研究課題/領域番号 |
23K21912
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補助金の研究課題番号 |
22H00640 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 実践女子大学 |
研究代表者 |
佐藤 悟 実践女子大学, 文学部, 教授 (50178729)
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研究分担者 |
澤山 茂 実践女子大学, 研究推進機構, 研究員 (00078213)
大和 あすか 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存科学研究センター, アソシエイトフェロー (30823752)
浅野 秀剛 公益財団法人大和文華館, その他部局等, 館長 (70511137)
松原 哲子 国文学研究資料館, 研究部, 特任准教授 (70796391)
山本 和明 国文学研究資料館, 研究部, 教授 (90249433)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 13,000千円 (直接経費: 10,000千円、間接経費: 3,000千円)
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キーワード | 合巻 / 米粉 / ミツマタ / 浮世絵 / 高精細デジタル顕微鏡 / 草双紙 / コウゾ / 人情本 / 読本 / 漉き返し紙 / 用紙分析 / 蛍光X線分析 |
研究開始時の研究の概要 |
草双紙の紙質を研究することにより、出版システムから近世後期の大衆小説の性格を明確にすることを目的とする本研究は、紙質の研究に高精細デジタルマイクロスコープとコンフォーカル顕微鏡を使用することに特色がある。これら半導体の検査に使用される機器を国文学研究に転用することにより、経験と勘による紙質の判定ではなく、誰でも再検証できる紙質を明らかにすることができるようになった。文理融合とも称されるこの手法によって、これまで文献に頼っていた出版システムの研究が、出版物の紙質を年代、板元に対応させることにより、従来とは別の視点から再構築することができるようになった。
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研究実績の概要 |
新規購入したキーエンス社製VHX8000による紙の観察を実施した。さらにレーザーテック社製ハイブリッド顕微鏡の導入に向けての研究をレーザーテック社と実施した。 それらの成果を踏まえ、研究会を以下の日程でzoomにより実施した。2022年4月7日、4月21日、5月19日、6月2日、6月16日、7月14日、10月6日、11月3日、11月17日。この研究会において研究分担者浅野は浮世絵の用紙研究に関するアドバイスを行った。大和は石黄の合成が色材に与えた影響を発表した。 コロナ禍の下で移動、対面研究が困難な状況が続いたが。7月26日より28日まで研究協力者江南和幸を東京に招聘して、共同研究を実施した。 研究代表者佐藤は以下の仮説を立て、12月4日のシンポジウムで発表した。18世紀後期に甲斐で確立されたミツマタの大量人工栽培の技術が駿河に導入され、紙の繊維資源としての利用の拡大、紙の価格の低下ということが判明した。そのため草双紙の用紙が漉き返し紙からコウゾ・ミツマタ混合紙へと変化し、19世紀の合巻の用紙として普及した。 合巻と同時代の人情本の用紙もコウゾ・ミツマタ混合紙であり、色摺の場合、発色等に優れていること、また色摺のためには用紙が本文より厚手であることが必要であり、また米粉の混入も不可欠であることが判明した。文学史に与えた用紙の影響という新しい視点を得ることができた。これは19世紀文学の研究に大きなインパクトを与えることが予想される。 研究分担者澤山は用紙における繊維の識別、異物の混入についての研究を遂行した。また用紙の科学的な分析についての多くの先行文献の調査を行った。その結果、現在の我々のチームの研究水準が最先端であることが改めて確認された。研究分担者松原は赤本、黒本青本の用紙が漉き返し紙であることを実証し、『近世文藝』や12月4日のシンポジウムで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規購入したVHX8000が想像以上の画像処理能力を発揮した。コロナ禍の下において出張、対面での研究会の実施は難しかったが、zoom等の使用により、研究を遂行することが可能となった。また調査対象の現物を多く確保できたことも研究の推進を促進した。
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今後の研究の推進方策 |
レーザーテック社製ハイブリッド顕微鏡も使用した、微分干渉測定等による研究を進める予定である。これにより繊維の特質、色材と繊維の関係についての研究が可能になるものと予測している。同時にこれらの文理融合的な研究を支えるため、書誌的な調査をさらに強化することが必要である。 用紙研究については従来どおりの研究をさらに進め、合巻以外の調査サンプルの数を増やす。これによって文学を支えた出版研究に新たな視座を持つことが可能になることが予測される。色材研究については2024年6月より石黄についての江戸期の文献の調査、翻刻を実施するための研究会を立ち上げる予定である。 国文学研究資料館、東洋文庫、レーザーテック社との共同研究を推進し、2023年12月にシンポジウムを開催する準備を行っている。他の研究機関との連携を積極的に進める方針である。また国際協力も強化し、若手研究者のさらなる参加を求める方針である。 上記の研究推進の方策を踏まえ、文学史への挑戦をさらに続ける予定である。
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