研究課題/領域番号 |
23K21985
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補助金の研究課題番号 |
22H00713 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03050:考古学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
千葉 豊 京都大学, 文学研究科, 准教授 (00197625)
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研究分担者 |
杉山 淳司 京都大学, 農学研究科, 教授 (40183842)
高野 紗奈江 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 客員研究員 (80910603)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2025年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
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キーワード | AI / 人工知能 / 縄文土器型式 / 識別システム / 系統 / 縄文土器 / VAE / WGAN-GP / 素材同定 / 縄目文様 / パターン認識 / 分類 / 周期構造 / CNNモデル |
研究開始時の研究の概要 |
縄文時代の研究は、縄文土器の編年研究に多くの労力が費やされてきたが、過重な編年研究から考古学者を開放し、新たな学問的地平を構築すべき時が到来している。 本研究では、飛躍的な進歩を遂げているA Iを編年研究に導入し、縄文土器のビッグデータを解析する。深層学習により土器型式を識別するA Iを構築し、縄文土器の時空間的な関係性を客観的に描き、既知の土器編年と系統樹を批判的に検証する。そして数理学的な根拠に基づき、研究者が価値を見落としてきた、あるいは未だ発見されていない、未知の縄文土器を予測し創造する。潜在的価値と新たな価値を見いだし、縄文時代の文化系統の動態を高精細に描き出す。
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研究実績の概要 |
研究2年度目にあたる本年度は、①:縄文土器型式を識別する A I の構築と②:縄目文様・素材を識別する A I の構築の二つの課題を中心に取り組んだ。 ①の課題は初年度、単純なCNNモデルでは画像の認識が難しいことが判明したため、新たな方法の開拓を模索した。その結果、画像生成AIの一つであるVAE(Variational Auto encoder)に着目した。VAEは、入力された画像を潜在空間と呼ばれる特定の表現に変換し、その潜在空間から新しい画像を生成することができる。VAEの特徴は、生成された画像が元のデータの特徴を保持しつつ、多様性やオリジナリティを持つことができるという点にある。このVAEを用いることで、縄文土器画像の解析を進展させることができるという手がかりを得ることができた。データの集積作業は継続的におこなっており、縄文土器研究データとして、〈ひかり拓本〉データの有用性に関しては成果発表の機会を得た。 ②の課題に関しては、素材の分析を進展させた。縄文の素材に用いられたと考えられる植物性/動物性素材を収集し、加工した素材から実際に縄文原体を製作して‘縄文’を作成した。た節の中にみられる繊維痕跡(シワ・筋)を人工知能(AI)で解析するにあたり、実体顕微鏡による撮影など、いくつかの機材を使用して画像を作成して検討した結果、微細な細部形状の認識には被写界深度合成写真が最適であるとの結論に至った。被写界深度合成写真をもちいて、植物性/動物性素材ごとの素材データベースを作成した。このデータベースを元に、①縄文(節)の自動的検出、②植物性と動物性素材の縄文の判別(大別)、③ 植物性素材の個体判別と動物性素材の個体判別(細別)という、さまざまな学習モデルについて検討し、成果発表の機会を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
縄文土器画像の認識にあたっては単純なCNNモデルでは扱えないことが初年度判明したため、新たな方法の開拓に取り組んだ。画像生成AIの一つであるVAE(Variational Auto encoder)は、入力された画像を潜在空間と呼ばれる特定の表現に変換し、その潜在空間から新しい画像を生成することができる。このAIを用いることで、元の土器画像から新たな画像を作成し、それを用いて分類や系統の解析がおこなえるという展望を得ることができた。また、実際のデータと類似するデータを生成し、画像を変換する生成モデルのひとつであるWGAN-GP(Wasserstein Generative Adversarial Network-Gradient Penalty)を用いて、実際の土器画像に近い生成画像を生み出し、その活用方法を検討している。一方で、学習用データの集積作業も継続的におこなっている。 縄目の文様や素材に関しては、素材に関する方法論的な検討を一定程度進展させた。文様パターンの認識については、実験的に製作した粘土板での識別精度の有効性を確かめられたので、器面が摩耗したり混和材などの影響を受けている実際の縄文土器でのパターン認識をいかに進めるかの検討に着手している。このようにほぼ当初の計画に近い進展が見られるため、おおむね順調に進展している、とした。
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今後の研究の推進方策 |
以下のような方策で研究を進展させる。 縄文土器の画像認識に関しては、学習用データの集積を継続的に進めるとともに、VAE やWGAN-GPによる画像認識を用いて、分類や系統といった解析を進める。潜在空間の情報から、縄文土器の共通性、相違性、相関距離や、それに基づくデンドログラムなど、これまでにない新しい切り口による考察を試み、縄文土器型式を識別するAI構築に関して一定の結論を得たいと考えている。そのうえで当初掲げていた3番目の課題であるA I による縄文土器型式の時空間的座標軸に基づく相関関係の復原といった領域にも踏み込んでいきたい。 縄目文様のパターン認識や素材同定に関しては、実験用粘土板では一定の成果を得ることができている。今年度は実際の縄文土器に基づいて、パターン認識や素材同定が一定の精度を保って解析できるようなモデルを構築したい。実験用粘土板とは異なり、実際の縄文土器は、器面が摩耗していたり砂粒といった混和材がノイズとして現れてくるので、これをいかに排除して、必要なデータが得られるかをデータ取得の方法も含めて検討を深めたい。
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