研究課題/領域番号 |
23K21913
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補助金の研究課題番号 |
22H00641 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
渡部 麻実 日本女子大学, 文学部, 教授 (10449275)
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研究分担者 |
能地 克宜 明治大学, 文学部, 専任准教授 (50552577)
多田 蔵人 国文学研究資料館, 研究部, 准教授 (70757608)
小澤 純 日本女子大学, 文学部, 研究員 (00982977)
飯島 洋 金沢大学, 学校教育系, 准教授 (30625067)
澤西 祐典 龍谷大学, 国際学部, 講師 (30771133)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,770千円 (直接経費: 12,900千円、間接経費: 3,870千円)
2026年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2025年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2024年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | 日本近代文学 / 蔵書 / 自筆資料 / 作家ネットワーク / 文学館 / 芥川龍之介 / 正宗白鳥 / 川端康成 / 伊藤整 / 遠藤周作 / 近代作家ネットワーク / 書物移動 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の主眼は、近代作家の旧蔵書群を対象とする研究基盤の整備と、分析方法の更新にある。本研究では、第一に、旧蔵書群を調査し、書き込みの具体的状況を確認すると共にそのデータを蓄積し、作家を越えて横断的に検索できる新しい目録データベースを構築、作家たちの書庫の可視化を目指す。第二に、文学館と連携を図り、旧蔵書の保存・整理・活用のあり方を検討、その確立に取り組む。第三に、内容分析の実践と発信を通して、〈読書の痕跡を伴った総体としてのテクスト〉という視点の有効性、作家の〈読書行為〉や空間としての〈読書場〉を読むことによるテクストの新たな解釈可能性を示し、資料研究領域における文学研究の方法的展開を図る。
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研究実績の概要 |
近代作家たちの旧蔵書群を総合的に把握したり、横断的に分析したり、作家を越えて比較したりする研究はこれまでほとんど行われたことがなく、そうした研究を可能とする基盤は整っていない。また、作家の旧蔵書中には、いわゆるアンカット本など読まれた痕跡を伴わないものや、所蔵者とされる作家の没後に出版されていた書籍がしばしば混在している。総じて旧蔵書群は、カオティックな状態に置かれていることが少なくない。 ゆえに第一の課題として、何が、どこに、どのようにあるのか、旧蔵書群の諸相を明らかにすること、すなわち研究の基盤整備に注力した。具体的には、芥川龍之介、正宗白鳥、川端康成、伊藤整、葛巻義敏、遠藤周作を中心とする旧蔵書群の詳細な調査、ならびに目録の基礎となるデータ作成作業を推進した。 近代作家の旧蔵書中の書き込みは、そのほとんどが未発表資料である。著作権保護期間中の作家はもとより、日本国内においては保護期間が終了した作家であっても、撮影や公開に困難を伴うケースが少なくない。また、戦前期の洋書を中心に劣化が著しく進み、保護とデジタル化による保存を要する旧蔵書は相当数にのぼる。だが原稿や書簡と異なり、旧蔵書のデジタル化を精力的に推進できる文学館、図書館は、国内外問わずきわめて少数に限られる。 したがって第二の課題として、国内外の文学館、資料館、図書館に目を向け、肉筆資料を含む文書の保護・公開・活用の在り方に関する状況や動向の精査と把握につとめた。 以上の研究成果については、研究会やワークショップの開催に加え、雑誌『近代作家旧蔵書研究会年報』を刊行することで、積極的な発信を試みた。文学資料ならびに文化遺産としての旧蔵書の可能性を共有し、作家旧蔵書という資料群への関心喚起に一定の役割を果たし得たことは、当該資料をめぐる環境整備においても、前進と言えるのではないか。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
未詳資料の発掘や埋没資料の評価・再評価に資する成果をあげることができた。また、文学資料ならびに文化遺産としての旧蔵書の可能性を共有し、作家旧蔵書という資料群への関心喚起に一定の役割を果たし得たことは、他の肉筆資料に比べて保護や整理の優先度が低く見積もられがちな当該資料をめぐる環境整備において、前進と言える。 他方、旧蔵書の目録作成とデータ化については、必ずしも順調とは言えない。交通費や宿泊費の高騰により調査日数を短縮せざるを得ないことや、潜在資料の規模が想定以上の大きさであったことがその理由である。後者については、本研究課題の可能性を示すものと捉えることもできるだろう。人員と経費、ならびに時間の確保が大きな課題である。
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今後の研究の推進方策 |
航空運賃や宿泊費の高騰をはじめとする物価上昇は、現地調査を必須とする本研究解題にとって、とくに大きな障害となっている。 本研究課題の目標の一つに、各旧蔵書群を総合的に検索できるデータベース構築がある。他方で、旧蔵書の多くは未公開資料であり、実現にあたっては、所蔵機関・著作権者・遺族との信頼関係が欠かせない。物としての資料、それにかかわる/かかわった人、その存在する/した場の関係性を尊重しつつ、昨年度に刊行を開始した『近代作家旧蔵書研究年報』の機関リポジトリ化をはかる等、研究成果の共有をより積極的に行い、旧蔵書の可能性と価値の認知を高めることで、本課題が、貴重資料の保護と活用、作家の再評価、地域文化の振興などに有意に資する可能性をさらに説得的に示したい。
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