研究課題/領域番号 |
23K21922
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補助金の研究課題番号 |
22H00650 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
増本 浩子 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (10199713)
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研究分担者 |
Grecko Valerij 東京大学, 教養学部, 特任准教授 (50437456)
八木 君人 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (50453999)
楯岡 求美 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (60324894)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
13,390千円 (直接経費: 10,300千円、間接経費: 3,090千円)
2025年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | アヴァンギャルド芸術 / ドイツ・ロシア芸術交流 / セルゲイ・トレチャコフ / 事実の文学 / 異化 / ベルトルト・ブレヒト / セルゲイ・エイゼンシュテイン / ヴィクトル・シクロフスキー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、20世紀初頭のロシア・ドイツ間の芸術交流の仲介者としてのトレチャコフの役割を明らかにすることを目的とし、以下のような手順で遂行される。 1.事実関係の確認:トレチャコフのドイツ滞在を中心に、交流の事実関係を確認する。 2.芸術コンセプトについての考察:トレチャコフによって伝えられたコンセプトのうち、特に重要な「モンタージュ」、「叙事的演劇」、「事実の文学」の3つのコンセプトの具体的な内容と芸術的意義について考察する。 3.芸術コンセプトの受容と展開:伝えられた芸術コンセプトがドイツでは誰によってどのように受容され展開されたか、あるいはどのような点が批判の対象となったのかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
前年度に引き続き、2023年度もトレチャコフ自身の著作および、トレチャコフと交流のあったロシアとドイツの芸術家たち(メイエルホリド、エイゼンシュテイン、シクロフスキー、ブレヒト、ベンヤミン)の著作を分析するとともに、ドイツのアーカイブなどに残されているロシア・ドイツ芸術家交流に関する歴史的資料を調査した。2023年度は特に、シクロフスキーの「異化」の概念に注目し、ブレヒトがどのようにこの概念を受容して、彼独自の「異化効果」という考え方に発展させたかについて考察した。また、トレチャコフの脚本で製作された映画作品『スヴァネティの塩』についても分析を行った。 9月に神戸で開催された国際会議で、Kim Soo Hwan教授(韓国外国語大学校)、亀田真澄講師(中京大学)、古宮路子助教(東京大学)の協力を得て、「Sergei Tretyakov and Soviet Literary Criticism」のテーマでパネルを組んだ。また、この会議に参加していたHenrieke Stahl教授(トリーア大学)を中心に、名古屋でワークショップ「International Avant-Garde: Poetics, Language and Taste」を開催した。11月には台北で開催された国際会議で、研究代表者の増本と研究分担者のグレチュコがそれぞれブレヒトとシクロフスキーに関する研究発表を行った。この国際会議をきっかけに台湾の研究者と共同研究を進めることになり、2024年1月にHusiung Tsung-Huei准教授(国立台湾大学)、Yen Ting Chia准教授(国立政治大学)、Chiang Chieh Han講師(国立政治大学)を神戸に招き、ワークショップ「Russian Modernism in the European Context」を開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トレチャコフと交流のあったロシアとドイツの芸術家たち(特にシクロフスキーとブレヒト)の著作を分析する作業が順調に進み、その成果を国際会議等で発表することができた。また、11月に台北で開催された国際会議での研究発表を機に、台湾の研究者とも共同研究を行うことになり、2024年1月に神戸でワークショップを開催することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は当初の計画ではロシアでのアーカイブ調査を予定していたが、2023年度に引き続き2024年度もロシアによるウクライナへの軍事侵攻の影響が懸念される。ロシアでの調査が困難な場合は、ロシア以外の国(たとえばトレチャコフの出身地であるラトヴィアや、具体的な芸術家交流の場となったドイツ)でも入手・閲覧可能な著作と歴史的資料の調査・分析を行う。主な対象となるのはトレチャコフ自身に関する資料の他、彼と親交の深かったメイエルホリド、エイゼンシュテイン、シクロフスキー、ブレヒト、ベンヤミンに関する資料である。国内でも、ロシア文学・芸術関係の資料を多く有する早稲田大学で資料を収集し、分析を行う。対面またはオンラインで定期的に研究会を開催し、研究チーム内での情報の共有を図るとともに、資料調査に関する意見交換を行う。また、ロシア・アヴァンギャルドの専門家コルネリヤ・イーチン教授(ベオグラード大学)など、海外の研究協力者とも意見交換を行い、台湾の研究者との共同研究も進める。 ロシア・ドイツ間の芸術家交流の事実関係を確認する作業と並行して、ロシア・アヴァンギャルド芸術理論、特にシクロフスキーの「異化」の概念がブレヒトによってどのように受容・展開されたかについてさらに考察するとともに、トレチャコフの「事実の文学」のコンセプトの展開と、このコンセプトがドイツの芸術家に与えた影響に関する分析を行う。研究成果は国際シンポジウムや学会等で発表し、論文にまとめる。
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