察していただく予定である。
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